第11説 暮らし
メイド達を連れて自分の屋敷へと帰ってきたジーク
帰り道で少し買い物をして荷物が手いっぱいになりながらも
何とか無事にたどり着いたジーク達
LAGNNALOK 再始動
苦しくなりながらも荷物を持っていたイグニスは、半分以上を隣を歩いていたジークに渡して一息ついていた。しかし、調子が戻っても荷物を受け取ることはせず、余裕の表情をジークに向けていた。
「ウラヌス・・・は無理か・・ミリア・・って!空飛ぶな!目立つ!」
誰か手伝ってくれそうな人物を探し求めていたジークだが、ウラヌスは非力でこの量を持てるとは思えない。ミリアは、自分のいつも持っている箒で空を悠々と浮かんでいた。速度は皆の歩幅に併せているらしい。しかし、普通は空を飛ぶ者などはいないので必然的に目立っていた。
「良いじゃないの!ご主人にも迷惑な話じゃないでしょ?ほら。」
ミリアは、ジークの真上を飛んでいた。その為ジークはミリアを直視出来なかった。彼女は今は魔女服姿。と言うことはほとんどワンピースの様なものなのだ。後は・・お解りだろう。それを知っていてわざとジークに、見せびらかすように見せたミリア。羞恥心と言うものが無いのか。彼女は。
「・・・お兄ちゃん・・・・着いた・・」
チェリスが恥ずかしそうにジークの服を引っぱってそう告げた。ジークからすればもう既に見えていたのだから今更とも思ったが、それをそのまま口にするのは無粋だ。なので、ジークは「そうだね」とだけ返した。それが一番最良だったのかもしれない。
「誰か・・門のカギを・・」
そう言ったジークだったが、何故かイグニスが鍵を持っていた。どうやら合鍵を渡されていたらしい。それを差し込んだイグニスがカギを45度捻った。すると、ジークが前回見たのと同じように扉がひとりでに開いて通れるようになった。
「ただいま~~。」
館の正門を開き、皆で一緒に帰ってきたジークは一番に荷物を降ろして数人で分担して運ぶよう指示した。はじめからこうしておけば良かったのだ。しかし、メイド達が可哀そうに思えたジークは我慢して自分で荷物を持つことを選んでいた。ヴァイスからの報告が確かなら、傷が浅かったアダムとイヴは先に帰って部屋の掃除をしているらしい。それがかなり的確、かつ俊敏なのだろう。ミリアの猫であるオルトロスに踏みつぶされていたガラスの床などが元に戻っていた。流石はメイド長と執事長だ。
「・・・あっ!お帰りなさい!兄上」
たまたま玄関前の廊下を通りかかったアダムが、ジークを優しく迎え入れた。因みに、アダムがジークの呼び方を「兄上」にしているのは、大の大人がこの年になって「お兄ちゃん」は恥ずかしいと思ったからだ。
「ただいま!・・・アダム。この子の事だが・・・」
ミリアを指したジークは、何かを聞こうとしたがアダムは分かり切ったように「ヴァイスさんから聞きました。OKです。」とだけ答えた。
「やったぁ!これで正式採用なのね!」
飛んで喜んだミリアは、チェリスの手をとって一緒に踊り始めた。チェリスの方はかなり苦しそうになっていたが、ミリアはそんなことには構いもせずにただただ子供のように喜んでいた。
「・・・あっ!アダム君!時計見て!懐中時計持ってるでしょ?」
何かを思い出したように声を上げたウラヌスが、アダムに時間を聞いた。直ぐに確認したアダムは「午前8時45分ですね・・」とだけ呟いた。すると、ウラヌスが「ヤバい!また今度ね!」とだけ言って帰って行った。どうやら約束があるのだろう。とジークは思った。
「ミリア。君も今から我々と同じく、この兄上の使用人だ。宜しく頼む。」
アダムのその表情は、憎しみなど微塵も感じさせない明るい笑顔だった。どうやらヴァイスに説得されてミリアを認める気になったようだ。ヴァイスには度重ねて感謝しなければいけない。色々と助けてもらったのだから。
「イヴ!・・・・「はーい!」ミリアを更衣室へ連れて行ってくれ。」
イブに指示を出したアダムは、ミリアにイヴのいる方向を教えて向かわせた。本当にアダムの指揮能力には驚かされる。そのカリスマ性は一流で、あのミリアも正直に言うことを聞いている。どうやら本当に此処の襲撃は故意に起こしたものでは無いらしいとジークは改めて考えた。しかし、その説明では幾つか引っかかる点が存在した。先ず、使い間や召喚獣と言うものはプライドが高く契約者以外の者の命令を聞く事は滅多にないらしい。だとすれば何故、オルトロスは此処を2度も襲撃したのか。第2に、一度目の襲撃が起こったのはジークがまだ初等科の時の出来事だ。ならばミリアもまだ幼いはずだ。だとすればミリアにオルトロスが操れるとも、ましてや召喚すること自体出来なかったと推測できた。ならば、一度目の襲撃はミリア以外の誰かが、オルトロスを使って襲わせたと考えられた。次に、今の状況をこちらの国の上層部が見逃すとは考えづらい。その内にでも監査に来るだろう。そうなればミリアは裁判にかけられることになる。他にも色々と思いついていたが、処理しきれなくなってきたジークは深呼吸をして気を落ち着けて後ろを振り返った。そこには6人程の少女達が列を作って並んでいた。
