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異世界!AI (愛) してるんです!  作者: しげる
第一章 【獣人国ゼニスト】
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第四話 【嵐の中新たな出会いをしてるんです】

「魔物に近寄ると危険だぞ!」

アルディアス王子は警戒し、エリシア王女を引き離そうとする。


激しい風が周囲の木々を揺らし、雨は横殴りに打ちつけ、雷鳴が轟き、夜空を一瞬——白く染める。


「でも猫ちゃんが……」

震える手で魔物を抱きかかえた。


(どう見てもただの猫ではなさそうだが……)


「このままじゃ、猫ちゃんが死んじゃう!助けないと!」

「どんな魔物かわからない!助けるのは危険だ!」


しかし、王女は嵐の中全く動こうとしない。


《この先に洞窟がありそうです》


「この先に洞窟があるそうです。とりあえずそこへ避難しましょう!」


王女が軽々と、魔物をおんぶし、皆で洞窟へ走り出す。

洞窟内は広く、魔物などはいなかった。


火を起こすために適した石や乾燥した木の枝を集め、焚き火を囲む。

暖かな光が洞窟の暗闇を照らし出し、冷えた体が徐々に温まっていく。

王女が回復用のポーションを、魔物に使おうとしている。


「おい!ポーション使う気か!?」

「当たり前じゃない!猫ちゃん助けなきゃ」


そう言いながらポーションを魔物の口に流し込む。


(この魔物は危険な魔物か?)

《魔物の書物に、この魔物の記載はありません》


「アルディアス王子とエリシア王女は、この魔物についてご存知ですか?」

「いや、こんな魔物は見たこと無いな」


王女はこちらを気にせず、魔物の看病に集中している。

傷口を刺激しないように慎重に体を拭い、傷薬を塗りながら献身的に魔物の看病をしていた。


「ダンジョンまでは、ここから一日あれば行けるだろう。嵐が過ぎるのを待とう」


俺達は、服を乾かしながら暖を取った。

濡れた義手をメンテナンスするために、バラバラに分解する。


《この義手は電子部品を使用していないため、壊れることはありませんよ》


(それでも、俺の大事な手だからな! それに、物は大事にしろって、じいちゃんによく言われていたしな)

じいちゃんと一緒に、義手のメンテナンスしていたことを思い出しながら、丁寧に義手に付着した雨や泥を拭き取った。


《ありがとうございます》

AIの声はどこか嬉しそうな気がした。



翌朝


「目を覚ました!」

王女は大きな声を出す。


その声にびっくりして、目を覚ます。

王子は警戒し、剣に手をかけた。


「ここはどこだ?」

フラフラと起き上がろうとする魔物。


「猫ちゃん喋れるの!?」

「誰が猫だ!僕は神獣の “ラクシャルヴァ” だぞ!」

その瞬間、前足を振り上げ王女へ襲いかかる。


王女は避けずにラクシャルヴァをそっと抱きしめた。

しかし、ラクシャルヴァの攻撃で王女は右腕から血が流れている。


「大丈夫か!?」

心配と怒りが入り混じった様子で剣を抜き、ラクシャルヴァに斬りかかろうとする王子。

俺も剣を抜こうとした瞬間——王女は腕を上げ、王子を静止した。


「怖かっただけだよね。猫ちゃんもう大丈夫だからね」

暴れようとするラクシャルヴァをギュッと抱きしめ、怪我をした右腕で頭を撫でる。


「エリシアが寝ずにボロボロのお前を看病してくれたんだぞ!」

「そうなのか!?」


「少し元気が出たようだね。よかった~」

嬉しそうに頭をなで続ける。


「まずは、エリシア王女の怪我の手当をしないと!」

回復ポーションと傷薬を取り出し、王女に渡す。


「猫ちゃんはどうして、こんな所で倒れていたの?」


ラクシャルヴァが喋ろうとした、その瞬間——首輪のようなものが光り出し、もがき苦しみ始めた。


「猫ちゃん大丈夫!?」


《この首輪に “奴隷制御系” のスキルが、付与されている可能性があります》


(解除できそうか?)


