No.4_信じているから
1. 魅了
2. 序章
3. 舞い散れ火の芲、戀せよ友情。
4. 身分証明書
5. 手が届かない
6. ふと気づく
7. 殺してみたけど生き返った。
8. 将来の夢
9. 人はそれを何と呼ぶ?
10. 可愛くはない
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魅了
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貴方から青い光が放たれて、
私から紫色が流れ出た、
貫通したかはわからない、
心臓が音楽のリズムと共鳴していることを
その時に思い知った、
服が染まっていく、
すこしずつ、すこしずつ、確実に、
私の体に流れていたものが押し出されて、
青くなった、
服は青に抗って溶けてゆく、
肉は青に抗って解けてゆく、
骨は青に抗って崩れてゆく、
それでも私は染まり続け、
取り残されたのは私の私、
気付いたときには遅かった、
私は完全に染まりきっていた。
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序章
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花々が踏み荒らされていくことを忘れて
貴女と2人、走っていた。
とにかく遠くへ、遠くへと逃げたかった。
道がないならつくればいいよ、
先導する貴女が叫んだ。
曇り空、折れた茎、泥々の靴、ぼさぼさの髪、
映画のようだった。
貴女の後をついていくだけだったから、
白いワンピースには汚れがなく、
私には傷がなかった。
何処かもどかしくて、後退りしたかった。
切り傷が白い肌に目立つ、
泥だらけの白いワンピースにかかる茶色が風で靡く、
ふんわり、貴女が香る。
もう、戻れない。
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舞い散れ火の芲、戀せよ友情。
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8月の河川敷、
2人だけの花火。
ライターと線香花火、
浴衣とスマホ。
持ち物はそれだけ。
深夜2時の夏、
2人だけで遠出。
普通と好き、
貴方と私、
期待していた。
いつかは朽ち果てる、
2人の思い出、関係。
進展は見込めない、
2人の思い、関係性。
花は枯れてゆくから美しいの。
だからこれも、美しい。
美しい、はず、だから、
美しいと、信じている。
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身分証明書
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2人の愛は2人の間でしか通用しなくて、
他人はそれを愛と呼んだり、
呼ばなかったり。
隠し立てるつもりはなくて、
1つ誤ちを犯しただけで。
小さな明かりの中で、
2人ベッドに沈んだだけ。
愛に年齢や性別は関係ないけど、
結ばれた鉄からは逃げられないんだね。
今日も一瞬空が濃くなって、
約300m先のコンビニまで手を繋ぐ、
2人組の逃避行。
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手が届かない
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生々しい他人事が1番ぼうっと聞いてられることに
少し安心していた。
自分の話もこう思われてるのかな。
自分へのご褒美にって、
お気に入りのブランドの財布と鞄を買って帰った。
やっぱりかわいかった。
私の1部しか知らないくせに、
知った気になっている君が大好きで仕方がなかった。
お気に入りのバンドの曲のプレイリストを
ワイヤレスイヤホンから聞く。
君がうたっていた鼻歌を思い出して悲しくなった。
ベッドの上で財布と鞄を広げて
曲が流れ続けるワイヤレスイヤホンを外して
スマホの前で泣いている私は
どれだけ馬鹿なの?
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ふと気付く
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なんでもないときに手紙を書く。
小さな事でも読んでほしくて。
丁寧に書くけど、私の字で書く。
私の癖を知ってほしくて。
書き終えた手紙に
お気に入りの香水を染み込ませたティッシュを
押して香りをつける。
私の匂いを覚えてほしくて。
そして、いざというときにその香水を使う。
思い出してほしくて。
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殺してみたけど生き返った。
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恋心を殺そうとした。自殺に追い込んだ。
どうせいつか君を忘れる。
だから、君は私にとってそれくらいの存在なんだ。
って、心の余裕に入り込もうとしていた。
無理だった。
忘れようとすればするほど
君がずっとちらつく。
あ、君はこれを頼むんだろうな。
この色、好きって言ってたな。
今頃に寝たかな。
このゲームやってそー。
どうでもいいことで君と話せていたことを
あたりまえだと思っていた。
いつの間にか君は私の体に住み着いて、
40%を占めていた。
君が私の記憶に擦り込まれて、
きっと死ぬ前に思い出す人々の中に、
君がいるんだろうなって。
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将来の夢
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貴方を人間として好きだった。
思考回路、言葉選び、才能、
雰囲気、身体のつくり、目線、
声、瞳、手、髪、涙。
何よりも、
貴方が綴る言葉、紡ぐ音楽が好きだった。
貴方の生きた記録を、今考えていることを、
知りたかったし、見たかった。
私からは手がとどかなかった。
私では遠く及ばなかった。
叶わなかった。そりゃあそうだ。
ずっと、心の底から願っていた。
才能に殺されろ。存在を拒まれて死ね。
貴方に、なりたかった。
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人はそれを何と呼ぶ?
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後ろから刺されて
無重力空間に閉じ込められた。
私から私を取り上げたら
私には何が残る?
幼い私の質問が流れた。
深い青、深い赤、黒を着た爪、
お気に入りの指輪、あなたの声、
私が消えるより先に記憶が滲みて
個性という色が化学反応により透明になった。
私だけが目視出来なかった、
でも私だけが操れた蝶が
ボロボロになっていくのを見た。
私だけが触れれなかった、
でも私だけが育てていた薔薇が、
茶色くなっていくのを感じた。
私に残ったのは、
私が変わり果てたのは、
無個性の人間だった。
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可愛くはない
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恋って響きは綺麗で可愛くて純粋で、
いかにも幸せな音がする。
でも、まっすぐ見なければいけないの。
両脇に泥沼、後ろに落とし穴、
前だけ見て、ただ1人を見つめ続ける。
これのどこが綺麗で可愛くて純粋?
確率なんて、可能性なんて考えちゃいけない。
期待なんて、夢なんて見ちゃいけない。
周りを見渡したら1人だった、なんてことあるよね。
経験は語る、貴方の中身を。
誰かは語る、自分に非はないことを。
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