第3ぬこ
3話の前に忘れていたことがあったので一つ、
2話であった昼食ですがメニューが多いという話ではなく量が多いという話で、品数が少ないのは晩の残りのもで魚なんかはその日もうちに食べてしまったため置いておけるものが少なかったからです
べ、別に作者の知識がないってわけじゃないんだからね!
「・・・どうしようか?」
「どうしましょう・・・?」
二人で楽しい昼食を終え片付けも済み、さぁこれからどうしようかと考えていた時のこと、とある問題が浮上した。
これについて考えることもうすでに2時間になるが全くいい案が出ていない。
何について悩んでいるかと言うと、この子がこれから何をしたいか、あるいは何をするかを決めなければならないこと――――――ではなかった。
事の発端は2時間前にさかのぼる――――――
――――――2時間前――――――
「そう言えば君の名前ってなんていうの?」俺のこの発言が事の始まりだった。
食事を終えた後、食器を片付けるのを手伝うと言ってきかなかったこの子と一緒に洗い物を終え、休憩にちょろっとコーヒーでも飲んでいた時のことだった。
(余談ではあるが、もちろんこの子が洗い物なんて知っているわけもなく1から全部教えたのだが、いつも皿を落としそうに危なっかしく手伝ってくれるので気が気でならなかったせいか二人でやったにも拘らず一人でやるのとたいして変わらない時間がかかった)
「え?」
「いやね、そう言えば君の名前とか詳しい事は何も聞いてなかったよなって思ってさ?」
そう、あろうことか俺はこの子の名前を聞いていなかったのだ。出身や年齢など相手が相手だから聞けない(あるいは聞いても意味がない)内容は仕方がないにしても、いつまでも名前を知らず君と呼ぶのもどうかと思ったのだ。
――――――ちなみに聞いてなかった理由は混乱していたというのもあるが実際のところ
この子=美少女=確定した事実
という方程式が成り立っていたために内心で美少女と呼ぶことに違和感がなかったからだ――――――
と言う内々の事情は置いておいて、自己紹介でもしようと思い名前を聞いたのだが何がどうしたのか困ったような落ち込んでいるような顔をされてしまった。
「すみません・・あの・・・」
別に答えに詰まるような内容ではないと思うが・・・?
「えっと・・どうかした・・・?」
「どうと言うほどの事ではないんですけど・・・」
そうは言っているが歯切れが悪い、もしかして地雷だったんっだろうかと少し不安になった。
がそんなことでは全然全くなく、この子の回答はある程度考えればわかるものではあったが俺は予想なんてしていない内容だった。
「その・・名前がないんです・・・」
「・・・へ?」
「ですから私は名前を付けてもらったことなんてないんです・・・」
「それもそうか・・もとは猫だもんね・・・」
なんて『吾輩は〇である』状態ですかとか思ったのだった――――――
と言う訳で~第1回・美少女猫に良い名前を付けてあげよう!大会~が開催されたわけだが、これがもう遅々としていい案(名前)がでない。
参加者二人と同時に優勝候補が二人と言う状況にも拘らず、2時間ずっと決着の付かない膠着状態が続いていたがそれも仕方のないことだった。
理由は簡単でまず一人目、名前を付けられる本人だが、自分の名前を自分で付けると言うのはなかなかに難しいようでこの勝負を棄権する(基本俺に任せる的なスタンス)ようだ。
そしてもう一人の優勝候補はもちろん俺だ。二人の参加者のうち一人が棄権しているので優勝間違いなしのポジションなのだが優勝には程遠い。
何故ならむしろ問題なのはこちらの方で絶望的にネーミングセンスがない。
別に絶望的とは言ってもスフィンクスとか徳川家康、シュレディンガーなどと付けるほどネーミングセンスが死んでいるわけではないが、それでも思いつくのはミーとかタマとかおおよそ人間(この際この子が猫だと言う事は置いておく)に付ける名前ではないものばかりだ。
開始早々2時間で大会そのものが危ぶまれてしまった。
「なんかいい案はないだろうか?」
「私はなにも思いつかないです・・・」
「俺も思いつかないんだよなぁ・・・」
この子は期待しています!と言わんばかりに俺を見つめてくるが、俺自身いい案なんて浮かばない。
それを感じ取ったのかこの子も次第に肩を落としていき、当然と言えば当然なのだろうが話せる事がないせいで二人とも無言になってしまった。
―――この子が何をしたいかと言う事もそれなりに難しい問題ではあるものの、そっちはこの子に考えてもらい俺はそれについてアドバイスをするなり意見を言うなりでよかったので、自分から何かをする必要なんてなかったために俺にとってはこっちの方が難問だった―――
