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第1章 第8話 二人目

「酒が飲みたい」



 その思いが我慢できなくなったのは、タイムリープから1週間ほどが経った金曜日の夜だった。



 俺は普段あまり酒を飲まない。そんなに強くないし、翌日に響くから。大学生の頃は誰かしらの家に行って毎日のように飲んでいたが、社会人になるとそうはいかない。だから酒を飲むのは月に一、二度程度だった。



 だがここ最近は気分が良い。大樹はふてくされたようにおとなしくなったし、両親もどこかよそよそしくて滑稽。バイト仲間と話すのは学生時代を思い出して楽しいし、咲は初々しくてかわいい。そして明日は休日で仕事もない。この良い気分の中飲む酒はさぞかし美味しいことだろう。



 しかしここでの俺は未成年。酒を飲むことは許されない。冷蔵庫にビールはあったはずだけど……ビールじゃないんだよなぁ……。ちょっと奮発した日本酒をちまちま飲みながら安いスナック菓子の単調な美味さで酔いたいのだ。



 でも……我慢だ我慢。あと3、4年の辛抱……え? 4年間も禁酒すんの? タイムリープ犯罪だろ。



「はぁ……」



 結局俺は夜家を飛び出していた。別に酒を買いに行くわけではない。夜風を浴びてこの気持ちを誤魔化す。それが目的だ。財布を持っているのはもしものため。大学生っぽい服を選んだのは職質を避けるため。うん、かんぺ……



「……!?」



 だが家を出たところで固まってしまった。家の前に、スカートスーツを着た若くて綺麗な女性が立っていた。



 母の知り合いだろうか。父の浮気相手? 大樹が手を出した相手かもしれない。ていうかどれかであってくれないと困る。だってそうじゃなかったら不審者……。



「ひさしぶり、光輝くん」



 しかしこの女性が口にしたのは、一番ありえない俺の名前だった。こんな大人の女性の知り合いはいない。いないよな10年前の俺……。でもどこかこの声、聞き覚えが……。



「やっぱりわからないか」



 扉を開けたまま立ち尽くしていると、女性がゆっくりと近づいてきた。そして顔がはっきりと確認できたその瞬間、口が勝手に動いていた。



「忍……さん……?」

「せいか~い。よくわかったね~」



 その名前は俺のバイト先の先輩、柴山忍のもの。だがこの女性はこの時間の忍さんよりずいぶん大人びている。長くふわふわしていた髪は肩の辺りまで短くなっていて、明るかった髪色も落ち着いている。皺なんかはないが、申し訳ないけど17歳の女子高生には見えない。確かに顔立ちや声は忍さんに近しいけど……。でも明らかに、違う!



「忍さんの……お姉さんかなんかですか……?」

「ん~ちがうちがう。これでわかるかな」



 そう言うと女性は、両手を開いて上に向け、記憶より大きな胸の横に掲げてみせる。そしてこう言った。



「あなたが落としたのは金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」



 それは有名な御伽噺のワンフレーズ。だが俺にとっては全く別の意味を持っていた。



「エージェント……!?」



 俺を過去へと送った女神型ロボの名前を口にすると彼女はクスリと笑い、名刺を取り出した。



「エージェント開発元の株式会社フェニックス、開発部エージェント事業課所属の柴山忍です。エージェントの実験にご協力いただきありがとうございます」

「……ご丁寧にどうもありがとうございます」



 何一つ理解できないが社会人の癖で名刺を受け取り、自分の名刺も渡そうとポケットを探ったところでようやく我に返った。



「忍さんが……あの女神の開発者……!?」

「そう。今から見て、10年後の私がね」



 俺が知るおっとりした彼女とは違いエリート会社員の雰囲気を纏った忍さんは、そしていつものように笑った。



「巻き込まれたのが光輝くんだって知って、タイムスリップしてきちゃった~」

大樹くんへの復讐は一旦ストップ。少し物語を進ませていただきます。続きが気になると思っていただけましたら☆☆☆☆☆を押して評価とブックマークをしていってください! お願い致します!

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