第14説 対立
アリスからの突然の出陣命令を受けたジークは
戦闘に備えて皆を一晩休ませた。その間に自分も休んだジークだが
朝になると変化が訪れていた。
そして、戦地の近くの平原に敵陣と鉢合わせてしまったジーク達は応戦をする。
その中に一人、ロミオの視線を放させなかった一人の少女の姿があった。
そして、ジークはライバルの登場を快く思っていなかった。
ウラヌスにもライバルは生まれ、その態度にウラヌスは激怒する。
第14説 対立 始動
書状が届いた次の日の朝方。ジークは体に違和感を感じて目を覚ました。見ると、誰かの手がジークを抱くように回されていた。最初はミリアだと思ったジークだが、寝息で聞こえた声に驚愕した。
「・・・えっ?ウラヌス?何時の間に?」
そこで寝ていたのは、可愛い寝顔を見せつけるかのようにジークのすぐ傍で眠っていたウラヌスだった。その時、ウラヌスが少し動いた。この調子で行けば直ぐに起きてしまう。しかし、この状況をウラヌスが見てしまえばきっとジークはウラヌスに襲われることになる。それを避けたかったジークはとっさに後ろを向いて寝た振りを決め込んだ。
「・・うぅん・・・・ジークぅ・・・好きだよぅ・・ムニャムニャ・・・」
一瞬、告白されたような錯覚に陥ったジークだが、ウラヌスが続きを言わなかったことが幸いしてジークの理性は保たれた。そしてウラヌスを好きだと言う気持ちに駆られたジークだが、直ぐにあの頃の記憶が蘇ってしまった。そして、反射的にウラヌスから視線を外したジークは記憶が紛れるまで体を震わせていた。
「・・・失礼します。兄上、そろそろ用意の方を・・・あっ・・えっと・・その・・・ごゆっくり!」
唐突にジークの寝室に入ってきたアダムは、ジークのベットの上の惨状を見て驚愕の念を呑みこんで我慢した挙句、押しつぶされたアダムは言いかけたことを破棄して部屋を飛び出した。確実に誤解を招くこととなるだろう事は必至だった。しかもタイミングのいいことにウラヌスが目を覚ました。
「・・あれ?ジーク?おはよ・・・なんだか今日は朝から冷えるね・・」
まるで何も知らないかのような感じに起きたウラヌスは、上半身を起したがジークの視線にはウラヌスの白い肌の背中がまるまる見えていた。と言うことは、ウラヌスは現在上半身は全裸と言うことになる。そんなことになるような事をした記憶が、ジークには全くなかった。幸いにも前面にはシーツが掛かっていて隠れていたが、徐々にずれ落ちてきていた。
「・・・どしたの?・・・!?きゃっ!」
寝ぼけた声で口を開いたウラヌスだったが、シーツの存在と自分の状態を把握するとシーツをガシリと引っ掴んで前面を隠した。ウラヌスの顔は紅潮しきっている。そのウラヌスはというと、頭の中で妹に言われた言葉を延々と繰り返していた。『・・・ジークさんの子供を貰ってきてよ。この幸せ者!』
「あの・・・ジーク?私に・・その・・・Hな事・・・したの?」
顔を赤らめたままの状態でジークを問い詰めたウラヌスだが、否定したいのも山々だが記憶が無いので否定しきれない心境のジークがそこにはいた。なんとも情けない姿だが、ジークなどの鈍感な奴には丁度良い刺激になるのだ。
「わわわ!とりあえず服着ろ!服!」
慌ててそこらへんに散らばっていた服を拾ったジークは、これまた素早くウラヌスに渡して自分の寝室を飛び出した。自分の寝室を慌てて飛び出すと言うのもかなり変な話だ。しかも、真実には誤解があったのだ。実際はこうだ。
「じーくぅ・・・どこー・・・?」
自分の屋敷から脱走したウラヌスは、ジークの屋敷内をウロウロしていた。すると、何かを閃いたかのように一直線にジークの寝室に侵入した。そこには案の定ジークが眠っていた。それをチャンスに思ったウラヌスは、熱かったのかいきなり自ら服を脱いで上半身が素っ裸になった状態でジークの布団に入りこんだ。そうなると安心しきったウラヌスはあっさりと、かつぐっすりと眠ってしまった。そこから先は特にこれと言ってやましい事も起こらずに時間だけが過ぎて行った。
「・・・とりあえず、服着たよ?こっち向いて?」
ウラヌスに呼ばれて振り向いたジークは漸くと言っていい安心感に包まれた。そこにはきちんと私服を着たウラヌスがいた。何故安心したかにはもう一つ理由がある。つい先日の事だ。ジークが目を覚ますと、隣ではウラヌスと同じようにミリアが隣で眠っていた。しかも、ウラヌスと同じく起きれば裸が判明していた。流石にアダムが来る事まで一緒ではなかったが、ミリアの場合は服を着るように注意したが着ていた服が殆ど局部の見えかかっている下着姿だった。その点を考えればウラヌスの方がマシだ。
