響かない声のエコー
3月の清峰高校、桜が散る。麻生翔太(高2)は佐倉美月(高2)の手を握り、教室で笑う。「佐倉、顔赤くね?」美月が「うるさいよ、麻生」と返すが、頬が熱い。学園祭の「本音のハーモニー」から5カ月、2人は恋人だ。高橋葵(中3、美月の妹)の思春期症候群を解決してから3カ月、葵はピアノを続けている。だが、翔太の妹・麻生琴音(中2、14歳)は家に閉じこもる。元文芸部、詩を書くが、半年前、SNSの誹謗中傷で不登校に。彼女の声が途切れ、存在が薄れる。
半年前、琴音、中1。 スマホが震える。匿名アカウントから「琴音の詩、ダサすぎ」「空気読めよ」。通知音が耳に刺さる。母が言う。「翔太は友達に好かれてるのに、琴音はどうしたの?」夜、部屋で鏡を見る。「私、いらない?」声が途切れ、喉が詰まる。文芸コンクールで詩を笑われ、教室の視線が刺さる。ハブられるのが怖い。ボロクソ言われるのが嫌だ。琴音は学校をやめた。
現在、佐倉家。美月と葵が琴音を訪ねる。葵の金髪ポニーテールが揺れる。「琴音ちゃん、音楽室、行こうよ」琴音は俯く。「無理…みんな、私のこと嫌ってる」声が途切れ、姿が薄い。翔太が言う。「バカ、隠すな。俺が見てる」美月が手を握る。「私もSNSで『消えろ』って言われた。葵も怖かったけど、乗り越えたよ」
過去、浜辺。 琴音は1人、波音を聞く。「詩を書きたいのに…笑われるの、怖い」声が途切れ、姿が揺れる。翔太が現れ、「隠すなよ、バレバレだ」と言う。琴音は泣く。「誰も私のこと見てない…」
音楽室、葵がギターを弾く。「琴音ちゃん、私も姉貴に嫉妬して、消えそうだった。でも、私でいいって思えた」美月が言う。「琴音、私も偽ってた。君の詩、好きだよ」琴音の胸が軋む。SNSの「ダサい」が頭で響く。ハブられたくない。笑われたくない。でも、書きたい。拳を握り、叫ぶ。「私、詩を書きたい! ダメでも、私の言葉で!」ノートにペンを走らせる。声が戻り、姿が現れる。
学校の門前、琴音が一歩踏み出す。美月、葵、翔太が見守る。翔太が笑う。「いい詩だな、琴音」美月が頬を染め、葵が笑う。「姉貴、翔太さんとラブラブ!」琴音が呟く。「もう、隠さない」桜が舞う。
END