ラクシャルヴァに近寄り、俺は義手で首輪を触れる。


《スキルの解析と解除を行います》

《……不明なスキル? ……精神制御!? ……解析継続……!》

《解析完了!解除します!》


数秒後、首輪が外れ地面に落ちる。

痛みにもがいていた表情が一転し、フッと痛みから開放されたように、穏やかな表情に変わった。

フラフラと座り込み、ウトウトと瞼を閉じだし、そのまま眠りにつく。

その顔は、安心しきって、安らいでいるようだった。


(うまくいったみたいだな!さすがだな!)


《当然の結果です!》


ラクシャルヴァの安心した様子に、少しホッとした。


「この首輪には、奴隷制御系のスキルが付与されていたようです」

「奴隷の首輪!? そんなものが、なんで猫ちゃんに……」


(奴隷制御のスキルとは……なんて、非人道的なんだ!?)

この世界の倫理観の欠如を目の当たりにし、嫌気が差す。


「この世界では、こんなスキルを使うのが普通なんですか?」

「我々はスキルを使わない故に、スキルについて詳しくはないんだ。でも、こんなスキルは聞いたことないな」

「こんなスキルを猫ちゃんに付けるなんて……絶対に許せない!」


なぜ、ラクシャルヴァに奴隷の首輪が付いていたのか!?

誰がそんなことをしたのか!?

神獣ラクシャルヴァについて、謎は深まる一方だった。




それから数時間後、嵐が去ったのか風の音は止み、洞窟内は静けさに包まれた。

夜通し燃やし続けた焚き火が、「パチパチ」と弾ける音を奏でながら燃え盛る。


目を覚ましたラクシャルヴァが起き上がる。


よく見ると、真っ黒なライオンのような姿に、真っ白の翼が生えていた。

顔の周りには立派なたてがみが生えているが、顔にはどこかあどけなさが残っている。

昨夜の傷は治りきっていな様子で、所々に痛々しい傷が残っていた。


(回復ポーションでも、すぐに、完璧に治る訳ではないみたいだな)


「助けてくれてありがとう。首輪を外してもらえて、悪夢から開放されたよ」

「これからどうするの?帰る場所はある?」

心配そうに王女は見守っている。


「僕は元々、別の世界にいたんだ。元の世界では、僕を大切にしてくれていた主人がいた。そこで、主人と冒険をしていた」


(転移者は人間だけではないのか!?)


「冒険している時は、本当に楽しかった。山々を越え、深い森を抜け、広大な砂漠を横断し、ダンジョンも探索した。主人は、本当に強くて……炎の剣を使っていた。巨大なドラゴンだって倒したことがあるんだ」

ラクシャルヴァの喜々と語る姿に、楽しかったであろうことが容易に想像できた。


「そんな楽しい日々が一転、この世界に転移させられて、地獄が始まった。転移した瞬間、困惑していた僕に奴隷の首輪を付けたんだ……」

楽しそうに話していた姿が一転、怒りと悲しみに震えている。


「奴らは、僕をおもちゃのように扱った。他の転移者と倒れるまで戦わされ、休む暇も与えられなかった……」


王女は涙を流しながら、そっとラクシャルヴァを抱きしめる。


「『次の戦いに勝てば、元の世界に戻してやる』と言われ、青い炎を纏った “フェニックス“ と戦った。——だが、今までの怪我と疲労で、全く歯が立たなかった……」

ラクシャルヴァの表情は、悔しさと怒りが入り混じっているように感じた。


「奴らに『もうお前に用はない』と捨てられた。気付いた時にはここにいたんだ……」


(無理やり転移させられたのに、そんな仕打ち……)

もし、自分の転移先がラクシャルヴァと同じだったらと思うと……。

身勝手な転移に怒りを覚え、やるせない気持ちになった。


「もう大丈夫だよ。奴隷の首輪も無いし、猫ちゃんは自由よ!私達はこれからダンジョンに向かうの!一緒に行かない?」


王子も気づけば涙を流し、頷いていた。


「でも、僕は君を傷つけてしまった……」

「関係ない!君がやりたいようにするんだ!それにエリシアはこんなことで、怒るような人ではない!」


「行きたいけど……。本当にいいの?」

「もちろんよ。あなたは今日から私達の子よ!名前はラクシャルヴァだから “シャル” ね」


「シャル!?いい名前だね!」

嬉しそうに王女に抱きつくシャル。

そこに王子も駆け寄り、三人で抱き合っている。


《我々は置いてけぼりですね》


(妹に会いたくなったな)