「よかった・・・っと!今日はそんなことしてる場合じゃ無かった。」
一安心したジークだが、今日の大事な事を忘れかけていた。今日はこの国の命運を左右するかもしれない戦闘の出発の日。そして、メイドの皆の初陣となっている。きっと屋敷の外では、メイド達が恐怖に打ち勝とうと体を震わせている事だろう。しかし、一つ問題があった。このままではウラヌスも連れて行くことになってしまう。何とかして帰したかったが、そう言う訳にはどうも行きそうも無いようにウラヌスがジークを見つめていた。しかし、ここは心を鬼にしてウラヌスを帰すように言うことにした。
「ウラヌス・・これから出かけるからちょっとの間帰っててくれないか?」
すると、ウラヌスは何かを感づいているのかニヤリと笑って「はぁい!」とだけ言って服を整えると帰って行った。なんだかあっさり過ぎると思ったジークだが、とりあえずは自室に備え付けてあったゼロブレイカーを引っぱりだして玄関に出た。
「・・あっ!お兄ちゃん!」
イヴが声に出してジークを呼ぶと、メイド達もつられるようにしてジークを呼んだ。これから先は死ぬかもしれない戦場に赴くと言うのに、これも恐怖心に打ち勝った証なのだろうか。
「・・よし、これより!我らが小隊「アルテマ小隊」は、国境の町である風吹く谷へと赴き、そこで暴挙を働くジェネレーション兵士軍を一気に叩く!そして、風吹く谷を救出する!最後に確認だ!この中に戦場に行きたくないものは手を挙げろ!」
ジークが演説にも似たような説明をメイド達に教え、最後に戦場に行かせないものを選別しようとした。しかし、ジークの考えは間違っていた。皆が手をあげずにジークをただただ見つめていた。その心は一つしかなかった。そう、「お兄ちゃんを守って見せる」という堅い結束が。
「皆・・よし、出陣だ!門を開けてくれ。」
そう言って門の前にジークは立った。すると、イグニスがカギを取りだして門を開けた。そこには先程から見えていたが数台の馬車が並んでいた。これに乗って戦場まで駆けるのだ。
「皆!乗ってくれ!」
そう言ってジークが指揮するまでも無く、メイド達はそれぞれに乗り込んでいた。どうやら馬車に乗るのは初めてである者も多いらしい。これでは遠足に行くような気分だ。
馬車が走り始めて暫く経つと、何やら別の馬の足音が聞こえてきた。もしやの敵兵かと思ったジークだったが、その予想は見事に外れていた。その馬車の上には、鎧を纏って背中に長い両刃剣を背負ったウラヌスだった。すると、ウラヌスはジークが馬車の扉を開けて覗いていたのを見るや否や馬の速度を上げて一気に扉の前までくると、馬から馬車に飛び移った。
「ジーーーーークぅ!」
着地に失敗しそうになったウラヌスだったが、ナイスタイミングでジークがウラヌスを抱きとめた。そして、そのまま馬車の中に突き飛ばされた。しかも空気を読むかのように勝手に扉が閉まって馬車の中にはジークとウラヌスの二人だけになっていた。非常に気まずい。このままではマズイ。そう思ったジークだが、ウラヌスは特に何かをするでもなくジークから離れて一言「ゴメン・・」とだけ謝った。
「ごめんね・・・勝手についてきたりして・・・」
急にしおらしくなったウラヌスだが、謝るしか今の彼女には出来ないでいた。すると、それを見かねたジークがウラヌスを抱きしめた。本来なら、ウラヌスの顔を見るとトラウマが蘇って接しにくくなるが、今回は目を閉じているのでなんら問題は無かった。
「・・そんな事無い。そんな事無いからな。」
ジークが慰めてやると、気持ちが一転したかのように明るくなったウラヌスがジークを抱きしめた。傍から見れば抱き合っているような状態だが、その瞬間にはもうジークに呼吸困難が起きていた。抱きしめた場所が悪かった。もろに肋骨を圧迫している上に、ウラヌスの力が思った以上に強くて苦しんだ。
「ンフフ・・・《ガダンッ》・えっ!何?」