「・・・お兄ちゃん!皆が自己紹介したいって。」
唐突にイグニスが口を開いた。どうやら、昨夜の内に予定してはいたらしい。なのだからこのようなセリフが言えたのだろう。その言葉を聞いて一列に並びなおしたメイド達を見たジークは確信した。
「先ずは私から!ファリス・ゴルト・ターシス!種族は妖精。力は七曜の金です。」
元気よく挨拶したファリスは、喜びながらジークの隣に立った。そして、その仕草を見たジークはある事を思い出した。そう言えば昨夜のパーティーで真っ先に料理を持ってきたのはこの子だった。
「つ・・・次は私?・・・え・・えっと・・クルス・エイリス・・ドワーフ・・です・・」
緊張しているのか、それとも心が開けていないのかクルスは言葉もとぎれとぎれな状態で紹介を済ませてファリスの隣に立った。どうやらチェリス以上の恥ずかしがり屋らしい。
「次は僕だね!待ってたよ!・・イリア・リーチェです!これから宜しくね!お兄ちゃん!」
一人称は僕なのだが、確実に女の子だった。所謂「僕っ子」である。しかし、そう言う所が好きな将校も居て、わざわざ使用人に僕っ子口調を強制させるらしい。どう考えても変態だ。
「私の番?・・ニンフ・チャイル。妖精よ。力は七曜の水。分かったわね?」
なんとも強気な性格。それがジークが貼り付けたニンフの第一印象だった。それもあながち間違いではないかもしれない。ニンフの口調には、何か強気の空回りの様なものが見え隠れしていた。
「私の番ですわね?・・イリアス・ブランシュタインでございます。エルフです。」
懇切丁寧に説明したイリアスは、姿勢を崩さないまま皆の所に並んだ。どうやら幼いながらもそれなりに教養はあるらしい。
「最後はアタシ?・・アミ・リンですネ。どうぞ宜しくネ。」
なんとも偏った中国なまりで挨拶をしたリンは、ニコリと笑って最後に列に入った。どうやらこれで全員の自己紹介が終わったらしい。やっと終わったと思い、自分の部屋に戻ろうとしたジークだったのだが、廊下から一人の少女が姿を現してジークは足を止めた。
「・・・どうかにゃ・・ご主人様。」
その女性は、メイド服を着てはいるものの間違いなくミリアだった。しかも、何故かイメージと割にあっている猫耳をカチューシャの代わりにつけていた。しかもそれが桁違いに似合う。どうやらミリア自身も気に入っているようで、ジークが好反応を示したことに喜んでいる。すると、後ろからイヴが何かを運んでやってきた。見るとそれは15人分は入るであろう衣装ケースだった。
「皆ぁ!お兄ちゃんにこれを着せましょー?」
イヴが衣装ケースを開くと、中にはメイド服やセーラー服、無意味にゴスロリ服、嫌味に水着、遊び心をくすぐるようなデザインの学生服、誰が着ているのか直ぐに分かるデザインの巫女服、シンプルにジャージ上下、動物のコスプレ用衣装、とどめにボンテージまで用意されていた。
「・・皆?お兄ちゃんに何するんだ?お兄ちゃんは疲れ・・キャー!」
女の子っぽく悲鳴を上げたジークは、メイド達の思うがままにされて行った。その間、突っ込み役である筈のアダムは、調理室にいって料理を作っていた。どうやらそれなりに興味を示していたようだが、そのあたりは無駄に子供っぽい。どうせならアダムにもやってもらいたかったと心の奥底から悲願するジークの姿がそこにはあった。
「こんな感じですにゃ!・・・・ジュルリ・・」
無理矢理着替えさせられたジーク(着ている服は御想像のままにお願いします。)を凝視したミリアは、まるで獲物を追い詰めた猫のように舌舐めずりをしていた。これではどちらが主人か分かった物ではない。そんなこんなでその日一日は楽しく流れて行った。
メイド達が庭や館内で正式に仕事を開始しだした今日この頃
唐突にジークフリート邸を訪れた一人の少年が居た。
その少年はジークへある書状を渡しに此処へ来たというのだが・・
次回 第12説 弟子 乞うご期待 とは言わないものの、心安らかに待っていて下さい。