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二人ノ俺  作者: 灰色のネズミ
望まぬ剣の道
39/89

探索競争

 パシャリ、と遺跡の鬼の彫り物を写真に撮る。


紅屋(べにや)〜、そっちは撮れた?」


「は、はい! 撮れました!」


 別のところを撮りに行っていた弁天(べんてん)さん。確認しに来た彼女に、さっき撮った鬼の面を見せる。それを見て頷いてくれた。

 ベージュ色のレンガ作りな床をローファーで歩いていく。時々砂を踏んでジャリッと音がする。


「制限時間はもうすぐね。今から別の場所を撮りにいく時間はないかな」


「そうですね、地図で確認するとここから入り組んだ道を通った数メートル先ですから」


 スマホの『ダンジョンナビ』に表示されているダンジョンマップを確認する。ピコピコとマップのあちこちに赤い点が表示されていて、走っても次の赤い点の場所には着きそうもない。


「向こうはどれくらい撮れたんだろうね」


「どうでしょう」


 昔、小学校の頃この“競技”をやったことがある。

 あの時は俺が一番撮ってて、一位になった。まあでもあんまり思い出したくない記憶かな。競技の思い出というより過去そのものを思い出したくない、苦い思い出が山ほどあるから。

 そんなトゲトゲしたものは頭の隅っこに追いやる。

 のほほんとのんびり弁天さんと歩いているとダンジョンの壁に設置されたスピーカーから声が聞こえて来た。


『終了〜! みんな手を止めて〜、今この瞬間から撮ったものは無効だよ〜』


「終わったみたいね。戻りましょうか」


「はい」


 歩いていると向こうから岩で出来た小型のゴーレムが現れた。紅屋さんの腹部くらいに頭がくる程度の大きさだった。


23e3¥ー¥>(ファイアーボール)!」


 紅屋さんの魔法は強い。

 杖の先から飛び出した炎の球は簡単にゴーレムを粉々にした。


「ふぅん、やっぱり魔法安定してきたね。ちょっと前までは外すことも多かったし、形も不揃いだった」


「まあまあ、苦労しました」


 紅屋さんの友人達に手伝ってもらいながら鍛えた結果だ。幽真の戦闘データも役に立っている。

 今は新しい魔法を会得できないか考えている途中。

 ほどなくして入り口に辿り着いた。


「お疲れさまですわ〜」


 集まっていた9人の集団の中から、ピンクと白の着物を着た年上の女の子から声をかけられた。

 集団の内2人は同じチームのメンバー。3人は今回の競技を開催してくださった担当者さん達。

 そして残りの4人は対戦相手のチームだ。着物の女子も相手チームの仲間。


「私たちが先に入り口に着いたって事は、あなた達は奥まで行ってたみたいですわね。これは負けてしまったかしら」


「弱気でどうするのよ。そんなんじゃそっちのリーダーに顔向けできないわよ?」


 同い年の弁天さんが軽い口調で言葉を交わす。

 俺は向こうのメンバーみんなに注目されてしまっていて、恥ずかしくて顔を背けてしまっていた。どうしてそんなにこっちを見るんだ……?

 

「さて、では結果発表をします」


 タブレットを持った係の人が前に出てきた。


「改めて競技の説明から。ダンジョン内で指定された場所をどれだけ撮影できたかを競います。より多くの場所を撮ってきた方の勝ちです、撮影した写真のデータはすでにこちらに送信されていて、先ほど集計が終わりました」


 係の人が発表していく。

 まずは対戦相手から。


水月(すいげつ)女学院11箇所」


 次にウチの学校の発表だ。


鏡花(きょうか)女学院18箇所。よって鏡花女学院の勝利となります」


 わああ!と歓喜の声が出る。チームメイトの女子2人にもみくちゃにされて、体が硬直する。

 もう周りの音が聞こえないくらいだったが、弁天さんの笑う声が確かに聞こえた。


「あー、やっぱり負けちゃってましたわ。しかし7点も差ができてたのはどうしてかしら」


 水月女学院の浴衣の女子がやれやれと肩をすくめた。そしておしとやかな仕草で顎に手を当てて、首を傾げる。


「どこで差がついたのかしら。ほとんど同じペースだった気がしますけれど」


「それは運が良かったってのもあると思うけど、一番はそこにいる紅屋の才能かな」


「才能?」


「あの子この競技に手慣れててね。写真を撮る速度も早かったけど、次の目標地点を確認してからルートを決めるのがテキパキとしてたからスイスイ進めたのよ」


 他2人の動きも逐一確認しながら私に指示を出させていたから効率よく攻略できた、と弁天さんは付け加えた。

 それを聞いて浴衣の人は感心する声を出してこちらを見つめてきていた。もみくちゃにしてくる2人の女子の体の隙間からその様子が確認できた。

 うう、この状況……柔らかかったりいい匂いがする。


「なるほど、噂に聞いてたのとは別の才能があったわけですか」


「対戦ありがとうございました。次の試合でも負けませんから」


 弁天さんが手を差し出す。

 微笑むと和服の袖を緩やかに捲ってから、ゆっくりと握手を交わした。


「ふふ、ウチは強いですわよ」


「こっちもよ」


 水月女学院との対戦は別の場所でも行われている。

 俺は()()()()に意識を集中させる。もうすでに現場のダンジョンに着いていて、バスから降りるところだった。

 すぐに競技が始まるだろう。俺は紅屋さんの体を弁天さんに預けて、向こうに集中する事にした。

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