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#10 最初の法螺貝

モンハンワイルズたーのしーーい!!

テスト前?知らんな一狩り行こうぜ!!


エレベーターに乗り込む。扉が閉まり、上昇を開始する。しばらくすると並行移動に変わり一直線に移動している。そうしてしばらく経つとまた上昇に転じ整然と立ち並んだビル街が見えてくる。エレベーターが停止した瞬間、


「実技試験、始め!!」


という声が聞こえると共にエレベーターのドアが開く。とりあえずと、俺は服と一緒に置いてあったインカムを耳に入れ電源を入れ、ホログラムを表示させる。操作方法は紬に習った通り、どうやら組織自体に一枚噛んでいるらしい。


「えーっと、対象の場所は、、、」


ホログラム上に指を滑らせ地図を探す。数十秒の格闘の末俺はマップを表示させることに成功した。


「おーよしよしいい子だ。さて対象は、、、」


そのマップには、、、


「は?マジ?頭イカれてんのか?」


現在地を示す赤点のほぼ反対側であるタワーのふもとにある広場に対象を示す黄色の点が表示されていた。


「クソッ!」


思わず悪態をつきながら走り出す。この模擬戦の勝利条件は対象の撃破または護衛、護衛がいなくちゃ戦いにもなりやしない!


「絶対このルール考えた奴性格悪いだろ!」


そんなことを思った矢先、若月に閃光走る。再度ホログラムに指を滑らせる。思い出したぜ、試験中はペアと通話が可能であると!!確か名前は、、、


「あーもしもし?星詠さん?」


「えっあっ、はいっ!星詠でしゅっ」


噛んだ。どうやら声的に道を教えてくれた親切な女性がペアらしい。


「名前わかってると思うけど、若月晴樹。以後よろしく」


星詠風歌(ほしよみふうか)です!よろしくお願いしましゅ」


また噛んだ。


「大丈夫?」


「大丈夫ですっはい!」


いつか舌を噛み切ってしまいそうだ。お悔やみの言葉を準備しておかなければ。


「南無三、、、」


「何故、、、?」


「保険みたいなもんかな」


そんな実用性が一ミリもない会話をしつつも足は止めない。にしてもこの靴とんでもなくクッション性がいい。恐らく紬が仕立て上げたのであろう。まずこんなものが装備されている時点でまともな性能をしているわけがない。俺は腰に配置されている投げナイフのような形をしたアンカーを手に取り、脇のビルの屋上に向かって投擲する。投げられたアンカーは寸分の狂いもなく狙った屋上のふちに突き刺さる。その瞬間、アンカーに接続されているワイヤーを巻き取るモーターが作動し俺の体を一気に屋上まで引き上げた。


「ははっ、、、えげつねぇなこれ」


さっきまで俺がいた約30m下の地面を見て思わず顔が引き攣る。まぁ軽めとはいえ50kgを超える俺をものの1,2秒で何十メートルも引き上げやがった。どんな性能にしたんだよあの科学者。


「どうしました?」


「いやなんでも。それより今どこにいる?」


「いま大型ショッピングモールの近くです!」


えーっと大型ショッピングモールっと、、、

タワーのすぐ横か。ありがたい、これで試験として成立する!!


「若月さんは、、?」


「ほぼ真反対の高層ビル街、どれだけ飛ばしても五分はかかる!」


「、、、それは、まずい、ですね。」


「どした?」


「すでに、暗殺役と思われる二人が、タワーに向かっています。」


ああ神よ、なぜこの私めにそのような試練をお与えになるのですか。


「ジーザス、、、」


「熱心な信者さんなのですか?」


「いや生憎無神論者」


「???」


「無神論者にも神は必要なんだよ」


不幸の捌け口としてね。


「ちょっと急ぐか」


さぁてこんな立⚪︎起動装置を手に入れたからにはやってみるしかないだろう。もう一度アンカーを別のビルに突き刺し、俺の体を引き寄せたところでアンカーを回収、また別のビルの壁に突き刺す。


「心臓を捧げよ!!ってね。」


三棟めのビルに向かってアンカーを投げたその時、辺りに柏手が鳴り響いた。


風が逆巻き、大質量の大気が、俺の体を地面へ叩き落とす。まるで、見えない巨大な拳に殴られたように。あぁ、俺は敵の姿すら見れないまま、記憶処理を受けるのか、、、流石に上空20mから叩き落とされれば四肢粉砕だろう。さらば、世界、、、あら?


