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異世界転生対策本部転生撲滅推進課〜悪魔な上司の意外な素顔〜  作者: 樹弦


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リツ&ストラスの場合 1

 瀬尾は今日は数日ぶりに清葉学園の方に出勤することになり、念の為にジーンがひっそりと同行する手筈を整えていた。そのせいでまだ暗い早朝からリツは離して貰えず、ベッドの中でジーンの過剰ともいえる愛情を受け取る羽目になっていた。リツに覆い被さった悪魔は執拗なまでにリツの身体に印を残してゆく。リツは小さな声で抗議した。


「首には…残さないで…!」


「…仕方ないな…」


 腕を持ち上げたジーンはリツの腕の内側の弱いところを吸う。かすかな痛みにリツは声を上げたが悪魔は微笑んだだけだった。強めの魔力を流し込まれてリツはその心地良さに思わず目を閉じる。ジーンはしばらくリツを抱きしめていたが、ようやく満足したように起き上がった。


「ついでに最短距離で繋いでくるか。行き来しやすくなるからな。もう行く必要もないと思って繋がなかったのだが、オセが出勤するなら必要だろう。異世界の悪魔が接触して来ないとも限らないしな…」


「大丈夫かな…?異世界の悪魔って…目的がはっきりしないから…不安…」


「リツ、私は誰だ?」


「アルシエル…魔界の国王…」


「そうだ。なめてもらっては困る」


「それはそうだけど…」


 不安そうなリツにジーンは口付けをする。再び抱きしめたリツにジーンは耳元で囁いた。


「そんなに不安なら、やはり一緒に連れて行くべきか…?」



***



 だが結局のところリツはいつも通り出社しルイを送るストラスがその足でリツを送った。成瀬は研修の名目でジーンに同行したことになっていたが、実際はハムスターに姿を変えられて瀬尾の内ポケットに入っていた。瀬尾はくすぐったそうに笑った。


「落ち着かないのは分かりますけど、あまりモゾモゾ動かないで下さい」


 ルイは学校で降りて友だちらしき中学生と話しながら校内へと入ってゆく。見送ったリツは不思議な気分になった。こうして傍から見るとごく普通の中学生だ。だがリツの目にはルイの影に入ったケビンが地面から頭を出してニヤリと笑って手を振るのが見えていた。他の者に見えてはいないが、たまに勘の良い者には気配に気づかれる場合もあるので、リツは慌てて引っ込むように合図する。ケビンはするりと地面に姿を消した。


「昨日ルイが女の子になったって…本当なの?」


 車を発進させたストラスにリツが問いかけると、ストラスは頷いた。


「夢の中で、ですけどね。上から下までちゃんと女子になってましたよ」


「ふぅん。ちょっと意外。身体まで女の子になるのを望んでいる風には見えなかったから」


「俺に…合わせたのかもしれませんね。少し結び付きを強めたので…ま、一次的なものだと思ってますよ…ある種の精神安定剤みたいなモンですよ」


 ストラスの言葉にリツは納得したようなしないような複雑な表情を浮かべたが何も言わなかった。


「それよりも、ルイのキスの影響はどうでしたか?リツさんでもちょっとは感じたでしょう?」


「…う…ん。だから…むしろ困ったというか。あのとき止めてくれなかったら、どうなっていたのか…跳ね除けられなかった自分が少し怖くなった」


 リツの正直な言葉にストラスは小さな笑い声を立てた。


「…こんな話をするとプレッシャーになるかもしれませんが、本当に使い魔が死にかけた場合、なりふり構ってなんかいられませんから、キス以上のことだってする場合もありますよ?そうならないに越したことはないですが、それもある程度は想定済みでうちの主はルイをリツさんの使い魔にしようと思っている節もあります…だって、あんまり醜い使い魔にキスやらそれ以上のことをするのは抵抗があるでしょう?それに主は魂の色にも拘りますからね。ルイの燃える赤は美しいからリツさんにくっつくのを許容したんだと思いますよ」


「魂の色…」


 ルイは確かにジーンが度々そういったことを口にするのは記憶していた。彼自身の拘りだったのかとある意味納得する。要するに普段からベタベタと遠慮なく慣れ親しむのは望まないが緊急事態なら可、そういうことなのかと腑に落ちた。昨日はそれを試す意味合いもあったのだろうか。だがルイが見せた男の顔については黙っておこうと思った。あれもストラスの縛りの影響なのだろうか。確信の持てないことであれこれ悩んでいても仕方ない。ルイも自分も悪魔になりたてでまだ勝手が分からない部分も多々あった。


「…アスモデウス元帥もルイを欲しがってるの?」


「その話…聞いていたんですか?」


 ストラスが苦笑する。


「私は元帥に会ったことがないから…ただなんとなく、外堀から埋めようとしているのかなっていう印象はあるかな…本当はストラスに振り向いてほしいけど、無理だって分かっているから興味を持った対象にちょっかいを出してる…」


「嫌だなぁ…怖いこと言わないで下さいよ」


 ストラスはそう言ったものの、その可能性も否定し切れなかった。現に彼は諦める気配がない。主といい、彼の辞書にも諦めるという単語がないのかもしれない。


「ルイが言ってたの。悪魔のストラスには色気があるって。とても魅力的でドキドキしたって。そうじゃなかったらルイだって夢の中とはいえ、わざわざ女の子になってあなたに抱かれたりはしないと思うから…」


 思わず後ろを振り返ってしまってから、信号待ちの赤信号で良かったとストラスは心底思った。目が合ったリツは天使のように微笑む。


「ルイが…それ…言ってたんですか?」


「意外?私たち、けっこう踏み込んだ話もするよ?それこそ…さっきの話じゃないけど…万が一のときに、お互いにどうしても嫌な触れ方があったら困ると思うし、それならお互いどういうのが好きとか知っておいた方がいいかな、って。それに中学生男子は基本的にそういう話が好きなの。すっごく知りたがって聞いてくる…」


 ストラスは話の後半で思わず笑ってしまった。そうだったルイは中学生だ。大人びた顔を見せるので失念していたが、本来なら自分の行いはこの世界では犯罪レベルだ。魔界の法ではセーフだが。


「いや…すみません、何だか安心したというか、気が抜けたというか…」


 信号が青になったので、ストラスは視線を戻しアクセルを踏み込む。


「…ちなみに…後学のために聞くんですが…リツさんの好みは?」


「えっ?私?」


 リツはクスクスと笑う。そうして言った。ミラー越しにストラスを見つめて言った。


「それはジーンが全部知っているから大丈夫」

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