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異世界で銃を構えながらティーチ&ビルド【塹壕戦の猛者は転生先で育成に励みます】  作者: 稲村某(@inamurabow)
一章

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⑩銃の使い方



 僅かではあるが、自分の状況を理解出来たリチャード。しかし、モルフとミリオを連れて【迷宮】を歩く道程に、困難は必ずついて回るようである。




 通りの先で動く何かに気付いたのは、やはり先頭を歩いていたリチャードだった。


 (……同業者か? いや、それにしては……)


 リチャードは通りの先に人影を発見し、反射的にモルフとミリオを下がらせる。そして自分も瓦礫の陰にしゃがんで隠れ、ショットガンを構える。


 照準の中心に、動く何かを捉える。それは廃墟の片隅に放置されている車の開いたままのドアから中に身体を入れ、物色しているように見える。だが、この世界の住人にしては、妙な違和感が拭えない。探索者にしては一人で行動しているのも珍しいし、何より剣等の特徴的な装備を身に付けていないのだ。


 (……あれは、銃か?)


 そして、大きなリュックの脇に見え隠れする長い棒は、ストックとグリップの付いた長銃にしか見えない。モルフやミリオもだが、この世界の住人は銃そのものの扱い方を知らない上、武器と認識していないのだ。だから、闇に紛れて襲ってきた侵入者の二人は、ショットガンを持ったリチャードに平然と飛び掛かって来た。銃を知っている者なら、間違いなく射線から身を隠そうとする。


 では、リチャードの前に現れた正体不明の者は、果たして現地人なのか。それともまだ彼の知らない異なる存在なのか。


 と、相手を観察しているリチャードは、相手が車の中から外に顔を覗かせて周囲を見回す姿を目の当たりにし、


 (……どうやら、人間じゃなさそうだな)


 そう結論を出した。何故なら、その者の眼は半ば飛び出し、顔全体が犬や狐のように先細りしている上、その先端に付いた半開きの口からは、長い舌が突き出し細い牙が並んでいたからだ。


 その醜悪な顔の何かは立ち止まったまま、辺りの匂いを嗅ぐ仕草をしながら左右に身を振ったりしていたが、不意にリチャードの方に身体を向けて近付いて来る。


 (……居場所がバレたか……なら、不意討ちは出来ない……?)


 と、その時後ろに居たモルフ達がリチャードに近付こうと通りに出て来て、異形の探索者の視界に入ってしまう。その瞬間、相手は背負っていたリュックを身体から外すと、それまでの立って歩く姿から四つ足に変え、俊敏さを増しながらリチャードの横を抜けて走り出した。


 「二人とも伏せろっ!!」


 リチャードの声と共に駆け寄る何者かに気付いた二人は、ミリオが盾になるつもりなのかモルフの前に出る。だが、彼の元に相手が到達するより早く装填を終えたリチャードが、


 「……貫通するなよ……ッ!!」


 淡い期待と共に放った弾丸は、ドンッ、という派手な発砲音と共に狙いあやまらず右肩付近に命中する。貫通性よりも破壊力に優れた軟質の弾頭は、相手の体内でひしゃげて歪むと同時に、その慣性エネルギーを四方に放出して砕け散った。


 「……おごっ!? ぐふぅ……」


 背後から狙い撃たれた相手は、肩甲骨と肺を砕かれて斜めに転がり、その場で血を吐きながら絶命した。


 「……やれやれ、狼男みたいな奴だったな」


 相手が背負っていたリュックを爪先で触りながら、リチャードが呟く。中身を確認しようと蓋を開けて確認すると、元から入ったままなのか綺麗に整頓された野戦用装備が詰め込まれている。但し、その装備品に付いているタグに記された字は、リチャードには馴染みの無い言語だった。


 「……それにしても妙だな。あんな風に知性の無さげな奴が、見つけた物資を綺麗に仕舞うものか?」


 中身はそのままにして蓋を戻し、リチャードは担ぎ上げながら考えてみたが、答えは見つからない。


 「リチャードさん! 凄いですね!! 一発で仕留めるなんて!」

 (……でも、あんなに大きな音が出たら……他の化け物が集まってきそう……)


 今しがた自分達が狙われていた事に気付いていたのか判らないが、二人はそう言いながら死体を避けてリチャードの元に辿り着く。


 「二人共無事か? ならいいが……それにしても、随分と大荷物を背負ってたんだな、あいつ」


 リチャードはそう言うと背中のリュックを指で差し、


 「それにしてもこれ、結構上手い作りになってるな。かなりの重量だが背負っていても、重く感じないんだ」


 と、彼の知る帆布製の丈夫だけが取り柄のリュックサックと比較しても、圧倒的に背負い易い。


 (はい、そういう品物はここでは重宝されていますから……きっと高値で売れますよ)


 モルフもそう認め、けれどもう少し小さくないと私には……とうつむいた。

 

 「なら、俺が持ちますから!」


 直ぐにミリオが引き継ごうとリチャードに声をかけ、それならばとリュックサックを手渡すと、


 「……うわっ、結構重いや……」


 流石に二人の体格差があるからか、ミリオは背負って直ぐによろけかける。苦笑いしつつリチャードはリュックサックに手を伸ばそうとするが、


 (……ミリオも、良い所を見せたいんです。もう少し様子を見ませんか?)


 モルフに言われ、それもそうかとリチャードは伸ばした手を引っ込めた。


 (……それでは、しっかり持っていてくださいね?)

 「……わ、判ったよ……ああ、もう……」


 そんな風に返しながら苦い顔のミリオに、二人は励ますように笑いかけてやる。そんなやり取りに和む空気だったが、ここは平和な場所では無く、油断が死に繋がる魔境である。三人は直ぐこの場から離れる為、大通りから元の方角に戻る事にした。



 「……なあ、二人共。ちょっと聞きたいんだが」


 その道すがら、リチャードはモルフとミリオに自分のショットガンを見せながら尋ねる。


 「これは何に見えるか、率直に教えて欲しい」


 彼の質問をモルフはミリオに通訳し、二人は直ぐに答えた。


 「何にって言われても……変わった形の杖でしょ?」

 (……私もそう見えます。でも、大きな音が出せるのは知っていますが……)


 リチャードは二人の言葉を聞いて、やはりこの世界の住人は銃に対する知識が皆無だと確信した。もし、ここで先程の狼男もどきのように発見しても、使い方すら判らず棍棒のように振り回すしか出来ないだろう。


 「……それじゃ、二人にコイツの使い方を教えるか」


 彼はそう言うと周りを見回し、廃墟の建物の入り口から中に入り、二階に向かう階段を上がっていった。





 

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