「なんでうごけんねん。」


何もなかったかのように立ち上がった俺に声がかかった。見るとビルの屋上にいつの間にか人が立っていた。


「俺も聞きたい。」


まぁそう言いたい気持ちもわかるぞ、Mr.関西弁。俺だって死んだと思ったさ。


「まさか手加減したんとちゃうやろうなぁ」


「まさか。僕はそんなことしませんよ。」


もう一人、ビルの屋上に立っている。糸目にメガネのおかっぱ頭の男。あいつか、俺を叩き落としやがったのは。


「人をなんだと思ってやがる」


「自分の行先を邪魔する害虫、でしょうか」


「自分が避けるっていう選択肢はないのかよ。なんてひどい奴だ。」


「では家にゴキブリなどが出たらどうしますか?」


「即抹殺」


「そういうことです。」


なんだこいつ気に食わねぇ。


「正論は使い所をわきまえないと嫌われるよ?」


「死にゆく害虫の戯言に耳を貸す必要はありませんので」


訂正、めっちゃ苛つく。


「あぁそう!死にかけの害虫の一撃(セミファイナル)をご存知ないとはねぇ!」


死にゆく害虫なめんじゃねぇ!


『大丈夫、ですか?なにやらすごい音がしたので何かあったのかと、、、』


『こちらもお客さま二人がご来店でございます少々厄介なものでご対応に時間がかかるかと。』


『で、では、そちらの対応を優先してください。こちらはまだ耐えれそうです。』


『合点承知!』


さぁて言われてしまった手前無理でしたは男が廃る。時代遅れだって?自分に課す分には自由だろ?

苛立ちと高揚を紛らわせるために二、三度その場で飛び跳ねる。それでも霧散しない苛立ちを心拍数に、高揚を笑みに変換し、体を叩き起こす。さぁ、ストレス発散の時間だ。追い詰められた害虫なめんなよ?


——

なんや、こいつ。俺の前には目の前で飛ぶたびに口角を釣り上げている奴がいる。糸目眼鏡おかっぱ(クソ野郎)に地面に叩きつけられて尚立ち上がりニ対一にも関わらず逃げる様子はない。


「ホンマに殺る気かい、勘弁してくれや」


「そこまででもないでしょう」


ほら、とおかっぱが指し示しているのは奴が腰に帯びた刀。言わんとすることは分かる。


「まぁ相性が悪いわけやない。それはわかっとる。」


「ではなぜ?」


「わかっとるやろ」


最初の一撃を喰らった時点である程度の頭がある奴なら気づく。その上で逃げる様子はない。

気温は適温のはずなのに、気づけば汗が垂れている。


「何考えてんのか分からんからや」


言い終えるのと、奴が地を踏み締めたのは同時だった。


「おかっぱァ!」


返答は行動で。即座におかっぱが前にで、奴に向かって指先を向け、手を打ち鳴らす。


「《衝風》!」


おかっぱは風を操る能力を持っていて、その内の基本の技が《縮風》である。周りの空気を圧縮、それをぶつけるだけの単純な技。それに指向性を与えて業務用扇風機のような衝撃(ノックバック)を与える技が《衝風》である。再び風が逆巻き、大気が奴を押し戻そうとする。


「嘘やろ!?」


奴は水平方向に生み出された竜巻の範囲外、即ち地面スレスレをスライディングするかのように頭から飛び込むことで回避したのだ。


ほぼ初見で《衝風》の有効範囲を見切ったってんのかいこいつは!でもなぁ!そこは俺の間合いや!


「《瀑布陣•三重》!」


両足を地に着けていない今、奴に方向を変える手段はない。ならばこの爆発物がよく刺さる!!


