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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
一章

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⑬新たな勢力



 リチャードは今まで居た世界から転じ、様々な出来事を経て唯一自分の言葉を理解するモルフ、そして彼女と同郷のミリオという青年と交わるようになった。そんな彼は新たな拠点を手に入れて、穏やかな一日の終りを迎えようとしていた。


 ……だが、彼は知っていた。


 ただ無策のまま所持しているショットガンの弾頭を使用し続ければ、いずれ尽きる。そして、それを手に入れる為には【迷宮】に挑まなければならない、と。




 「……そうか、やはりここで発見される銃は、こちらの人間には扱えない物なのか……」


 リチャードの質問に、二人はそう答えると簡潔に説明する。


 「自分や他の探索者は、銃を見ても使い道が全く判らないし、リチャードさんに教わるまでは敵を倒す道具だなんて、考えた事も無かったな……」

 (……もし、交易所に持って行っても、買い手は付かないと思いますね……)


 結局、それが何なのか判らなければ価値を見出だせず、目の前に落ちていても拾おうとすら思わないのだ。きっと多くの探索者は、落ちている銃を跨いで先に進み、その真価を知らぬまま土になっていったのだろう。


 そうした情報から、リチャードは幾つかの計画を立て、以降の行動方針を決めた。そしてそれは、三人のこれからの運命に大きな影響を与えていく。





 ……三人が出会い、そして行動を共にするようになってから三ヶ月が過ぎた。その間に様々な出来事があり、彼等を取り巻く環境にも変化が起きた。


 先ず、リチャードは【迷宮】攻略の為、詳細な地図の製作に取り掛かった。廃墟の何処に何があり、それは何処に繋がっているのか。それを細かく記して残し、少しづつではあるが【迷宮】の様々な廃墟の所在を明確にしていった。


 その最中でも、巣食う化け物との遭遇は避けられず、幾度もリチャードとミリオは戦った。そう、ミリオにも新しい銃が与えられ、それを手に戦闘に参加するようになったのだ。


 最初は手軽で扱い易い拳銃ハンドガン。単発ながら近距離なら威力は十分で、次第に無駄な発砲も減少し、後に二発撃てば殆どの相手を倒せるようになった。


 そして、拳銃から短機関銃に換わると更にミリオの戦果は上がり、時にはリチャードが一発も撃たずに敵を圧倒する事すら出来るようになる。


 その結果、【迷宮】の地図は完成し、それと同時にそれまで不明だった化け物の正体も明らかになっていく。今までは只の襲撃者に過ぎない化け物達も、様々な意図や目的を持って行動している事が判明した。


 先ず、探索者達が悪鬼(グール)と呼ぶ存在は、この【迷宮】で朽ち果てた者の成れの果てであった。命を落とした探索者の亡き骸が時を経て、悪霊の類いが憑いて甦るのかは定かではないが、ともかく幾日経った死体がその場から突如消え失せ、入れ替わるように現れるのがグールである。【迷宮】に滞在するようになったリチャード達が観察した結果、グールは群れず単体か多くても三体までで行動し、動く物に我先に飛び掛かり餌食にする。だが、何故かグールは共喰いだけはせず、単体で行動する者同士が出会っても争わないのが奇妙であった。


 そしてリチャードが「オオカミ男もどき」と呼んだ顔の尖った化け物は、グールより若干の知性を保っていた。常に単独で行動し、物資を漁って我が物にしながら徘徊している。だが、物資を得ても積極的に活用する事は無く、グールと同様に手と牙を用いて襲い掛かるのみでリチャード達の脅威にはならなかった。


 だが、そんな化け物達にも突出した存在が居た。それが【迷宮】で出会う者の中でも異質な、()()()とでも呼ぶべき者だった。





 ……その者を初めて見掛けたのは、三人が【迷宮】で暮らすようになって一ヶ月が過ぎた頃だった。



 「……うん、まだ生きてる。でもそのうち動かなくなると思う」


 ミリオは耳元に付けたインカムを通し、モルフに現状を告げる。この画期的な通話機器は三人が見つけた物資の中で、群を抜く貴重品と言えよう。何故ならば、その発見率は限り無く低く、しかも確保しても内蔵されている電池が尽きていれば使えないのだ。だが、電池さえ見つけられればモルフを介してリチャードとミリオは相互会話が容易になり、更に静穏性を優先すればノック音だけで意志疎通が出来る代物なのだ。


