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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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リツ&ルイまたはイチカの場合

 ルイの夢の領域に降りて、ルイとリツそれにイチカはトランプで遊んでいた。神経衰弱をしている。カードを覚えるのに必死で皆余計なことを考えている暇はなかった。


「うわっ!まただよ!ルイにもってかれた!」


 イチカは悔しがる。先ほどからイチカがヒントを与えてしまって、ルイに取られる繰り返しだった。結果はイチカが惨敗し、リツが僅差でルイに負けた。


「はぁぁ…ルイの意外な特技が分かっちゃったね」


「意外って何?僕、記憶力は良いんだよ」


 そう言ったルイは不意にリツの頬に触れる。


「こら、ルイ!」


 イチカが声を上げたがルイは人の悪い笑みを浮かべた。


「リツが本気で嫌だったら魔法陣が作動するはずだよ。僕の夢の領域でもね。おいでよリツ。リツはどちら側になりたいの?悪魔らしく今まで抑圧してきたその欲望を解放する?それともやっぱり頑なに守り続けたいの?人としての倫理観を」


 ルイはリツを抱き寄せる。あの日押し倒したときと同じ目をしている、そう思ってリツは急に慌てた。


「私は…」


「守るのは彼に対しては誠実でいたいから?僕はね、自分の欲望に素直になったんだ。そうしたら楽になったよ。ストラスは僕の望みにとことん付き合ってくれるから…でも、彼はそうじゃない…」


「ストラスとジーンは違う、そんなの当たり前だよ」


「ルイ!やめろ!」


 イチカが引き離そうと近寄ったが、この夢の主はルイなのだった。簡単にイチカは弾き出されてシャボン玉の中に閉じ込められる。


「邪魔しないで。イチカより僕の方がリツとは長いんだ。それに…」


 ルイは唇を重ねた。リツは動けなかった。


「ほら、嫌がらない。それにいずれ僕はリツの使い魔になるんだ。そうしたらもっと色々なことができるようになる。リツを喜ばせることだってね。さすがに今はキス以上のことはしないけど、リツとならそれ以上のことができるって思ってる…」


 ルイはリツを抱きしめたまま横になる。ふわふわとしていてベッドよりも心地良い。添い寝するような体勢でルイはリツの髪を撫でた。


「僕は痛いのも好きだけどリツは嫌だよね。もっと僕はリツの気持ちいいところが知りたいよ?」


 ルイは愛撫するような手つきでリツの身体に触れる。ダメだと思うのに、どういう訳かリツは動けなかった。身体に力が入らない。


「僕の夢の領域で神経衰弱…したからね。文字通り、神経が衰弱してるんだ…僕はただリツを撫でてるだけだよ。痛いところはどこ?癒してあげるね」


 ルイは腰の辺りに手を当てて、ほんのわずかに温めた。ゆっくりと熱を送るとリツの口から吐息が漏れた。


「女の子は無理だって思ってたけど、僕はリツなら平気なんだ。不思議だね。最初に会ったときは男の子だったからかな。女の子の身体に戻っても、あまり抵抗を感じないんだ…」


「ルイ…ダメだよ…そんなこと言わないで…ルイは…友だちで…弟…みたいで…私…そんな風には…」


 ルイの腕の中でリツはやっとのことで声を上げた。ルイは小さく笑った。


「友だちでも、弟みたいでも、別に僕は構わないよ?だってリツを彼女にしたい訳じゃないから。リツはアルシエルと結婚してるし、その事実は変わらない。でも使い魔になったら、リツを喜ばせることが僕の役割になるんだ。ここは夢の領域だし、どんな夢だって見ていいんだ。僕の見たい夢はリツを優しく癒やしたい。やり方はこれからもっとストラスが教えてくれると思うから、たくさん勉強して僕がリツを癒すよ…」


 不意にルイは気配を感じて上空を見た。アルシエルがじっと見下ろしている。慌ててストラスが降りてくる気配がした。リツはルイの胸に顔を埋めたまま動かない。ルイは微笑んだ。


「こら、ルイ!そこは夢じゃないだろう。現との境目だ。リツさんを離すんだ!」


 ストラスが叫ぶ。


「バレちゃったか。でもこれからこのまま夢に降りるから大丈夫。リツは今は大人の男性を受け入れられる状態じゃないよ。心も身体も…それはアルシエルが乱暴に扱って両方傷付けたからだ。その点僕はまだ大人じゃないし、リツにとっては安全なんだ。今は他の誰にも触れさせない。じゃあね」


 ルイはそう告げると夢の領域を閉じる。その直前に姿を変えたストラスが梟になって、閉じる領域に滑り込んでゆくのが見えた。


(すみません、主!ルイを止めます)


 ストラスの声が聞こえたが、その気になれば追えたはずなのにアルシエルは動けなかった。ルイの残した言葉がアルシエルを縛っていた。


(心も身体も…乱暴に扱って両方傷付けた…?)


 彼にはその実感がなかった。いつもの営みに少しその感情を上乗せした程度のことだと思っていた。だから突然拒絶されたことに彼は驚いていた。やめてだとかイヤだとか、そういった言葉すら、本気なのだとは思っておらず、きちんと受け止めてはいなかった。イヤと言いながらもリツはいつも彼を受け入れる。心地良さそうに。


(いや、それは私がそう思っていただけで…リツは…どう感じていたんだ?傷付けていた…?)


 翌朝、辛そうなところがあれば癒した。それで何ら問題はないと思っていた。本当に?何も問題がなかったのか彼は急に不安になった。


(リツ…)


 確かに今リツに必要なのは自分ではないのかもしれない。ルイは確かに安全だ。そこまで考えてアルシエルは、本当にルイが安全なのか、冷静な見極めができないことに気付く。ルイが安全?先ほど見たルイはまるで恋人のようにリツに寄り添っていた。リツが今傷付いているのなら、その心の隙に入り込むのが悪魔だ。いつまでも天使のように澄んだリツとは対照的にルイは早くも悪魔に染まり始めている。よほどのことでもない限り、彼が不安を覚えることなどないに等しいのに、リツが絡んだ途端に盤石な足元が揺らいだ気がした。

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