問題は考えども考えども一向に解決に向かう気配がない。
しかし、解決策がないままこの状態が続くと言うのも避けたいのでダメもとで解決を図ってみる。
「(この子の特徴とかから考えてみようか)」
見た目から名前を考えると言うのは本当に猫や犬みたいな動物にするみたいで嫌なのだがもう他に案はないし、この子は猫だ。これでいこう。
とは言っても見た目なんて・・・
美人で目と髪は茶色、猫で女の子、あとは・・あとは・・・
「(だ、駄目だ・・もう思いつかない・・・)」
本当に見えているところ(聞いていた事)しかわからない。軽く鬱になりそうだ・・・。
しかしこれ以上考えても思いつくことはなさそうに思える。
「(そうなると・・ちゃー子(茶子)?いやいやないない、こんな名前は絶対ない。だいたい猫の名前から進化してもない。なら・・ネコ(猫の女の子で猫子)・・・?」
「駄目だ(ボソ)・・・」
「あの・・どうかしたんですか・・・?」
俺が普通では聞こえないくらい小さい声で何かを呟いた上、暗いオーラを発していることに気がついたようで様子が気になったようだ。
しかし俺はそんなことは気にしていられる状況ではなかった。
「駄目だ・・死のう・・・」
「え!?いきなりどうしたんですか!?わわっ!ベランダのドア開けて飛び出そうとしないでください!」
「 I cannot fly ! 」
「本当に飛べませんから!飛び出そうとしないでください!ていうか発音すごくいいですね!?」
なんかいろいろ嫌気がさして本当に飛ぼうかと思いました。
「ごめんなさい。なんか負担になったみたいで・・・」
「いや・・そういうわけじゃないよ・・・」
本当にそういう訳ではないだろうに、この子の中ではそうならないらしい。この子はなんでこんなにも優しいんだろうか。
「単に俺が情緒不安定だっただけだし、そんな深く考えなくてもいいよ」
「いえ・・本当に謝らないといけないんです・・・」
「・・・?別に謝るほどの事じゃないよ?」
「いいえ、そのこともありますが・・私はここにきてからずっと頼ってばっかりですから・・・」
さっきまで明るく振舞っていたのに急に表情が曇った。どうやらずっとこの子の中で気になっていたことがあるようだ。
顔にありありと不安が浮かんでいるのが見て取れる。
「私は・・どれだけ親切をしてもらっても何一つお返しできるものはありません」
こちらの事を見ようとしてせず一方的に語りかけてくる。それほど真剣に考えて溜め込んでいたんだろう。
「私すごく迷惑をかけているんじゃないですか?もしそうなら言ってください、すぐにでも出ていきますから!」
この子は吐き出すように思いを告げた。
俺はこの子の告白で、どうやら思い違いをしていたようだ、と言う事に気がついた。
俺は会って間もないこの子の事をとても優しい、人のことを思いやれる子だと思っていた。何故そんな風な事が言えるのか、と聞かれてもわからない。正直そんな気がした、という程度の漠然としたものだ。
(第一これは俺がこの子に感じたイメージを無理矢理言葉にしただけだから厳密に言うと違うと思う。なんと言うか暖かい柔らかさと言うのだろうか?この子がいるとすごく心が軽くなる気持がしたのだ。それを言葉にすると優しいって言うんじゃないかな?って思ったってことなんだけど・・・)
実際にこの子は優しいのだろうが俺にはこの子の優しさがどこかおかしいように感じられていた。
必死な優しさと言うか、いっぱいいっぱいで他のものが入らないくらいのぎりぎりな感じと言うか。
とにかくこの子から感じるものには違和感があったのだがそれがようやくわかった。
俺がこの子に感じていたのは確かに優しさもあるだろうが、それだけではなかったのだ。
・・・よく考えていれば簡単にわかることだった。
この子は気が付いたら人間になっていて、元の姿には戻ることができなくなっていた。人間の中に知り合いなんているはずもない。頼れる人はいないくて誰が信じられるかもわからない。その中でここしか相談できるところが見つからなくて、やってきた。
要するに不安だったのだろう。情緒が不安定だったのは突飛な状況に置かれた俺の方じゃなくって実際にその状況に陥っているこの子の方だった。
不自然に思えるほどに感情が表に出ていたのもそれを悟られないためだったのかもしれない。
「・・・そんなことないよ。俺は君の事を迷惑だって思ってなんかいない」
「でも・・・」
「いいから聞いて?」
「・・・はい」
