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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
二章

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⑰決闘



 「……タタカエ、ダト?」

 「ええ、そうよ。それとも、騎士と言うのは口だけで……」


 アンがそう言いかけた瞬間、ぶわっと凄まじい熱量に等しい闘気が膨れ上がり、遠巻きに成り行きを見守っていた兵士達が更に離れていく。


 「……フ、ザケルナ……ッ!!」


 怒りと共に更に闘気が増していき、チャールズの着ていたコートの裾もバタバタと揺れ動く。


 「……あんまり煽らないでくれないかね?」

 「いえ、ある程度は正気を失って頂かないと、付け入る隙も生じませんから」


 流石のリチャードもやんわりと釘を刺すが、アンは涼しい顔で受け流す。確かにそうだけどと形だけ納得する彼だが、ゆらゆらと髪を舞わせながら睨み付ける騎士の形相は、少し直視しただけで逃げ出したくなる。


 「……やっぱりやめた、って言っても聞かないよな」

 「試しに仰有ってみては?」

 「いや、止めておくよ」


 呑気な言い合いを重ねながら、しかしリチャードはショットガンの装填を行いつつ噴水に向かって進む。相手はいつでも来いとばかりに両手の剣を提げ、構えらしい構えを取らず両足を開いて待っている。


 「それじゃあ、始めようか……」


 互いの距離に区切りを付けず、そう言った瞬間。噴水の水を塞き止めていた囲いが大きく音を立てて崩れ、同時に動き出した騎士が一気にリチャードとの間合いを詰める。


 「ずるいぞっ! そんなもん着て速過ぎだろっ!」


 そう叫びながら本能的にショットガンのバヨネットを上に跳ね上げると、振り下ろされた剣の峰を打って激しく火花を散らす。初撃の一振りを往なされて騎士は一瞬動きを止めたが、直ぐに反対側の剣を真横に振るう。


 「うおっ!?」

 「チッ!! ヨケルナッ!!」


 寸でかわしながらリチャードが叫ぶと、騎士も毒づきつつ更に畳み掛けようと振りかぶるが、轟音と共にその身体が人一人分、後ろへと押し退けられる。


 「……直撃して無傷か。熊だって一発で仕留められる弾だぞ?」


 真正面、しかも至近距離からのスラグ弾が当たったにも関わらず、甲冑に傷一つ付かない。


 「……ソレガ、レイノブキカ……キカンナ……」


 潰れたコルクのように形を変えたスラグ弾を足元から拾い、掌でころがしながら騎士が呟く。


 だが、リチャードは退く態度を見せず、余裕で構える騎士に向かってバヨネットを突き付け、


 「鎧のお陰で無事なだけさ……そのうち判る」


 そう言うと今度は自分から一歩踏み出して間合いを詰め、ショットガンの引き金を引く。今度は拡散する

複装填バックショット弾が騎士の頭目掛けて飛び出すが、前傾姿勢で前に出て躱し、そのまま相手の膝を狙い切り払う。だが、リチャードは予想していたのか前に飛び、騎士の身体を踏み台にして背後に着地する。


 「……はあ、はぁ……ライオンの檻の中に居るみたいだな……」


 近付き過ぎれば圧倒的に不利なリチャードは、奇策を駆使して距離を保ち、要所要所にショットガンを撃って相手を牽制する。


 「……グッ、ウゴキ……スギタカ……?」


 だが、騎士の方は僅かに身体を揺らし、徐々にだが動きに精彩さを欠いていく。


 (……人を斬る度に魔力を充填していると聞いたが……本当だったとはな)


 リチャードは相手の様子を確認し、ベリテから聞いていた【忍耐の甲冑】の弱点を思い出す。魔力に乏しい者が使いこなす為、その甲冑には相手の命を吸い取り魔力に変換する術式が与えられている。だからこそ戦えば戦う程強さを発揮するが、相手と一対一で戦い、長引くと魔力不足を露呈してしまう。その弱点こそが、ただ一つの【忍耐の甲冑】攻略法。


 しかし、リチャードとて超人ではない。甲冑の支援を与えられた相手と比べれば、只の人間に過ぎないのだ。


 「……キツいな、飛んだり跳ねたりは得意じゃないぞ……全く」


 息を切らしながら騎士の突進を際どく避けたリチャードだったが、剣の一太刀が脇腹をかすめ衣服に赤い血が滲む。対して騎士の方は、未だかすり傷一つ負っていない。


 「だが、不死身って訳じゃないだろ。だったら……」


 リチャードは覚悟を決めて再度ショットガンを構え、新しい弾を装填しピタリと騎士の胸元を狙う。


 「……ムダダ、ナンドヤッテモ……」

 「そいつはどうかなっ?」


 ドンッ、と重苦しい音と共に放たれた弾丸。騎士は今までの記憶から最適のタイミングで、放射状に広がるそれを避けようと動き出すが、


 「……ナッ、ナンダコレハッ!?」


 彼の視界一杯に広がる真っ赤な奔流は、まるで竜の吐く炎のようである。その中に身を置いた騎士は狼狽え、腕で顔を庇い一瞬、動きが止まる。


 (……ドラゴン・ブレスねぇ。見かけ倒しだが……)


 派手な見た目の割りに、威力は大した事の無い銃弾である。騎士相手に使うのは疑問も残る代物だが、それなりの効果は有ったようだ。


 「隙は出来たっ!!」


 リチャードは一気に前に出ると、ショットガンの銃口を騎士の頭に押し当てた。それと同時に目眩ましを浴びた騎士も気配に気付き、両手の剣を左右から振り抜いた。


 ドンッ、とショットガンがスラグ弾を放つのと、騎士の片手剣がリチャードに殺到するのは同時だった。



 「……死ぬな、こりゃ……」


 リチャードは自分の置かれた状況を客観的に判断し、そう呟く。右の上腕に食い込んだ剣は動脈を切り裂き、どくどくと血が流れ出ている。そして左の剣は彼の胸に深々と突き刺さり、抜けば即座に出血が止まらなくなるだろう。肺も傷付き、そのうち気管から逆流する血が気道を塞ぎ、呼吸も止まるに違いない。


 「……ぶふっ、がはぁ……」


 予想通りに溢れ出た血が口から流れ、声が出せなくなる。膝を突き、ショットガンを落としながらリチャードは騎士の姿を見た。無論、頭を噴き飛ばされた相手は微動だにせず、彫像のように固まっていたが、ゆるりと剣から手を離すと後ろに向かって倒れていった。






 

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