 今、彼等は直前に仕留めたグールを餌に、更なる化け物を誘き出そうとしていた。前線の監視役のミリオ、そのサポート役にリチャード、そして後方支援としてライフルで彼等をバックアップする、モルフの布陣である。


 (……その、尖塔から山の方に三百ミル(三百六十度を千分割した角度の単位・半径を五百に分割し1キロ先では1ミルは1メートルに匹敵する)の方向に、何か居ます……)


 二人から離れた場所の狙撃位置に着き、ミリオとやり取りするモルフ。彼女はMK12SPRという中距離対応ライフルに載せたスコープを覗きながら、彼に向かって情報を送っている。本来なら視野の広い双眼鏡を使った方が良いのだが、有事に即応する為にそうしていた。


 (……リチャードさん、ミリオはまだ同じ場所に居させますか?)

 「……いや、退かせよう。監視ならこちらの射程内からでも十分だ」


 リチャードはそう答えると、愛用のショットガンを構えたままミリオを待ち、彼と合流すると直ぐにその場から撤退する。彼等にとって【迷宮】を徘徊する化け物は、次第に脅威から様々な研究の対象となっていた。


 「……あー、リチャードさん……下がるか?」

 「いや、ここで待とう」


 ミリオは既にモルフの仲介を経て通訳をせずとも、僅かながらリチャードと少しなら会話が出来るようになっていた。その若さ故の理解力はリチャードの予想を越え、身振り手振りを介しながらとはいえ、それなりに意志疎通が行える。


 「……来たな、だが……いや、まさか?」


 そしてそれから数分後。廃墟と化した家屋の中から外の様子を窺っていたリチャードが、付近から近付いて来る何者かに気付いたのだが……その姿を見た彼は、その者の姿を見て我が眼を疑う。何故なら、その姿は彼が所属していた英国軍兵士に酷似していたからだ。



 (……いや、待て……それにしては奇妙だ。何と言うか……)


 少し離れた物陰から突如現れた相手は、手に武器らしい武器も持たず、背中に背負った帆布製のリュックサック以外に目立つ物は所持していなかった。無論、この世界の住人とは全く違う衣装、そして特徴的な鋼鉄製のヘルメットは見間違えようもない。そんな見慣れた装備の兵士が現れたのだ、リチャードはつい立ち上がって声を掛けようと腰を浮かしかけたのだが、


 (……何なんだ、あの眼は……)


 彼を引き戻したのは、グールの死体に近付く兵士の眼だった。その眼からは何一つ感情の起伏が感じ取れず、まるで昆虫の複眼のように、体外に露出した器官の一つにしか見えなかったのだ。


 その死んだ目付きの兵士はふらふらとグールの死体に近付くと、その傍らにひざまずいて動かなくなる。そのままじっとしたまま時間だけが過ぎ、見守っていた二人が対処をどうするか決めかねていたその時、不意に動き出した兵士はグールの死体を両手で掴むと、粘土細工を手で千切るように腕を引き抜き、ぼりぼりと音を立てながら貪り始めた。


 (……くそ、あいつもグールなのか……)


 リチャードは目の前で繰り広げられる吐き気を催す光景に、意識を激しく掻き乱される。もし、会話出来る程度の理性が残されていたならば、彼は迷わず救護の手を差し伸べて助けるつもりになっていた。だが、相手は見た目こそ違えど中身は悪鬼(グール)に成り下がっていた。彼にはここに来た経緯や以前の状況を確認したかったのだが、それは叶えられそうにない。


 落胆しながらショットガンを構え、死食の饗宴に終止符を打とうとリチャードが狙いを定めた直後、相手のヘルメットが甲高い音と共に撃ち抜かれ、中身を失った頭部から血を流しながらグールと化した兵士は事切れた。


 「……っ!? モルフか?」

 (……いえ、私ではないです!)


 思わずリチャードが呟くが、インカム越しの返答はそれを否定する。そして、新たな勢力の気配にリチャードとミリオが気配を殺して待つと、遂に相手が身を現した。


 「……銃を使う……なら、俺と同じなのか?」


 リチャード達が見守る中、その者は洗練された動作と油断無い視線で警戒しながら無音で進み、頭部を撃ち抜いて倒した兵士の元にやって来ると、背負っていたリュックサックの中身を漁り始める。だが、その姿は袖無しの奇妙に膨らんだチョッキが特徴的な上、樹脂製のヘルメットと大きな偏光バイザーのせいで顔は全く見えず、更に巨大なサイレンサーを装着した短機関銃を装備した兵士だった。




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