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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
二章

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⑩何もかも見た事が無い



 「……やはり、それが目的なんですか? 従えばきっと……あんな事やこんな事を……」

 「何を言っているか理解出来ません……早く服を脱いでください」


 アンに促され、ワイルズは抵抗を試みようとするが、どうにも抗いようがない状況だった。


 仲間の血にまみれた鎧と衣服を脱げと言われ、彼女はやはりそうなのかと改めて警戒を強めた。そして女性(無論ワイルズは詳細を知らないが)のアンに言われ一人で鎧は外せない、と抵抗したのだが、


 「ベルトを外せば良いのでしょう? 私が補助しますから早くしてください」


 と、軽くあしらわれてしまう。そんな一悶着が有ったものの、結局鎧と衣服を剥ぎ取られたワイルズは、薄衣一枚で狭い部屋に案内された。


 「……これは湯浴み場ですか!?」

 「随分古風な言い回しですね、でもその通りです」


 そこは、三ヶ月を費やしてリチャード達が作ったシャワー室だった。排水はポンプで汲み上げて濾過し、それを他の用途に使うとアンは説明するが、ワイルズはそれよりも、寒さを意識し始める季節に水を被る事が信じられたかった。


 「……冷たい水を浴びるなんて……正気と思えません」

 「……温水ですよ」

 「まさか……そんなっ!?」


 アンに促され、渋々手を伸ばして確かめてみると、適温のお湯が勢い良く滴り落ちていく。仕方ない、と腹を括ったワイルズは漸くシャワーを使う事にした。




 「……悔しいですが、確かに良い温かさでした」

 「御召し物は洗っています」

 「……はいっ?」


 シャワー室からバスタオル一枚で出てきたワイルズに、アンが言葉短く告げると彼女はまた驚く。アンの傍らでゴンゴンと唸りを上げる機械が、彼女の服を洗濯していると言うのだ。


 「ま、待ってください! 下着は!?」

 「洗ってますが」

 「で、では私は何を身に付けるんですか!?」

 「はい、これです」


 事務口調で対応し続けるアンに閉口しつつ、ワイルズは手渡された衣服を下着から順番に身に付け始める。因みにアンとワイルズの背丈は概ね同じだったが、胸元だけはワイルズ曰く、


 (……少しだけ、ゆとりが有ります。ええ、ゆとりですから!!)


 ……だった。




 結局、アンが手渡した野戦服に着替えたワイルズは、男だらけでなかなか身支度の出来ない環境から一転、久方振りに身嗜みだしなみを整えられた。お陰でベリテに「……ああ、なかなか良いな」と言われて妙に頬を赤らめたが。


 「……湯浴みが好きな時に出来るのか、何とも贅沢の極みだな」

 「いえ、それだけでは有りません! 洗濯まで手放しで任せられるキカイが有りましたよ!」


 珍しく興奮気味のワイルズに、ベリテも年頃の婦女ならば当然かもしれんと納得する。彼も先に使えとワイルズの次にシャワー室をあてがわれ、泡立ちの良い石鹸と適温の心地好い人口降雨で身を浄められた。但し、彼に見合う野戦服はなかったので、飾り気の無いカジュアルな服を着せられて微妙な表情である。


 「それはともかく、天井の灯りは何を使っているんだろう。見たところ燭台やランプでは無さそうだが」

 「はい、先程聞きましたが()()()を使ったランプだそうです。余り熱も出ず燃える心配も無いらしいです」


 ベリテの疑問にワイルズが答えると、地下なのに寒さと無縁の温かさに暖炉の類いを探してみたものの、暖炉どころか煙突の配管すら見当たらない。


 「……まさかとは思うが……どうしてここは寒くないのだ?」

 「……その、()()()の仕業らしいです」

 「……何なんだ、その()()()とは!?」


 ワイルズに食ってかかりそうな勢いでデンキデンキと繰り返すベリテだったが、


 「まあ、私が聞いた話では雷と同じらしく、それを細い銅線を介してキカイに流すと、各々のキカイが動く仕組みらしいです」

 「……雷が灯りや他の役割を果たすのか? ……全く想像も出来んな」


 ワイルズのざっくりな説明に、更に混乱を深めるベリテである。もしこの世界にもっと初歩的な家電品が存在するならまだしも、突如目の前に蛍光灯や洗濯機が現れれば理解は難しい。況してモーター駆動まで判るように説明するには、磁石と電気の予備知識まで必要なのだ。リチャードもモーターや白熱球位は知っていたから良かったが、もう少し前の世代ならば彼もベリテ達と同じだったろう。



 「捕虜になったと言っても何かされる訳ではなさそうだな、尋問どころか拘束すらされんとは」


 ベリテはそうワイルズに話すが、そこで漸くアンの視線に気付く。彼女は二人から若干距離を保っているが、その視線は常に二人へと注がれている上、短機関銃から拳銃に持ち変えてはいるが常にホルスターの上に手を置き、いつでも抜き出せる位置に提げているのだ。


 「……怪しい動きはするな、と言う訳か」

 「それを理解して貰った方が、私も余計な銃弾を消耗しなくて済みます。撃っても死なない場所を狙いますが、当たり所に依っては一生杖が必要になりますから」


 当然の如くアンはそう言うと、折角ですからお二人が一番行ってみたい場所を案内します、と言ってリチャードに目配せする。


 「ああ、お願いしよう。たぶん行ってみれば余計な事は考えなくなるからね」


 リチャードが軽くそう告げると、アンは二人に先を歩くよう促してから、


 「この地下施設の一番重要な場所を、案内します」


 そう伝えてホルスターから拳銃を抜き、安全装置を外してから二人の後ろに回る。


 「直ぐ着きます、ではそのまま通路に出てください」




 常にアンから監視を向けられながら、ベリテとワイルズは地下施設の通路を進む。だが、彼女の言う通り目的地らしき場所には直ぐ着いた。


 「私から離れて、そこに居てください」


 指差された通路の端に二人は並んで立つと、アンは拳銃を構えたまま鍵を回してドアを開け、そのまま二人へと近付く。


 「申し訳無いですが、一度手を拘束させて貰います」


 そして、黒い樹脂でコーティングされた手錠をベリテとワイルズに掛け、拳銃をホルスターに仕舞った。そして今まで事務口調だったアンは、若干語気を和らげて二人に告げる。


 「では、ここの【武器保管庫】をご案内します」





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