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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
三章

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⑱夜に這い寄る者達



 「ふえぇ……見ると聞くとじゃあ大違いですねぇ……」


 ニーシェと自己紹介したハーフエルフの娘は、リチャード達の武装と衣服を見て感嘆する。彼女はレイビリートと同じ布地の淡い色合いで統一された服を着ているが、細身ですらりとしたエルフとは違い、短躯な見た目と詰め込み気味な口調のせいでまったく違った印象である。


 「それが噂の連装式魔槍ですね! ちょっと触らせてもらえませんかっ!?」

 「うんっ? あ、ああ……良いけどちょっと待ってな……」

 「はいっ! ありがとうございますっ!!」


 物怖じせずミリオにそう懇願するニーシェに、彼はリチャードに許可を得てから弾倉を外しコッキングレバーを引いて銃身から弾を抜き、彼女に手渡す。


 「うわあっ!! スゴいっ! 軽いけどやっぱり重心がちょっと後ろ側に纏まってるぅ! これでこーやって狙うんだぁ……」

 「へぇ、なかなかやるじゃん」


 受け取ったニーシェは慣れた手付きでグリップを握り、人差し指を何度か引く動作をして感触を味わう。その指先の動きは明らかに慣れた手付きで、ミリオも驚きを隠せない。


 「そうそう、身体に寄せて狙いをつけると安定するんだ」

 「うんうん、これ使い易い!! なるほどなぁ~! ……んあっ?」


 ニーシェは周囲の視線に、それが自分の動作全てに注がれているんだと漸く気付く。


 「あっ、そのぉ……私の師匠ってこーゆーのを作る技を持っていて……いや、作るというか応用してるといった方が……」


 先程までの歯切れ良い言葉から一転し、急にニーシェの声は不明瞭になる。


 「ニーシェ、準備は出来ています。銃について見識を深めるのは、またいずれ機会があるでしょう」

 「はい、判りました……」


 レイビリートが促すと、少しだけ声のトーンを抑えながらニーシェが返答する。それが予め口止めされているからか、それとも急遽決まった事なのか、リチャード達には判らなかった。



 「順調に行けば、元ヒラリエ城跡には夕方過ぎに到着するでしょう」


 斥候を兼ねながら先を進むレイビリートはそう言い残して自分の馬に跨がり、リチャード達と別行動を取った。足並みの揃わない状況は避けたい一行だったが、多目的車両自体が大人数を運ぶ構造で無い為、結局その提案を受け入れるしか無かった。


 「あーあ、俺も馬に乗りたかったなぁ……」

 (……あれ、鞍が付いてなかったわよ……そんな馬に乗れたとしても、レイビリートさんに抱き付くなんて……破廉恥の極みね……)

 「いや、違うって! ただ俺は乗ってみたかっただけだし!」


 ミリオとモルフの話を聞きながら、リチャードは増やした座席から車窓を眺めるニーシェに話し掛ける。


 「……君の師匠って人は、この辺りの者なのかい?」

 「いえ、詳しくは私も知らないんです……何かと秘密の多い人なので……」


 それでも判る範囲までならと前置きしながら、ニーシェは自分の事も織り交ぜつつ説明する。ハーフエルフとして生まれた彼女は、早く世を去った母親のエルフの血をさほど継がず、人間と余り変わらぬ容姿であった。お陰で郷里の村では父親と共に平穏な暮らしをしていたが、父の死をきっかけに村を出て放浪の旅を続けていたという。


 「……その旅先で知り合ったのが、師匠のリックです。まあ、半ば無理をいって付いて来た面も有りますがねぇ……」


 そういって彼女は頭を掻くが、確かにその指先がかすめた耳は余り長くなく、自らハーフエルフだと名乗らなければ普通の人間に見えるだろう。


 「……まあ、それはともかく、師匠が作ったこれもなかなかの物だと思いますよ!」


 彼女がそういってリチャードに見せた魔槍は、レイビリート達が持っていた物より長さは短いが、オープンサイト(上部開放型照準)付きで乱戦時でも取り回し易そうなそれは、小柄で機敏なニーシェ向きなのだろう。


 「慣れれば装填も早く出来ますし、なにより狙い易いんです!!」


 きっと相当に個人向けの改良が為されたのか、ニーシェが持つ動きに無駄は一切無い。但し、狭い車内で振り回すような代物では無い為、


 「おいおいっ、そーやって扱うのは外でやってくれよなぁ……弾が入ってなくてもなぁ」

 「あやっ!? これは失礼しました!!」


 ミリオにそう言われ慌てて取り繕うニーシェに、車内の空気が少しだけ緩んだ。




 「……皆様のご報告通り、デルベトポリから買収された兵士と雇われた放浪者が警備していました」


 馬を駆り斥候に出ていたレイビリートが戻り、ドローンで偵察した時と変わらない状況を話す。ヒラリエ城跡の北にある林の中に隠されている工房は、繋がる大きな道は一本のみで、それ以外は木々が邪魔で馬車は通れない。


 「迂闊に手出ししても、工員や設計図が有る限りまた場所を移すだけだろう。やるなら徹底的に殲滅させるしかないか……」


 アンが書いた簡素ながら正確な地図を前にリチャードは呟き、暫く考え込む。


 「……但し、工員ってのが何処まで理解しているかによるが……直接聞いてみないと判らんな」


 リチャードの言葉にレイビリートは何か言おうとしたが、彼女はその言葉の裏に秘められた本当の意味を悟り、暫く躊躇してから口を開いた。


 「……もし、自分達が銃を作っていると理解していたら、全員殺すつもりなんですか」

 「その線引きは難しいんだ、何せ相手の数が圧倒的に多いから、こちらの意図が判ってしまうと無駄な血が流れるだろう……」

 「それでも、工房は殲滅されるんですね」

 「ああ、それは変えない。人の命が軽い価値観の世界に銃が溢れたら、間違いなく支配層が肥大し暴走する。それを防ぐには、これ以上銃を行き渡らせるべきじゃない」


 リチャードはそう答え、自分の居た世界が正にその通りだったと改めて思う。敵も自分も死に恐れを抱かず、機械のように相手を殺してきた。そしてその引き金を引かせたのは、社会や思想という名の姿の見えない怪物だったのだ。


 「……今夜中に片付けよう。それまでは各自準備してくれ」


 リチャードはそう告げると多目的車両に戻り、積んできた荷物の中から必要な装備を選び身に付けていった。



 「皆さんは暗闇の中でも目が見えるんですか?」


 明かりを消し前線拠点から出発したリチャード達だが、レイビリートはそう言って驚く。だが、彼女も魔導による視力補強を施しているからか、暗闇の中でも躊躇無く銃の工房に向かっていた。


 「ああ、見える。但し長い時間は無理なんだがね」


 リチャードはそう言ってナイフで枝からぶら下がった蔓を切り、下草を刈って道を作りながら歩いていく。やがて工房の周りに焚かれた火が木々の間から見える所まで近付くと、ナイフを鞘に戻してショットガンに弾を籠め始めた。そしてそれを合図に各自で準備を始め、並行しながら位置の確認や突入タイミングの打ち合わせをする。


 「……よし、それじゃ手筈通り、武器を持っている者は捕虜にするな。抵抗するヤツも同じだが、工員は集めて尋問する。出来る限り殺さず、一ヵ所に集められるよう少人数に分けて工房から連れ出してくれ」


 リチャードの説明に全員頷き、レイビリートとニーシェは魔槍に装填し、別行動するモルフとミリオは一行から離れていった。


 




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