この子が何を言おうとしているのかひょっとしたら分かっていないのかもしれないが、それでも遮って続ける。
「君が最初にここに来て、『私は猫です』なんて言った時は驚いたよ。そのあとも実際に君が猫だっていう証拠を見せられた時も、やっぱり驚いた。突拍子なにもあったもんじゃないとか正直何を言ってるんだこの子は?なんて思ったりもした」
俺の言う事をきちんと聞いて口を挟まずにいるが俺が話をするにつれて段々と顔が曇っていく
「したい事がないって言われて、名前もないって聞かされて今度はすごく困った」
「・・・」
顔を見られたくないせいか、とうとう顔を俯かせてしまった
「終いには自分で自分の事を迷惑だって言いだした」
「・・・っ」
息を飲む声も聞こえる。それもそうだろう気にしている事をここまでヅケヅケと言われたんだから
「本当は迷惑だって思った。なんでいきなり現れた子にこんなとんでもない話を聞かされないといけないんだってね」
これは俺の正直な気持ちで本当に最初はそう思った。
けど
「でもね?君がこの家に来てから悪いことばかりじゃなかったんだよ」
「・・・え?」
その言葉に恐る恐るといった風で顔を上げる。目には涙が溜まっていた
「信じられないかもしれないけどね。でも本当なんだ」
当然だろうがやはりわからないと言う眼で俺を見上げる
「波乱万丈とまではいかないけど君がいてなんだかわくわくした。君が昼ご飯を食べ終わった時にごちそうさまでしたって言いながら見せたくれた笑顔がなんだか嬉しかった」
「そんなこと・・・」
そうだ、この子が来てから数時間。俺の心が落ち着くことなんてなかった。心臓はずっと騒いでいてうるさいくらいで、でもそれがとても心地よかった。
「君は嘘だって思うかもしれない。証明する方法なんてないから、信じてくれとしか言えない」
本当に俺が思っていたのことなんてそれくらいしかない。だってそうじゃないか
「そんなことで私を助けてくれるんですか?私ができることなんて何もないのに・・・」
「かまわないよ。元々見返りなんて期待してないしね」
こんなにいい子が一人で寂しがって不安になってるんだから助けたいって思うじゃないか。
だから見返りなんていらない、何もしてくれなくてもかまわない。クサイ言い方になってしまうけど、ただ笑って楽しくいられて、そのことを感謝してくれて、それで最後にありがとうって言ってほしい。
君がそうなれるなら俺は君の多少のわがままくらいなら聞いてもいい。
「信じても・・いいですか・・・?あなたの事を信じて、私の事を助けてくれる人だって・・・私の味方だって、思ってもいいですか?」
「約束するよ。君の見方になるって、絶対に裏切ったりしないって」
言い終わると押し倒すような勢いで抱きつかれた
「ありがとう・・ございます・・・」
掠れた声でそれでも一生懸命に言う。
俺は返事の代わりにこの子を抱きしめ返し
「決めたよ。たった今から、君の名前は沙弥だ」
この子に名前を贈った
「あの・・すみませんでした!」
しばらくして落ち着いたのか沙弥は顔を上げて言い放った
「服も濡れちゃいいましたしヘンなとこ見せちゃって・・・」
「気にしなくてもいいよ。すっきりできたんならそれでいいから」
「あ、ありがとうございます」
やはり恥ずかしかったのか照れているようだ。顔が赤いのがよくわかる。
「(まあ、一歩前進ってとこかな。沙弥も心なしか表情が柔らかくなってるみたいだ)」
「はいはい。どういたしまして」
沙弥の名前とか一応の決着はついたが、それにしても、とは思う。
結局、名前一つ決めるのに2時間もかかるなんて思ってもいなかった。
「(まあ、子供が生まれた親なんかは2時間どころじゃなくて月単位で悩むしな・・・。むしろ2時間くらいで決められないのも当然か。・・・待てよ、2時間って!?)」
いろいろな事が立て込んでいい感じに落着したせいか、大事なことを忘れていたのに気が付く。
「(たしか昼ご飯を食べようと思ったのが少し遅めでだいたい13時過ぎ、食べ終わって片付けに1時間と名前に悩んで2時間+αと言う事は今は17時!!)」
「しまった!」
「ど、どうしたんですか?」
いきなりの大声に驚く美少女改め沙弥。しかし今はそんなことにかまっている暇はない。
「そうだった!もうそろそろ帰ってくる時間だったんだ!」
「か、帰ってくるって誰がですか?」
「妹だよ!今日は午後から部活だって言ってたから、もう家についてもおかしくない!」
これはまずいことになったと焦る俺だがいまいちこの子には理解できなかったようだ。
「家族が帰ってきたらダメなんですか?」
なんで焦るんですか?と聞いてくる。これが焦らずにいられますか!
