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異世界!AI (愛) してるんです!  作者: しげる
第一章 【獣人国ゼニスト】
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第五話 【魔物と初めての戦闘をしてるんです】

壁に付けられた大量の目印の傷に怒りを通り越し、最早、愛おしさまで感じる。


「少し休憩するか」

アルディアス王子の言葉で皆歩みを止め、腰を下ろした。


《経路の分析が完了しました!》


(AIなのに、一発で正解がわからないのか)


《データが無いことを、どのように分析しろと》

AIは少し怒ったように返答する。


「AIが経路の分析できたみたいです。案内しますね」


先頭でAIの指示通り歩いていると、このダンジョンで初めてオークに出くわす。

オークはこちらに気付くと、棍棒を振り上げながら走ってきた。

今までは王子が先頭だったので、戦闘の機会がなかったが、やっと出番がやってきた。

迎え撃つように、一気に距離を詰める。


《体の使用許可求む》


(いや、今回は俺がやる! サポート頼む!)

初めての魔物との戦闘に、不安と興奮で胸が高鳴り、剣を持つ手が少し汗ばむ。


《サポートします。オークは攻撃のモーションは遅いですが、パワ―は強力です。攻撃は受けずに避けてください》


AIが宰相から借りた、魔物図鑑で得たであろう知識を共有する。


(睡眠の邪魔はされたが、その甲斐は有ったようだな)



《棍棒の振り下ろし》

AIの予測通り棍棒が振り下ろされると瞬間、オークの側面へ回り込み、剣に意識を集中させる。

そして——サブスキル “斬撃” を放つ。

剣から放たれた斬撃は、三日月型にスーッと、一直線に突き進む。

斬撃がオークの頭に直撃し、悲鳴を上げながら頭を抱えている。


(さすがに、一撃では無理か!?)


しかし、宰相からもらった剣に付与された、メインスキル“剣士レベル5“の使用感は良かった。

訓練場の剣のメインスキル“剣士レベル2”と比べると、明らかに速く。そして、機敏に動ける。

まるで、自分の時間だけが加速しているような感覚だった。


(スキルの重要性がよく分かるな!)


オークは斬撃の痛みに悶えているが、まだ、立ち向かってくる。


《再度、振り下ろし》

オークの棍棒を振り上げた瞬間、斬撃をオークの顔に放つ。

しかし、オークが振り上げた腕で、斬撃を防ぐ。


(だが、これは陽動!)

予測通りのオークの動きに、胸が踊る。※※※※


《足へ攻撃、有効》

“ダブルスラッシュ“ で、オークの膝へ二連撃。

斬撃と違い、剣から肉を裂くような、嫌な感覚に襲われ、生々しい感触と音に、気が滅入る。


(元の世界に戻るには、この感覚にも慣れないと!)


「ギェエエエ!」

オークは悲鳴を上げ、膝をつき、動きが止まった。


《急所突き、有効》

全身の力を腕に集中させ、首へ目掛け “急所突き” を放つ。


オークは声も出せず、糸が切れたようにその場で倒れた。


「なかなかやるじゃん」

エリシア王女は微笑みながら、褒めてくれた。


初めての魔物との戦闘に無傷で完勝し、満ち溢れる自信と高揚感を感じる。

ファンタジーな世界に適応できている感覚に、喜びを覚えた。


「なかなかやるじゃん」

エリシア王女が笑顔で、褒めてくれたことが嬉しかった。



オークからドロップしたスキルを確認する。

獲得したスキルはメインスキル“重歩兵レベル2“だった。


《大輔さんの体格に “重歩兵” は向いていませんね》


スキルは人により、向き不向きがあるとされている。


重歩兵のスキルには、筋力や防御力を強化する恩恵があるらしい。

どうやらこの恩恵は掛け算のようで、元々の筋力が高ければ高いほど、恩恵が大きくなるようだ。




さらにダンジョンを進む。

最初はゴブリンが多かったダンジョンも、オークの割合が多くなってきた。


(魔物のレベルが少し上がってきたかな)

ダンジョン内の魔物の変化に、正解の道に進めていると実感する。



さらにダンジョンを進み、迷路のような道から、いきなり広い空間に出た。

そこは川が流れ木々が生い茂り、空には太陽の光が照りつける。

この異様な景色に、本当にダンジョン内なのか疑いたくなるほどだった。


(迷路から脱出はできたようだが、ここはほんとにダンジョン内なのか!?)


