No.5_寂しさに襲われる
1. 午後5時前の青空より
2. レモネードに蜂蜜はご入用ですか?
3. 18歳
4. 綺麗すぎるよ
5. 定義を教えて
6. ワイヤレスイヤホンとペットボトル
7. 保存方法
8. 夕焼けと曲がり角の2km手前
9. 洗濯機は回ってたよ
10. 世界で2番目
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午後5時前の青空より
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地が歪む、
開闢以来の歴史が朽ちる、
合奏が始まって、
日が沈む。
りんご飴を砕いていった雲、
這いずり回っていた蜘蛛、
風鈴になりたかった蝉、
典型的なアイロニーとジレンマに踊り狂う、
澱みのない世界、
それはきっと、つまらない。
見せかけの上澄みをみて綺麗だ、
と言った人がいるならば、
それは一瞬止まって、
魔法陣が発動する。
充電器のコードが足に纏わりついていた、
不快感を覚えながらも
気づかないふりをして、
1人、背を向けて、
ソファーの中で夢を見ていた。
私は、地球が溶けて
宇宙に馴染むのを待っているよ。
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レモネードに蜂蜜はご入用ですか?
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御茶会で鳴る音はどれも煌びやかで、
踵がカツ、カツ、と踊りだす程。
ふんわりドレスの下にはクリノリンを秘めて、
私よりも目立とうとしていた。
時間が溶けゆく空間、
言い出してはいけないという空気。
猫は連れてきちゃいけないよって、
門番さんに言われた。
今日は2人だけの時間だね。
午後10時の甘い時間。
さあ、はじめましょうか。
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18歳
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6月末の夜の狭間は
やっぱり生ぬるくて、
裸体は生々しくて嫌いだと感じた。
8月半ばの夕方の紫は
ちゃんと熱くて、
貴方の体に触れていたいと思った。
絵を描いているときは自殺ができるよ、
無になってひたすら描いていたら、
終わったあとの虚しさに刺されてみて。
きっと痛くはないから。
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綺麗すぎるよ
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霧に包まれた森、
曇り空と曇った視界、
誰かと笑っていた夜、
線香花火の匂い、
深い青の海、
砂浜の感触、
横顔を描いたスケッチブック、
1.3cmの睫毛、
走馬灯ってきっと、こんな感じ。
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定義を教えて
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体温で沸騰する水が血だとしたら、
貴方の血は沸いてる?
海月ってどうなってるの?
来世は海月がいいよね。
誰1人覚えてくれてなくて、
消えるように居なくなって、
環境に溶ける。
私の幸せは私しか知らない。
だから私は幸せだよ。
だから貴方は、幸せだよ。
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ワイヤレスイヤホンとペットボトル
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ワイヤレスイヤホンは見えない糸と繋がっていて、
人は絡まっていることに気付けない。
糸は絡まり続け、ペットボトルになり、
人々を潤す。
人間は四捨五入したら何でできてる?
水じゃない?
ああ、どうりで。
ワイヤレスイヤホンって何色?
白でしょ。
へぇ、そうなの?
僕が君になる、君はそれを知ってる?
僕らが貴方になる、貴方はそれに気づいてる?
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保存方法
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夕暮れの境の雲に
砂糖をかけたら
綿飴になるように、
君を水飴でコーティングしたら
りんご飴になんないかな。
世界の赤くて深いところを知る前に、
今のまま、綺麗なままで、
保存できないかな。
あ、薬に漬けたら死んじゃうから、水あめね。
今の身体に金魚が流れて、
瞳に火の向日葵が咲く、
茸が揺れる、
気持ちが揺らぐ、
成長途中の手が重なる、
夏の日々よ、
このまま、溶け崩れろ。
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夕焼けと曲がり角の2km手前
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少女は夢を見る、
包まれて抱きしめられる夢を。
少年は夢を見た、
信じていた世界の夢を。
不安に殺されていた現実を無視して眠る、
その破片を飲み込んだ記憶は何処へ行く?
想像の果の次元の世界にあるような、
綺麗な描写なんてないんだよ。
電車に揺られる午後6時、
まだ明るかったときの詩。
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洗濯機は回ってたよ
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14の夏セーラー服がエモいのとおんなじで、
洗濯機の残り14分間もエモく感じる。
10月から11月にかけて、
木々の葉が色褪せて散る頃に
ピアノを弾いていたいと思った。
爪が当たって不快な音が生じる、
歪と音色に挟まれる。
旋律が回転して、貴方はびしょ濡れ、
あと12分で、脱水まで終わりそう?
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世界で2番目
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真っ黒に見える深い色の中、
恋に落ちたら彷徨うばかり。
出会った人間は数え切れないし、
目にした文字数も、
聞き取った振動も、
分からないし、分かれないけど、
傘を差し出して親友、
叶わないんだよ。
どす黒い液体が足元に纏わり付いてる。
そんな私と話してる。
そりゃそうだもんね、知らないもん、
それがなにか、知らないもんね。
美しく純粋な貴方は人間の鏡、
そんなのはもう、散々だよ。
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