表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/128

ジーン&リツの場合 46

 無事にスーツ姿になったラウムを同行し、社長は宮森と共に家を出る。イチカは今日は留守番だった。花咲も今日は休みだったのでイチカ同様留守番をすることとなった訳だったが、ごつい眼鏡姿で部屋から出てきた花咲にばったり会ったイチカは驚いた顔をした。


「毎日フルメイクなのかと思ってた」


「たまには肌を休ませないとね…キモいよね、ごめん」


「そんなことないよ?中性的でキレイな顔立ちだと思うけど?それに来た頃より調子も良さそう」


「結局男にもなり切れなくて女にもなれない中途半端な感じ…」


 花咲は苦笑して前髪をかき上げた。中途半端だがイチカに言われた通り体調は悪くない。むしろスッキリしている。


「悪魔になれば、どちらにもなれるからその悩みとは無縁になるぞ?」


 背後から音もなく現れた常務は隣にいたリツの身体に触れる。リツの姿は女性から中性的な青年に変わった。胸が平らになり少し身長が伸びる。


「…この高さの方が口付けはしやすいな」


 そんなことを言って常務は見上げたリツの唇に唇を重ねた。この光景に見慣れたイチカは平然としていたが、花咲はその光景に少し動揺した。


「ジーンって…あまり性別には拘らないよね…」


 唇を離したところでリツが言う。少し骨ばった自分の手をしげしげと眺めて小さく笑った。


「それはリツだってそうだろう」


「そう…なのかな?元々天使は性別がないからね…だからかな…?」


 それにしてはあの男はフィランジェルに対しては明確な欲望を抱いていると思いながらジーンはリツの腰に手を回す。それは性別を超越した欲望だ。だが絶対に渡さない。


「ま、そういう訳だからどうするか早く決めるといい。ただ聖女の転生者のままで魔界に連れて行くのは難しい。宮森と離れる選択をするなら、そのままでも構わないが…そこまでマーキングした相手を簡単にあれが諦めるとも思えないからな、ま、今は残り少ない人としての人生を楽しんでおくことだな」


 目の前でリツは再び女性の姿に戻る。何もしなくても美しいと花咲は思った。今日のリツは洗いざらしのシャツにデニムを履いているだけだ。なのに綺麗だと思う。


「あと、勝手に一人で外出はしないように。出掛けるなら一人使い魔をつける。誘拐でもされたら困るからな」


「この姿の私を誘拐するなんてどうかしてますよ」


 花咲は苦笑したが常務の真面目な顔に見下ろされて口をつぐんだ。


「…少しは名のある悪魔である使い魔にマーキングされている自分の立ち位置を理解してもらわないと困る。マーキングされた時点で、君はもう一般人としての日常は過ごせなくなったと言っても過言ではないんだ。たまたまこの家が安全だからおかしなことに巻き込まれずに済んでいるが…現に会社では巻き込まれただろう」


 秋村に人質に取られたのを思い出し、花咲は思わず震えた。


「マーキングされて宮森の魔力を注がれた時点で君の魂は輝きを変える。肌の調子も整うし、体調も格段に良くなったはずだ。そういった変化を読み取って、君に邪な思いを抱いて接触しようとする輩が現れる。月曜以降は他の男性社員にも注意することだ。他人よりも輝いている君のその魔力に魅せられてもっと味わいたいと思う者が少なからず現れる、そういうことだ」


「悪魔になってもすぐに安定する訳じゃないしね。俺も前よりは思い出したこととか、使える力も増えたけど、リツみたいに急に爆上がりする訳じゃないもんな」


 イチカが笑う。


「…爆上がりって…」


 リツは口ごもったが、確かにイチカの言う通りなのだった。


「それは契約した悪魔との相性だから仕方ない。私とリツとは、運良く相性が良かった。こればかりはどうにもならないし、試さないと分からない」


 話しながらリビングに向かおうとしていると階段から成瀬と瀬尾が降りてきた。


「おはようございます」


 瀬尾は清々しく挨拶をしたが成瀬の顔色はどこか冴えない。


「どうした?顔色が良くないぞ?」


 常務の問いかけに、平日仕様のラフな格好の常務に一瞬見惚れてから、成瀬はため息をついた。


「おはようございます…ハムスターになって…巨大なカメムシの大群から逃げる夢を見たんですよ…それで…」


「ケビンの刷り込みが夢にまで?そこまで影響の出る魔力ではないと思ったんだが…君は暗示にかかりやすいタイプなのか?今日は少々出掛けようと思ったんだが…君たちは留守番をするか?」


「どこに行くつもりなの?」


「なに…アミューズメントセンターとやらに、ルイが学校の友人と行くというから、我々も偵察だな」


「え?」


「ストラスが心配性なんだ。ケビンをつけているから大丈夫だと言ったんだが気になるらしい。ま、気晴らしになるなら、皆もどうかと思ったんだが…」


 ルイに対して過保護にも程があるとリツは思ったが、確かにほぼ軟禁状態で家と会社の往復をしている皆のことを思えば何かしらの息抜きは必要だとも感じた。ジーンなりの気遣いなのだろうと思う。


「すみません…僕はパスします…寝不足で…」


 成瀬は頭を下げる。尾瀬も頷いた。


「俺は行くぞ」


「じゃあ私も」


 結局、ジーンにリツ、イチカと花咲が行くことになり使い魔のネビロスとフルフルも同行することになった。


「このメンツで歩いてたら悪目立ちするよね?」


 リツの言葉にジーンはにやりと笑った。


「当たり前だ。遊んでいても違和感のない大学生と高校生くらいに姿を変えるとしよう」



***



 ルイを最寄り駅まで送ったストラスは車内でため息をついた。本当に大丈夫だろうか。ところがバックミラーにどこか違和感のある車が映り込み、中から複数人の男女が降りるのが見えた。


(何だ…?)


 中の大学生風の一人がちらりとこちらを見たような気がしたが、ストラスは気のせいだろうと首を振って車を出した。律儀にルイと同じ地下鉄に乗って六人は移動を始める。フルフルはジーンの魔力で爽やかな青年の姿に変わってイチカの彼氏のフリをしていた。ネビロスは花咲を守る風に近くにいたが、どことなくぎこちない雰囲気でそれが逆に付き合いたての初々しさを醸し出している。リツは黒髪ストレートロングの美少女になっていた。ジーンは眼鏡をかけた少し神経質そうな大学生風の青年に姿を変えていた。久々にジーンの眼鏡姿を見て、養護教諭のフリをしていた頃のジーンをリツは思い出していた。何駅か過ぎたところでルイが降りたので、六人もそこで降りた。ルイは待ち合わせでもしているのか近くのコンビニの前で立っていた。時折スマホを確認する。リツたちは駅の中でそれと分からないような会話をしていたが、なかなかルイの待ち人は現れなかった。時間だけが過ぎてゆく。


(これって、もしかして…)


(嘘の待ち合わせ場所を言われたのか、元々一人にするために仕込まれていたのか…)


 ところが、しばらく経ってルイの元に一人の少女が息せき切って駆け寄るのが見えた。ルイは一瞬困ったような顔をしたが、少女に何か言われて歩き出した。


「移動を始めたな。尾行を開始する」


 小声でジーンが呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