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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
二章

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【迷宮】の終わり



 「……【迷宮】が終わる……その証拠はどこに有ると言うんだ?」


 リチャードの言葉に、アイフマンを始め居合わせた誰もが騒然とし、確証を求め視線を向ける。すると彼は例の地図を近くに居た武官に手渡し、アイフマンに見せるよう身振りで促す。


 「【迷宮】は当初、噴水広場を中心に東西南北の各々に六区画、そして外縁部に木材加工場と工業地帯が有りました。しかし、今は二区画分の面積に縮小しています」


 リチャードの手で記された【迷宮】の詳細な地図は、一か月が経過する度に小さくなり、直近の地図と初期の状態を比較すると半分以下に縮んでいた。


 「……だが、これが消えて無くなる要因に繋がると、本当に言えるのか? ……利権欲しさに嘘を並べていない保証も無かろう」


 だが、アイフマンはそう冷徹に言うと、指先を組んでリチャード達の返答を待った。


 「……他の場所に出現していた小さな【迷宮】は、既に消滅しています。そうした報告は聞き及びでないでしょうか」


 アンの返答にアイフマンは横に控えていた副官に眼を向け、彼の表情が僅かに歪むのを見逃さなかった。


 「……ふむ、身内より君達の方が目端が利くようだな……直ぐに調べて報告しろ。次は無いぞ」


 アイフマンに言い渡された副官は無言で頭を下げ、直ぐに手筈を整える為、謁見室から出ていった。


 「頭の悪い奴は嫌いだが、頭が良過ぎる奴は信用ならん。君等がどちらかはともかく、結局何が言いたい?」


 ソファーに腰掛けたままアイフマンはそう言うと、リチャードとアンは小さな声で何か話し、間を空けずアンが答える。


 「領内に現れる【迷宮】の探索許可と、私達の自治権を認めて欲しいだけです」

 「……自治権だと?」


 アイフマンは最後の言葉に反応し、眉を寄せる。


 「はい、我々が得た物を流通させる際に干渉せず、税を掛けないで欲しいのです」

 「……何が出てくるかと思ったら、税逃れか? 全く、話にならんな」

 「ええ、これから様々な国と同じ交渉を行います。無論、同様に課税対象から外して欲しいと申し上げるつもりです」


 様々な国、と言う単語を聞いたアイフマンは、それまで何処か絵空事を喋る相手と接する態度を取っていたが、すっと眼を細め、


 「……デルベトポリと、真正面からぶつかる気か? 馬鹿も休み休み言え。構わん、摘まみ出せ」


 周囲に控えていた騎士へ手を上げながらそう告げると、ソファーから立ち上がった。


 「時間の無駄だったな……妄言は聞き飽きた。続きは斬首台でやってくれ」


 そう冷酷に言うと騎士達は二人の両側に立ち、そしてアイフマンはリチャードとアンが退室させられる姿を、そのまま見送るつもりだった。


 「……()()()()()()()()()()


 アンがそう告げた瞬間、彼女の脇に立った騎士の身体が広い執務室の端まで宙を舞い、壁に叩きつけられて床に音を立てながら落ちた。


 「っ!? 国主様を守れっ!!」


 騎士達は直ぐに反応し、リチャード側に付いていた騎士がアイフマンの傍に駆け寄るが、その間に彼女の周辺に居た騎士はたった一人残して消え失せていた。


 「なっ、何なんだこいつ!?」

 「女性に対して、失礼ですよ」


 騎士が抜刀しながら叫ぶが、アンは無表情でそう言い返しながら手首を引き、前方に突き出しながら掌底を鎧の真ん中に叩き付けた。瞬間、ドンッと鈍い音が響くと同時に何かが彼女の足元に落ち、直ぐに小柄なアンの目の前に居た騎士が軽々と室内を舞い、他の騎士と同じように壁まで飛ばされて失神する。


 「リチャードさん、怪我は?」

 「何も無いよ、ご心配なく」


 リチャードにそう問い掛けながら、アンは上腕内側を開いて排莢し、スカートの端を捲り中から新しい薬莢を次々と取り出して装填する。


 「……さて、次は誰ですか?」


 カシンッ、と最後の薬莢を入れて蓋を閉めると、アイフマンの周りに控えている騎士を睨みながら声を掛けた。


 「ばっ、馬鹿なっ! 術式を施した甲冑を着た騎士を一撃だと!?」

 「甲冑は無事ですが、生身は負傷します。それに合わせても大して重くはありません」


 至極当然だとばかりにアンが言うと、残された騎士達は押し黙る。それだけの威力を放つ彼女の見た目は自分達より小柄な上、リチャードの方は今だ身動き一つしていないのだ。もし、更に強かったらと思うだけで足が動かなくなる。


 「……仕上げです」


 そうアンが告げた瞬間、謁見室の窓側の壁が吹き飛び、広い室内の半ばまでガラスの破片が飛び散った。


 「こ、今度は何だ……?」


 堪え切れずアイフマンが呟くと、風穴の空いた窓側から強い風が吹き込み、破れたカーテンの端がバサバサと揺れ動く。そしてその向こう側で艶消し銀の外装に覆われた、巨大なドローンがホバリングする。


 「……歩兵支援用大型ドローンです。流石に長い時間は飛べませんが、この部屋を消滅させられるだけの火器は搭載しています」


 アンの言葉と同時にウェポンラックに吊り下げられた二十ミリチェーンガンがアイフマン達に向けられ、脅しとばかりにややずれた場所に照準を合わせた銃口が火を噴いた。たった一秒程の射撃で壁際に置かれていたキャビネットが粉々に砕け、その後ろの壁まで砕け散り廊下が丸見えになった。


 「は、はは……気が……狂っとる……」


 漸くそれだけ呟いたアイフマンに、アンはゆっくりとした足取りで歩み寄ると、周囲の騎士を気に止めずに口を開いた。


 「いつでも、こうして貴方様を狙えます。あれに昼夜の区別はありません。蜂の巣になりたくなかったら、大人しく内政に勤めて私達の事は忘れてください」


 そう言い残すと、立ち上がったリチャードと共に謁見室から立ち去った。そして窓の残骸が散らばる大穴の向こうから、大型ドローンが遠ざかって見えなくなった後、アイフマンは膝の力が抜けて、へなりと座り込んだ。




 「……あれで少しは落ち着くかね」

 「さあ、判りません。支配欲が強い人間の考える事なんて、私には判りませんから」


 館から出てきた二人だが、デルベトポリの守備兵達は無言で通すしかなく、リチャード達は平然とその場から離れていく。やがて大きな門に辿り着くと、その周辺を旋回飛行していたドローンが上昇し、西の方へと飛び去った。


 「あれは欠陥品です。滞空時間も短いし、搭載出来る火器も限られていますから」

 「なら、次の【迷宮】を探して新しいのを見つければいいさ」

 「……そうですね。でも、見つけたら直ぐに封印しますよ、【迷宮】は……」


 二人はそう言い交わしながらデルベトポリの都市を抜け、地下施設のある山向こうへと消えていった。






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