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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
二章

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新たな【迷宮】



 


 ……何時からなのか、その渓谷の底に横たわっていた。建物の壁は穴が空き、人の住まぬ裳抜けの殻になり草が生え始める【廃墟】が、誰に知られる事も無く。


 だが、渓谷を見張らす山の尾根までやって来た狩人がそれを偶然見つけ、彼は村に帰るなりその事を他の村人に話した。そして、話は噂として暫く人から人に伝わっていったある日、村に四人の男女が現れた。見慣れぬ出で立ちの余所者と直ぐ判る彼等に、村人達は危険だから渓谷には近付くな、と忠告したが四人は誰も聞かなかった。


 ……きっと全員戻らんだろう、剣も鎧も持たぬ奴等だからと村人達は四人を見過ごしたが、逆に何故その時に止めなかったのかと、村人達は後悔する事になる。


 




 【 ……モルフ、そっちから見えるか? 】

 【 ……集団は居ますが、大きいのはまだ…… 】


 地下施設から遠く離れた地に出現した、新たな廃墟の中でミリオとモルフが声を掛け合う。二人共、以前より明らかに体格が増し、ミリオは背も伸びて筋肉が付き、モルフも針のように細かった手足は女性的な曲線を帯び、大人らしさを備えていた。


 【 ……全く、リチャードさんも酷だよな。俺達だけで上手い事やってくれ、なんてよ…… 】

 【 ……でも、信頼してくれてると、思うけど…… 】


 愚痴るミリオをたしなめるようにモルフが返し、再びスコープを覗き込んで廃墟に住み着いた魔物を監視する。ギャーギャーと騒ぎながら廃墟を出入りし、使えそうな棒や布切れを手に持ちながら通りに出ると、仲間同士で奪い合っている。


 【 ……小鬼(ゴブリン)か、呑気な連中だな。使い方も判らないのによ……】

 【 ……でも、ああして持ち出してくれれば、探す手間が省けますよ……】


 二人はその様子を監視しながら、しかし油断せず周囲を警戒する。と、今まで騒がしかった小鬼達が不意にキョロキョロと辺りを見回し、何かの気配を察して落ち着きを無くす。そして大きな廃墟の大穴から長く伸びた鼻先が突き出した瞬間、一目散に逃げ出してしまった。


 【 ……っ!? 何か出て来たぞっ!! 】


 ミリオがモルフに告げながら身を伏せたその時、ずるりと大穴からトゲだらけの頭と長い角が飛び出し、続けて鱗に覆われた首がゆっくりと後を追う。


 【 ……ドラゴン……ですか…… 】


 モルフが廃墟の陰からスコープで確認すると、その巨大な生き物は悠然と通りに一歩踏み出し、そのまま左右に首を振った。そして辺りを睥睨しながら鼻からボフッ、と炎の息を吐き出す。


 【 ……牽制は……要らないか…… 】

 【 ……はい、一発で仕留めます……! 】


 互いに声を掛け合いながら、ミリオは万が一の時に備えてアサルトライフルの安全装置を外し、モルフは初弾をチャンバー内に送り込んだ。



 バフッ、と鼻息を再び吐きながらドラゴンは視線を左右に送り、先程逃げていった小鬼達を追おうか一瞬だけ思考を巡らせた。そして、それがドラゴンの最後の時間になった。


 モルフは横たわりながら、大きく開いた足の爪先で地面を捉え、上体を軽く反らして射撃体勢を維持し、息を止める。


 照準の中心レティクルにドラゴンの頭部を捉え、照準に刻まれた目盛りと背景を見比べて距離を予測し、僅かに曲射修正を行いながら……



 ……指先を添えた引き金を、そっと絞る。たったそれだけの動作で、アンが心血を注いで調整したT5000の劇鉄は薬莢の尾栓を優しく叩き、自らの役割を忠実に果たす。そして、消音器サプレッサーで十分に打ち消されポシュッ、と気の抜け切った音と共に口径12.7ミリの徹甲炸裂焼夷弾が射出され、少しだけ山なりの曲線を描きながらドラゴンの眼球に到達した。






 「……リチャードさん、ちょっといいですか」


 アンが彼の背中に手を触れながら声を掛けたのは、モルフとミリオの二人が未踏破の【迷宮】に向かって一時間後だった。


 「……ん、何かあった?」

 「それが、偵察用ドローンの画像を解析していたんですが、小鬼達とは違う魔物が居るようで……」


 リチャードの問い掛けに答えながら、アンは彼にも見えるように携帯型ディスプレイを広げながら、


 「この廃墟の中に、今まで遭遇した事の無い巨大な個体が、身を潜めていたようです」


 指先でその画像を指し示しながら、リチャードの反応を窺った。



 「……ド、ドラゴンっ!?」


 ガタッ、と折り畳み椅子を倒しながらリチャードは叫ぶと、そのままの勢いでアンに声を掛けながらコートを羽織る。


 「行くぞっ!! あんなの相手じゃ流石に二人だけは無理だっ!!」

 「……そうでしょうか?」


 慌てるリチャードを尻目に、アンは落ち着き払った口調でそう返しつつ、四人乗り仕様の装甲バギーのキーを回し、彼を乗せて走り出した。



 「……すげぇな、こんなでっかい化け物を一発でかよ……」

 (……いえ、アンさんの整備が……十分だったから、だと思うよ……)


 内側から粉々に打ち砕かれたドラゴンの頭部、そして横倒しになった巨体の横で、ミリオとモルフはその亡き骸を眺めながら戦果を確認していた。



 ……でも、まだまだリチャードさんの足元にも及ばないんだ、私は……



 ミリオの称賛に答えながら、モルフはそう心の中で呟く。出会った頃の彼女は、確かに恋慕の情に近い念を彼に抱いていたが、今は違う感情へと変化していた。そして、その感情に突き動かされながら少しでもリチャードの役に立とうと日々を過ごし、自らの技量を磨いてきた。


 「でもよ、最初の頃じゃこんなの相手にするなんて……思ってもなかったよな?」


 ミリオの指摘に頷きながら、しかし彼の表情に後悔の念が一切見えない事を確認しつつ、


 (……うん、でも……そうだね、それだけ……強くなったんだよ、私達!)


 相変わらず小さな声だったが、ミリオに向かってモルフがそう答えると、彼は暫く言葉の意味を探るように考えていたが、やがてニコリと笑いながら親指を立てた。


 「ああ、そーだな! 俺達、強くなったのかもな!!」

 (……やっ、うん……き、きっとそうだよ、うん!)


 二人がそう話していると、先程まで身を隠していた小鬼達が戻ってくると、暫く遠巻きに二人の様子を眺めていたが、一人の小鬼が勇気を振り絞って前に進み出ると小さな声で何か囁き、頭をペコリと下げて戻っていった。


 「……あいつ、何て言ったんだ?」


 ミリオが小鬼の後ろ姿を見送りながら尋ねると、モルフは小さな声で、


 (……私の事、竜殺し(ドラゴンキラー)だって……)


 そう答えてから、足元に置いてあったT5000ライフルを眺めて溜め息を吐いた。








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