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別れの儀式

作者: 蒼月

かつての恋人に電話をかける。

遠く離れてしまってから、長いこと話していなかった彼女と、急に話がしたくなったのだ。

こんな身勝手な動機でも、彼女は答えてくれるだろうか。

淡い期待を胸に、携帯電話を耳に当てる。

数コールした後、その期待は外れてしまった。

自動音声が単調に告げる。

「おかけになった電話番号は、現在使われておりません……」

その時、私は思い出した。

彼女は死んだということを。

二年前の今日、彼女は眠りについて、それから目を覚まさなかった。

葬式には呼ばれなかったが、彼女の母親が電話で伝えてきた。

話によれば、何か特別な理由があったわけではなく、寝ている間に突然亡くなったという。

電話越しに聞こえる声は、涙を堪える哀しみの声だった。

急な訃報に、涙がついてこなかった。

悲しみすら置き去りにするような衝撃だった。

だから、すっかり忘れていた。

あるいは、私の心が無意識のうちに記憶を封印したのかもしれない。

そうして、彼女の死を無かったことにすることで、安らぎを得ようとしたのだろう。

無機質な機械音声に呼び覚まされた記憶が、そんな私にもう一度現実を叩きつけてくる。

知らないうちにヒビの入った心と身体に、悲しみが染み渡る。

私は、静かに泣いた。

一度頬を伝ってしまえば、もうそれは止められなかった。

雨のように零れる涙一粒一粒に、思い出が映る。

それは、一種の儀式だった。

過去と向き合い、隠してきた彼女の死を受け入れるために必要なこと。

今、それを行う時が来たのだ。

流れる思い出一つずつに、丁寧に向き合っていく。

その時々にタイムスリップするかのように。

やがて涙が止まる時、最後の一粒に映る思い出は何気ない日常の一コマだった。

彼女は、笑っていた。

私はただ、祈った。

蒼月です。

別れについての作品を書きました。

実体験からインスピレーションを得て書いた作品なのですが、私に恋人はいません。

今までも、おそらくこれからも、きっとそのままでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、お会いしましょう。

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