《ダンジョンでは階層により外のような景色が広がることがあるようです。詳しくは解明されていません》


迷路からの脱出に喜んだのも束の間、複数のリザードマンの群れが現れた。

ぱっと見、10匹以上はいるだろうか。


リザードマンは鋭い目と長い鼻先を持ち、口には牙が並ぶ。

頑丈そうな鱗に、手には鋭い爪が生えていた。

体長は2メートル近くあり筋骨隆々だ。


全員、戦闘体制に入る。


《リザードマンには火魔法が有効です》


(今回は火魔法を試してみるか)


「火魔法でサポートします。近距離戦闘は任せます」

懐から杖を出し、魔法での戦闘準備を始める。


宰相からもらった杖にはメインスキル“火魔法使いレベル3”が付与されている。

長さは30センチほどで、艷やかな光沢がある、黒い木材で作られていた。

宰相曰く、魔力を帯びた木の枝だそうだ。

先端に向かって徐々に細くなり、持ち手には装飾が施されている。


「魔法も使えるのか!?それは心強いな!」


王子と王女が走り出し、近場の敵から攻撃を開始した。

俺は王子たちをサポートするため、冷静に状況を見渡す。


王子は相変わらずの強さを誇るが、リザードマンの頑丈な鱗に一撃とはいかないようだ。

スピードを活かし、手数で頑丈な鱗を破壊しリザードマンを倒す。



王女の戦闘スタイルは武術で、拳には薄いグローブがはめられている。

王女は相手の攻撃を軽やかに躱し、一瞬の隙を見逃さず拳で的確に相手の顎を捉えていた。


リザードマンが失神するように膝から崩れ落ちている。

頑丈な鱗を誇るリザードマンも、的確な一撃により脳が揺さぶられ、ひとたまりもないようだった。

その一連の攻撃には一切の無駄が無く、流れる川のように滑らかで華麗そのものだった。


(スキルを使えないはずの王子と王女がここまで強くなるためにはどれほどの鍛錬を積んだんだ!?)

思わず王女の攻撃の美しさに見惚れてしまう。


《王子の背後から敵!》

慌てて視線を王子に向け、杖に魔力を集中させスキルを詠唱する。


「ファイアボール!」

杖の先端から赤く光る火の玉が生成され、瞬く間に大きくなった。うねりを上げながらリザードマンに向かって飛んでいく。火の玉は勢いを増し、一直線に突進する。

リザードマンは爆発音と炎に包まれ、悲鳴を上げながら倒れた。


「助かった」

王子は一言感謝を告げると、新たな敵へ立ち向かう。


《王女危険!》


残りのリザードマンが、今にも王女へ襲いかかろうとしていた。


王女の援護へ向かおうとしたその瞬間——シャルが飛び出し、天を翔ける


「グラビス!」

シャルがそう叫ぶと、リザードマンの集団の動きが鈍くなり、膝をついた。

周囲の地面はヒビが入り、押しつぶされるように、リザードマンが倒れ込む。

その姿は重力により、地面に押し付けられるようだった。


リザードマンの動きが止まると、シャルは新たな呪文を詠唱する。

「ライデン!」


どす黒い雲が空を覆い、雷鳴が轟き、その音は地響きのように周囲を揺らす。

無数の雷光が天を切り裂くかの如く、轟音と共にリザードマン全体に襲いかかる。

雷鳴の轟音が体に響き渡り恐怖を感じるとともに、シャルが味方であることに心強さを感じた。


不規則と見える雷光は、王女だけを避けるように巧妙に制御され、リザードマンにだけ命中している。

リザードマンは雷の直撃により、黒く焦げ、地面に次々と倒れていく。

生き残った数匹のリザードマンも勝ち目がないと悟ったのか、慌てて散り散りに逃げていった。


その風景に圧倒され、俺はただ見ていることしか出来なかった。


(神獣とだけあって、半端じゃないな)




「シャルありがとう」

王女が嬉しそうにシャルに近寄る。


「この間のお礼だよ」

シャルは照れくさそうに笑っている。


《シャルの戦闘を分析しました。いつでも行けます!》


(戦わないよ!? あの戦闘を見た後に、戦いたいやつなんていないよ)


どうやらAIに恐怖心はインストールされていないようだ。

この怖いもの知らずの戦闘好きも、知識欲から来る好奇心か、自分の力を誇示したいのかは、わからない。




リザードマンから回収できたスキルは、メインスキル “双剣士レベル3” が1個 “双剣士レベル2” が7個とサブスキル “切れ味レベル2” が4個 “ブロウショット” レベル2が3個と、大量にスキルを獲得できた。


「ここで少し休憩しようか」


太陽の日が差し、暑さが増したこのダンジョンで、冷たい川と木々の

影は一休みするのにちょうどよかった。


《双剣士レベル2が5個集まったため、双剣士レベル3 “にレベルアップさせることが可能です》


(帰ったら付与師に、レベルアップしてもらいに行こう)


付与師はスキルを武器に付与できるだけでなく、同じスキルのレベルアップをさせることができるそうだ。


《宰相邸宅で付与師を見学した時に、分析はすでに完了しています。スキルのレベルアップが可能です》


(いつのまに分析していたんだ!? 試しにレベルアップしてみよう!)