そうして放たれた三つの爆発物が眼前で爆ぜる刹那、狂人はハンドスプリングのような動き、即ち両手を地に着け、慣性で逆立ち状態になったところで強く地面を()()()()宙に浮くことで手榴弾の上を飛び越えることに成功していた。奴はそのまま刀の鯉口を切り、抜き放つ。


「嘘でしょう?」


ほぼ必殺とも思っていた連携を崩されたことに動揺しているのか、おかっぱは目の前の狂人への反応が、一瞬遅れる。


その隙が、致命傷になった。


咄嗟に、本能的に、頭を庇った両腕を、まるで素振りのような手軽さで、奴は安易に切り裂いた。


「まだくたばるなよおかっぱァ!」


まだ竜巻は残っている。ならば、


「まだこっちが有利や!」


俺は手榴弾のピンを抜き、全身の力を込めて投擲した。放たれた手榴弾は奴を僅かにかすめて飛んでいった。


「どこ狙ってんだノーコン!」


「まだ、、、」


外れた手榴弾が竜巻に巻き取られ、方向を変える。


「外れてへんで?」


《乱反射式瀑布陣》


獲った。


そう思ってしまった俺たちを、誰が責められるだろうか。予想できるわけないだろ、”背後から近づく手榴弾が急に軌道を変えてを壁に激突する”なんて。


「「なっ……」」


「あーあ、もう出しちまった。」


唖然とする俺たちを前に、奴は少し残念そうに言った。


「嘘やろ……」


手榴弾はナイフによって壁に縫い留められていた。


「投げナイフとはな、やってくれるやないか」


「まあ、裏の手ぐらい誰にでもあるよね」


状況が悪くなった。今俺たち唯一の攻撃手段である手榴弾をノールックで確実に撃墜できる手段を奴が持っている以上、相手をするだけ無駄。ここは、、、


「おかっぱァ!」


逃げるための時間を稼げ、その意図を目で感じ取ったらしい。


「ッ!」


まだ血の滴る腕を上げ、空に駆け上がった狂人を撃滅せんとまたも風を巻き起こそうとする。


「《突衝風》!」


業務用扇風機からスカイダイビングぐらいに風力が上がった竜巻が、奴の身体の中心を捉え、大きく吹き飛ばした。これで距離を稼いだ、ちょっとぐらいは時間あるやろ!!


「逃げるで!!」


俺はかけ出す。この悪魔から逃げるために。


「ちょっ、、、後ろ見てください!」


言われて振り返り、目にしたのは奴が高層ビルの間を移動する時に使用していたワイヤーを壁に突き刺し、その弾性力でもって上空に留まっている姿。


「嘘だろ!!?」


上空で停止しているように見えるほど凝縮された時間の中で、奴は刀を納め、構える。そして弾性力の解放と同時に刀を抜いた。狼のように目を爛々と輝かせながら。


「《狼月•落星》」 


直後、ソイツの姿は消えていた。咄嗟に周囲を見回そうとした俺の背中に、衝撃が加わる。

なんだ? そう思うと同時に気づく。…声が出ない。その代わりとでも言うかのように、口の端からはぬるりとした生暖かい液体が流れていた。むせ返るような鉄の匂いに、俺はそれが血であることを察した。…この出血量は…死んだなまぁ…お似合いか。そんなことを、心の中で呟きながら。俺は薄れ行く意識の中で、今生の最後に出会ったあの狂人が背中を向け狂笑を響かせているのが見えた気がした。…俺のことなど、眼中にもないとでも言うように。

糸目眼鏡

氏名:綾野武蔵

能力:操空

   気体を操る能力。使い手がもう少しマシなら普通

   に最強格の能力

試験参加経緯:能力を与えられ、自分が特別であると思

       い込み自分の承認欲求を満たすため

作者より一言:せっかく若月メタってんだからガン引

       きして爆殺すりゃよかったのに


Mr.関西弁

氏名:番剛つがいごう

能力:爆破

   単純に爆発物を操る。若月の「我修羅也」の爆破

   武器版と思っていただければ支障はないかと

試験参加経緯:母子家庭なため少しでも家計の足しになれ

      ばもと思い参加

作者より一言:相方と相手が悪かった

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