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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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リツ&イチカの場合 4

 五十嵐警部らが帰った後もイチカはそのままリツにくっついて常務室に来てしまった。社長は何か言いたげな顔をしたが、苦笑したきりで出てゆくイチカを見送った。


「いいの?イチカ」


(いいんだよ。ってか、向こうにいても何かイライラするから)


 リツが仕事を始めるとイチカは膝の上に乗って丸くなる。温かい。これはこれで和むと思って、慌てて仕事に集中せねばと気を引き締める。ジーンはスマホで誰かと話していた。会話の内容からストラスだろうと思っていたら違った。


「あぁ、それじゃ頼む。使い魔の筆頭として、戦闘と拷問に特化した使い魔を四人ほど呼び出してほしい。人選は黒木に任せる」


 リツは会話の内容に背筋が薄ら寒くなった。戦闘と拷問と聞こえたような気がする。リツの震えが伝わったのか会話のせいかは分からないが、イチカがピクリと耳を動かした。


「なんだ、リツ。私が恐いか?」


 話し終えたジーンがリツのデスクに歩み寄る。ジーンは少し困ったような顔をしてリツの頭を撫でた。リツの太ももの上に乗ったイチカを見てジーンはややためらいがちに顔を近付ける。リツの手を見た気がした。大丈夫なのか確認したのがリツには分かった。デスクの上に乗せられたジーンの片手にリツは指先で触れた。そのまま指が絡まり、静かに唇が重なった。


「私は悪魔だ…場合によっては非道な手段も選ぶ。いかなる命も奪わずに済めばそれに越したことはないが、向こうが戦う気ならば大切な者を傷付けられる前にこちらから牙を剥く…理解…できそうか?」


「うん…理解できる。それに…瀬尾さんやエストリエのように…大事な人たちが傷付くのは見たくない…だから…ジーンの選択を私は受け入れる…」


「すまないな。嫌な光景を見せるかもしれない…私自身の力を全て解放したら…リツは…」


 リツはそこで首を横に振った。その先にジーンが言いそうなことは分かっていた。


「大丈夫。嫌いにならない。約束する」


 リツの言葉にジーンはもう一度口付けをすると再び自分のデスクに戻る。膝の上で今まで知らんぷりしていたイチカがちらりとリツを見た。


(いいなぁ。ラブラブじゃん。ソーシは言うことテキトー過ぎるところがあるんだよな。ってか日本語の使い方がそもそもおかしいし)


 イチカは再び丸くなると膝の上に顔を埋めて眠ってしまう。リツは仕事に集中することにした。ところが、程なくしてドアがノックされて明らかに顔色の悪い成瀬がフラフラしながら現れた。昼休みにはまだ少し早い。


「成瀬くん!?どうしたの?」


「いや…僕…実は昆虫が苦手で…それで…」


 成瀬は朝の大量のカメムシの後遺症で魔力が不安定になっていた。ジーンはちらりと時計を見て木製の収納スペースの扉を開けた。小型の冷蔵庫の横のお菓子がずらりと並ぶ棚にジーンは手をかける。キャスターがついていて引き出すとその後ろに、いかにも怪しげな魔法陣の描かれた扉の絵が現れた。魔法陣を指先でなぞると、扉が実体化する。ポカンとしてリツはその扉を見つめた。


「一時的に清葉学園と繋いであるから、もうじきオセも来るだろう。悪魔の勘を取り戻してきたから、この程度の距離ならオセには造作もない」


 しばらくすると扉が静かに開いて本当に瀬尾がそっと顔を出した。


「な…すごい!本当に繋がってる…!」


 瀬尾自身も驚いた顔をしたが、ジーンに支えられた成瀬を見ると、慌てて駆け寄る。


「恭也、酷い顔色してますね…」


「すみません…メンタル…弱くて」


 瀬尾の肩に成瀬はもたれかかった。それだけでホッとしたような顔をする。二人を見たジーンは言った。


「私とリツは食事に出るから、ここは自由に使って構わない。イチカもおいで。でもその大きさだと連れて行けないから、もう少し小さくする」


 猫の姿のイチカもハムスターに変えられた。成瀬はギョッとした顔でイチカを見る。


「イチカさんは…大丈夫ですか?」


「心配ない、数分だ。あぁ…今回は特別に冷蔵庫の物なら何でも食べていい。魔力を安定させれば腹も減るはずだ」


 ジーンはイチカに手を伸ばす。ためらう様子のハムスターだったが、観念したようにそっとジーンの手の上に乗った。


「リツよりも私の魔力の方が強いから、イチカの気配をごまかせる」


 常務室を出ると社長と宮森も出てきたところだった。食事に出掛けるには少し早い時間帯なので、気配でも読んだのだろうかとリツは思う。


「…イチカも連れて行くの?」


 社長がジーンを見て言った。ジーンは社長を見返す。


「あぁ。毎回猫の餌ばかり食べさせる訳にもいかないだろう。それに私の部屋は今、使用中で使えない。猫科の雄が二匹絡んでいるのを見る趣味は私にはないからな」


 どこかトゲのある言い方に社長は笑った。


「そうやって、試しもしないで毛嫌いしてると、世の中にある楽しみの半分くらいを知らないままで損することになると思うよ?僕は猫科の雄と絡むのはゴメンだけど、鑑賞するならありだな…最短距離の扉よりも他に開くべき未知の扉があると思うんだ」


 社長の言葉に隣の宮森が微妙な顔付きになるのが分かった。ジーンの掌の中でイチカが動いて人差し指と親指の間から鼻先を出した。


(宮森さんが横にいるのに、平気でそういうこと言うのもデリカシーがないんだよ!)


 キーキー甲高い声で鳴いてイチカは再びジーンの手の中にもぐる。


「やれやれ…妻を頼むよ。生理でも来るのかなぁ。やたらとイライラしてるけど」


(…だからそういうところだと思う…)


 リツは社長の言葉を聞いて、思わずため息をつきそうになりギリギリで思い留まる。ジーンの手の中でイチカがまたキーキーと非難する声が聞こえた。 

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