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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
一章

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⑮二人と二人



 モルフの姿を見たミリオは、一瞬で頭の芯に血が昇るような昂揚感を覚えた。そして、眼に飛び込んできた様々な情報が脳内を駆け巡っていく。


 水色のショートパンツ。


 似たような物をモルフとミリオの二人で各々分けあった際、彼女が一番最初に手を伸ばしたお気に入りである。無論、それを彼女が身に付けている事は知っていたが、洗濯した衣服を通風孔の中に渡した紐に下げて干す中(彼女は自分の物を干す紐は二人と別にしていた)に時々混ざっているのを見ただけである。


 すっ、と伸びやかに並ぶ細い脚。


 正面から見た彼女の脚は、春の日差しに晒されて次第に細る氷柱のように滑らかで、それでいて僅かに接する肌の間に隙間が見える。それは少女特有の中性的な特徴に依るものながら、それと全く違う女性的な膨らみが外周に向かって増していく。そして最も空洞の広い空間が、両太股の付け根と下腹部の三点を結ぶ中心に三角州のように開いている。


 細く絞れた腹部。


 何だろう、白くて柔らかそうで触りたい。触ってみたい。柔らかそう。触りたい、触りたい……。



 「……いいの?」

 (……っ! ……はい……)


 ミリオの問い掛けに、モルフが答える。その言葉に飛び付いて顔を埋めたくなったミリオが、ゆっくりと滑らかな陶器のような肌へ指先を伸ばし、あと少しで触れようとしたその時、


 「おーい、ミリオ! 早く戻って代わってくれ」


 リチャードの声がミリオとモルフの耳に届き、二人はまるで雷に打たれたような勢いで同時に身を離した。




 「……どうした、二人とも随分と静かだな」

 「……別に、いつもと同じだよ……なぁ、モルフ?」

 (……そうです、特に変わらないです……)


 そんな事情を知らぬリチャードに尋ねられ、ミリオとモルフはそう返答するが、その割りに二人とも何処か余所余所しい。しかし晩餐に同席しないアン(モルフが理由を尋ねても後で良いと断られた)を除いた三人は、朝から何も食べていなかったので、リチャードはそれ以上追求するのは止めた。



 「さて、それはともかく……今回の糧食は初めての物だと思う。でも、俺にも読める字で書いてあるから中身は判るがな」


 【迷宮】で暮らしてきた彼等にとって、数多く手に入る物から日常的に食してきた。無論、時にはほぼ毎食同じ物を摂取する事になり、その責め苦に耐えられなくなった時は仕方無くジルデアンタ村に戻って物資と生鮮食品を交換し、何の変哲も無い芋や青菜に感涙する事もあったが。


 「……では、早速開けようか!」


 しかし、今夜のリチャードは何故かいつもよりテンションが高い気がする。そんな感想にモルフとミリオは至りながら、まあお腹が空いてるからだろうと流す事に決めた。


 「……の前に、実は今回の糧食に……俺は多大な期待を寄せているんだ」


 だが、二人の思いを他所にやや興奮気味に説明しながらリチャードは段ボールに入った糧食を取り出し(因みに十二箱が大きな一つの箱に梱包されている)、各々の前に並べる。因みに大半の糧食は一日分、つまり朝昼夜の三食分が纏めて入っている。つまり加熱材や除菌シートといった食品以外も三食分有り、それら重複分を貯めてから交易所に持ち込んで交換している。


 「……この糧食は……俺の母国の物らしいんだ。但し、俺が居た時代より後の世界で作られたと思うが」


 リチャードの発言に、モルフとミリオは顔を見合わせる。今更、未来も過去も関係無い状況なのだが、改めてそう言われると奇妙な感覚に陥るのも無理は無い。しかし、食事がまだだった二人は神妙な顔で頷くしかなかった。


 「では、早速開けてみよう。まあ、きっと君達も気に入るだろう」


 そう言ってリチャードが箱の封を切り、中から次々と現れる糧食の数々を取り出していく。ある物は密閉式のパウチ容器、またある物は缶詰めとバラエティに富んでいる。しかし、当然だが日光を遮る構造の為、外見から中身を窺い知る事は出来ない。


 「……これはミューズリー、これはクリームパスタ……おっ、ビーフパテとミートローフじゃないか!」


 珍しく嬉しそうにそれらを並べていくリチャードに対し、様々な糧食に慣れ親しんできた筈のモルフとミリオは、妙な不安に言葉が出ない。何故なら、リチャードの目付きに何故か普段の穏やかさが見えなかったからだ。


 「それじゃ、早速食べようか……って、どうした二人とも?」

 「……えっ? あ、ああ……そうだね」

 (……はい、では……頂きましょう……)


 リチャードは自分と二人の落差に違和感を覚えつつ、しかし時代の隔たりは有るものの母国の味に期待しつつ、一つ目の皿に手を伸ばした。




 【ミューズリー】


 見た目は様々な穀物を茹でて煮た物らしく、押し麦や平たい豆のような物がゴロゴロと入っている。全体に薄灰色と白で占められ、そこに豆類の茶色がアクセントになっている。


 「……これ、味が無いなぁ……」


 ミリオが一口食べてそう漏らすと、モルフも無言で頷いた。


 「いや、確かにそうだが……そうだなぁ、ちょっと一味足りんな……」


 リチャードも同様に一口目で俯き、塩の入った袋から白い顆粒を振りかけた。



 【インゲン豆とラム肉のクリームパスタ】


 「ねえ、リチャードさん。ラムって何だ?」

 「ラムってのは羊の事だよ、毛がモフモフ生えてる家畜なんだが……知らないか?」


 二人はそう言いながらパスタをフォークに刺し、口へと運んだ。そして暫く無言で噛み締めてから、やはり塩の顆粒を振りかけた。


 (……私は、そんなに薄いとは思いませんが……)


 二人の様子に二口目を飲み込んだモルフがそう呟くと、リチャードは、いや気にしなくて良いよと少しだけ寂しげに答えた。



 【ビーフパテ】

 【ミートローフ】


 「……これはしょっぱいやぁ……」


 ビーフパテを食べたミリオが感想を述べると、モルフがクラッカーを一枚差し出し、受け取ったミリオがパテを塗って齧ってみる。するとうんうんと頷きながら、これで良い感じなんだなぁ、と言って二口目を食べ始めた。


 「……まあ、ミートローフはミートローフだな。流石に不味く作りようがないか……」


 四角い缶詰めから取り出したミートローフは、その味を知っているリチャードにしてみれば旨いと唸る程でもない。モルフとミリオも不満げではないが、やはり今までの糧食程喜んで食べているようにも見えない。



 【ラム肉のカレー&サフランライス】


 「……っ!? こ、これは……」


 今までの肩透かしに気乗りしないリチャードだったが、一口目から何か違う反応を示した。


 「……リチャードさん! これは旨いよ!!」

 (……あっ、辛い……でも香りがすごく良いです……!)


 赤いカレールウと茶色いラム肉の組み合わせに、最初のうちは恐々と食べ始めた二人だが、そう言って納得したように順調な速度で食べ進める。無論、リチャードも柔らかく煮込まれた野菜とスパイスが十分に効いたルウ、そして程好い固さのラム肉はサフランライスにとても良く合い、今までの苦行はこの瞬間を演出する為だったのかと思い、しかしやっぱり違うかと考え直した。どうせ食べるなら、全部旨い方が良いに決まっている。



 「……うむ、カレーが一番旨かったな……」


 あらかた食べ終えたリチャードがそう漏らすと、モルフとミリオも頷いて同意しつつ、しかし心の中では何も無いよりは良い、と自分を納得させた。




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