感動的な場面に胸が熱くなるとともに、離れ離れになった妹を思い出し、少し心がざわついた。




その後、洞窟を出発してダンジョンに着いた頃には、もう夜になっていた。

ダンジョン前には人間の団員が数名おり、ダンジョンを管理している“ヴァルター“という男を紹介された。

俺達はキャンプ地に案内され、今晩はここで過ごすことになった。


キャンプ地には見たことない人間が多い気がしたが、特に気にすることはなかった。



翌日


ヴァルターからダンジョン内の地図を渡された。

ダンジョンは迷路のようになっており、『地図通りに進めば安全で効率よくスキルを集められる』とのことだった。


シャルはポーションと傷薬のおかげで、ある程度傷は癒えているようだった。


「そろそろ出発しよう!」

我々は意気揚々とダンジョンへ歩みだす。


ダンジョンの入口は洞窟のようになっており、入口の横には石版が配置されている。

その石板には文字のようなものが書いてあったが、読むことは出来なかった。


ダンジョンの入り口を抜けると、目の前に広がったのは古びた遺跡のような空間——石畳の床が整然と並び、壁には光る鉱石が点在し、ダンジョン内は意外と明るかった。



しかし、ダンジョン内は迷路のようになっており、道は入り組んでいた。

分岐が多く、代り映えしない風景は、迷路をより一層、複雑にする。


途中、ゴブリンやスライムなどの魔物に出会うが、全て王子が一撃で倒してしまう。


(スキルを使えない王子が一撃とは、相当な訓練をしたに違いないな)


《私の方が強いですがね》

なぜかAIが対抗してくる。


王子の戦闘スタイルは剣士で、獣人の身体能力を活かした戦い方をしている。

スピードが速く、相手の背後に回り込み、急所を一撃で貫く。


《王子の戦闘スタイルは分析済です。いつでも倒せます》


(なんで倒すんだよ!?)


ドロップされたスキルは、メインスキル “剣士レベル1” や、サブスキル “斬撃レベル1” ばかりだった。

魔物を倒すと必ずスキルが手に入る、という訳ではないようだった。


(王子が強すぎて訓練にならないな)

王子の強さに感心すると共に、戦闘の訓練をさせてほしい気持ちで複雑な気持ちだった。



先頭の王子は地図を確認しながらどんどん進んで行く。


「ダンジョンってどうやってできるのですか?」


「いや、私も初めてなもので全く知らないのだ。我々はスキルが使えないのでダンジョンに行く意味がないからな!」


(この王子に付いて行って大丈夫か!?)

頼もしかった王子の背中は、急に信用できなくなった気がした。


(しかし、ダンジョン未経験なら、なぜ、王子たちが選ばれたんだ?団長や七瑛さんでもよかったはずだが?)


《この道の通過は二度目です》


同じような見た目のダンジョン内に気付かないが、いつの間にか元の道に戻ってきてしまったようだった。


(もしかして、王子方向音痴か!?)


「この道は二度目のようですよ」

「そんなはずは無い!地図通りに進んでいるぞ!?」


地図を見せてもらうと、四つ叉の道は一つしかない。

そこの一番右を曲がったので、確かに道は間違って無さそうだった。


(何かがおかしい……)


再度、地図を確認しながら地図通りに進むが、また同じ道に戻ってきてしまう。


「このままでは迷子になりそうだから、一度キャンプへ戻ろう」

不安な表情を見せる王子は、戻ることを提案する。


《また同じ道です》


振り返ると、また四つ叉の道にいた。

静けさの中で、時折聞こえる風の音が、ダンジョン内の不気味さを増す。


(戻ることもできないのか!?)


違う道を進んでも同じ道に戻ってしまう。


《これで五度目です。正しい道を進まないと、元に戻されるようです》


目印に付けた壁の傷がまた増える。

ダンジョン内で完全に迷子になっていた。


(このままダンジョンから出られないのか!?)


渡された地図が合っていないことに不安を覚え、胸騒ぎがする。



————————————————————————————


獲得スキル


☆メインスキル☆

・剣士レベル1・・・4個


☆サブスキル☆

・斬撃レベル1・・・3個



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