双剣士レベル2を5個集めて床に置く。


まとめたスキルの上を義手で撫でるように触れると、双剣士レベル2の5個が1個合体し双剣士レベル3に変化した。


《予備でもらった短剣2本に、双剣士レベル3を付与できます》


宰相からもらった “マジカルバック” から、短剣を2本取り出す。


このマジカルバックは小銭入れくらいの大きさだが、間口は広がり、さらに、内部の収納力は6畳の部屋くらいに匹敵する。

なんと、収納した物の重さを感じないので運搬に最適だ。


(しかしこの短剣には“剣士”のメインスキルが付与されているぞ? 1つの武器に2個のメインスキルは、取り付けられないんじゃなかったっけ?)

さすがのAIでも、この世界の理を覆せないだろうと疑いたくなる。


《短剣からメインスキルを外し、付与します》


(そんなことができるのか!? 宰相の付与師はそんなことしていなかったよな?)

付与師からも聞いていない技術に少し困惑する。


《武器やスキルを頂いた日の夜中に実験し、スキルの取り外しも可能にしました》

AIの顔が見えないのに、なぜかドヤ顔をしている雰囲気を感じる。


短剣を義手で撫でるように触れると“剣士レベル3”のスキルが取り外された。

その後、短剣2本に“双剣士レベル3”を付与する。


(こんな技術まで開発するとは……すごいな!)

《当然です♪》

AIの声はどこか嬉しそうだった。


その後、川で水浴びをして汗を流し、体力の回復に努めた。




「そろそろ出発するか!」

王子の声に、全員が出発の準備を始める。


ダンジョンを進むと木々はさらに生い茂り、森に迷い込んだ感覚に襲われた。


森の中ではゴブリンとの遭遇が多かったが、アーチャーゴブリンやゴブリンシーフと遭遇した

さらにゴブリンの上位種のホブゴブリンとも遭遇し、森の中ではゴブリンの王国が築き上げられているかのようだった。

だが、ゴブリンの亜種や上位種といえども、我々の敵ではなかった。


リザードマンは水際にしか生息しないのか、最初の戦闘以降出会うことがなかった。

他にはフロストウルフにも遭遇した。


魔法を使用する魔物との戦闘は初めてだった。

フロストウルフは素早いスピードで我々を翻弄しながら、“フロストブレス”でスピード低下を狙い、“フロストボルト“で氷の矢の攻撃を仕掛けてくる。


しかし、王子や王女のような獣人は寒さに強く、 “フロストブレス” や “フロストボルト”は全く効いていないようだ。

むしろ、涼しくて気持ちよさそうにしている。

俺はフロストウルフの攻撃により、震えて見守ることしか出来なかった。



森を更に進むと、巨大な大木を見つける。

その大木はあまりに巨大で周りの木々の数十倍はありそうだ。

幹が太く、周りには頑丈そうなツタが大量に巻き付いていた。


「森の木々で気付かなかったが、こんな大木が生えていたのだな!?」

王子は不思議そうに大木を見つめている。


《この大木は次の階層への目印になっており、ボスがいる可能性が高いです》


AIの情報によると、どうやら広大なフィールドのダンジョンにはこのような目印が点在しており、次の階層の目印になっている可能性が高いそうだ。


「この大木のどこかに、次の階層に繋がる扉とボスがいる可能性があります」


大木の裏手に回り込むと根本に扉が付けられていた。


「ここが次の階層の扉か!? ボスがいる可能性もあるなら、装備を整えてから入ろう」


王子は荷物を置いて、剣を取り出し整備を始める。


王女は整備する武器が無いので、暇そうにウロウロしている。

大木のツルを使いよじ登り、周りを見渡していた。


「他にも大きな木が数本あるよ」


《ダンジョンの階層間の扉は、1つとは限りません》


(他の大木を目指して、欲しいスキルを探すのも良さそうだな)


ボスへの挑戦を前に、武器やスキルの調整をし、万全の準備を整える。


ボスを倒すとどんなスキルがもらえるのだろう。

そんな期待とボスに対する不安が過る。



—————————————————————————————


現在わかっている、所持武器やスキル


☆武器☆

・剣

└剣士レベル5 

└斬撃レベル3 ダブルスラッシュレベル2 急所突きレベル2


・杖

└火魔法レベル3


・短剣x2

└剣士レベル3 → 双剣士レベル3 に変更

└斬撃レベル2


☆メインスキル☆

・剣士レベル1        11個

・剣士レベル2        3個

・剣士レベル3        2個   短剣からの取り外し分

・重兵士レベル2       4個

・双剣士レベル2       2個

・弓使いレベル1       3個

・斥候レベル1        2個

・氷魔法レベル1       2個


☆サブスキル☆

・斬撃レベル1        7個

・斬撃レベル2        2個

・ダブルスラッシュレベル2  2個

・急所突きレベル1      3個

・切れ味レベル2       4個

・ブロウショットレベル2   3個






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