「別に家族が帰ってくるのは普通だけどね!問題なのは君が今ここにいる事なんだ!」
「え?あの・・私、やっぱり迷惑だったんでしょうか・・・?」
今の発言を勘違いした沙弥は不安そうに俺に聞いてくる。
「違う!そうじゃなくって、君みたいな見た目かわいい女の子を誰もいない家に連れ込んでるってことがマズいんだよ!」
「あの・・かわいいってその・・・それにどうして家にいたらダメなんですか?」
可愛いと言われて嬉しかったのか顔を赤くしながら聞いてくる。かわいいんだよ!
じゃなくって!とにかく落ち着け俺!
「いろいろとダメなことがあるんだ。詳しくは後で説明するからとにかくここから移動「ただいまー!」ノー!」
すごくいいタイミングで帰ってきやがった!
「いや待て、すぐにここに来るわけじゃないんだあいつの隙を見計らって「おにいちゃーん!」うっそお!?」
部活から帰ってきた妹は自分の部屋ではなく、俺の部屋と半分物置になっている部屋しかない2階への階段をものすごい勢いで駆け上がってきているようだ。
「やばい!とりあえず隠れて!って、うわ!?」
「きゃ!」
やばい。焦っているためか状況を悪化させてしまった。
どういう事かと言うと、なんのことなどなく、布団などが置いてある襖の向こうに隠れてもらおうと沙弥の手を引いて立たせようとしたのだがその時に足がもつれてしまい、沙弥に覆いかぶさるように倒れこんでしまったのだ。
突然の事に沙弥はもちろん、倒れこんだ拍子に沙弥の顔と泣き濡れてキラキラ光っている眼がすぐ目の前に来たために俺も身動きが取れなくなる。
そして
「ただいまお兄ちゃん!今かえった・・・よ?」
「お帰り、美雪・・・」
俺の部屋の扉は開かれ、当然のごとくその先には部屋の中の状況に驚いている妹、美雪の姿があった。
第3話投稿です
なんか3,000~4,000文字で小まめに投稿しようと思っていたら長くなってしまいました。
あっれー?
それと今回は割と話に力を入れたせいか、17時ごろにはこれを執筆し始めていたのに危うく日付が変わるところまで追いつめられました
ちなみに力を入れたのは話であって文章そのものはいつも全力です
すごく難しいお・・・
さて、ぬこの名前が決まったと思ったとたん新たなハプニング発生、どう乗り切るんでしょうかね。すごく楽しみです(笑)
あ、主人公は一人暮らしじゃないですよー
その辺もおいおい書いていきますかね
あと実は毎日のご飯メニューについてこんなのはどうだろうか?と言うのがあれば教えていただきたいのです。
べ、別に作者の知識がないわけでもあなたの意見が聞きたいってわけでもないんだからねッ!
アホな冗談はさておき、本気で考えていただければ幸いです。
ちなみに料理を作る人は大体なんでもできると言う設定にするつもりですが、特に和食が好きなので得意らしいです。
しかし!意見があるならばなんでも重宝いたします!
お待ちしておりますえ。
次回予告はまあ妹とか家族の話になりそうです
それでは
意見感想アドバイスあと今回はアンケート?お待ちしております!
誤字脱字あれば教えてくださいな
ではではまた会いませう
(^-^)ノシ