ジークの苦しみなど知らずに抱きついていたウラヌスだが、馬車が大きく揺れてやっと手を放した。どうやら誰かが道を聞いているようだ。内容は聞こえないまでも女の子の声が聞こえた。しかし様子が変だった。普通なら人に道を聞かれる事などしないで戦場まで行く予定だったのが、こんな所で止まっていた。暫く怪しげな雰囲気を醸し出していたが、それは唐突に訪れた。何かを切り裂く音と断末魔がすぐ前で響いた。それに反応するように馬車を飛び出したジークとウラヌスは驚いた。そこには、首の無くなった馬車引きの体が転がっていた。
「はぁい。この馬車、高価そうだから・・・貴方達に人質になってもらうわよ?」
ジーク達が視線を上にあげると、そこには先程まで生きていたであろう馬車引きの首を持った少女が剣に付いた血を払い落している所だった。どうやらジーク達の身分を分かっていない所をみると、どうやらこの少女は現在の撃退対象である敵軍の一人らしい。しかし、あちらの国にもよほど兵隊が欲しいらしいと見えた。この少女は、見た目からしてイグニスの幾つか下のように見えた。まだ学校でペンを走らせているような年頃だろう。そんな少女が、ジーク達の目の前で人質になれと言ってきたのだ。
「おいおい、ヴィーナス・・・お前ってやつはなんでそうまで自分勝手なんだ。」
ジークが少女の事ばかり警戒していると、不意に背後から男性の声が聞こえた。まずいと思ってその場を離れようと思ったジークだったが、進行方向になにやら鎌の様なものを突き付けられて止まらざるを得なくなった。どうやらこの男は少女の仲間らしい。
「フフン・・私の手に掛かればこんな馬車の一台や二台、どうってことないの。それよりもタナトス、見てみなさいよ!この持ち主、カップルって奴だわ。」
なんだか威張り散らすように何処にも無い胸を張ったりして自慢していたヴィーナスは、ジーク達を見て素直な意見を主張した。その時、ジーク達の心の中は何故かドキッとしてしまった。
「フフフ、こんなのと巡り合えるなんて、私たちは・・やっぱり愛の絆で結ばれているのよ!そうでしょ?タナトス?」
喜びが頂点に達したのか、ヴィーナスはタナトスに抱きついていた。その時のタナトスの顔はと言うと、どうしようもないくらいに呆れた顔をしていた。どうやらヴィーナスの言う恋とは、単なる片思いらしいとジーク達は温かい目で見守っていた。しかし、此処にチャンスが出来た。タナトスの腕が塞がったことによって鎌が下に降りた。その隙にタナトスの間合いから逃げ出したジーク達は改めてタナトス達を見比べた。ヴィーナスは平均より少し小さめの身長で、平均よりもかなり高めな身長のタナトスに抱きついていた。これではまるで親子だ。
「どうかしましたか?師匠・・!敵兵!」
ジーク達が鎌の間合いから抜け出たその時、停止した馬車を不審に思ったロミオ達が出てきた。その時にはもう、ロミオ達を乗せていた方の馬車引きは逃げ出していた。すると、流石に数で劣っていると認識したヴィーナスが指を鳴らした。すると、足元に大量の召喚陣が形成されてあっという間に何十もの召喚獣が姿を現した。
「あらら・・あんた達、貴族じゃなくて軍だったの・・道理でタナトスの鎌から逃げられた訳だ。」
なんだかつまらなそうに驚いたヴィーナスは、改めて先程までの状況を把握した。そして、タナトスが大きく息を吸い込んで指を銜えて指で笛を吹いた。すると、後方の崖の上から誰かが大きなライオンの様な獣に乗って崖を跳躍だけで飛び降りた。その誰かを見たロミオは、驚愕で口が閉じられなかった。
「ジュリエット・レヴァロニス。只今参上仕りました。」
その姿を見たロミオは驚愕した。その姿は、ロミオの恋人であり少し前に行方をくらましてしまっていた少女、ジュリエットそのものだった。
「ジュリエット!」
ロミオがジュリエットを呼んだが、本人は「誰だ貴様は!」とだけ言って物凄い形相で威嚇してきた。その時になってようやく、ヴィーナスが突撃命令を下した。そして、一斉に獣たちが襲いかかってきた。
「くそ・・俺達も行くぞ!」
ジークの掛け声で、皆もそれぞれに武器を持って戦場の一ページに進入した。
今回は、文字カウント数が5000を超えましたのでこれより先からは番外予告をしようと思います。
「はいはい!進行役のウラヌスです!」
「同じく、進行役のルイズで~す!」
「今回は激戦だよ?」
「激戦だね。」
「そして、」
「そして?」
「次回にはあんな人やこんな人が登場するかも・・」
「おおっ!そいつはそいつは!次回もお楽しみに!」
「でも、次回からはコーナーは無いとか・・」
「ええぇっ!!?」