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第5章 第6話 迷走の先

『かんぱーい!』



 いつものメンバーいつものファミレス。どれももういつもと呼べないくらい過去になったが、いつもと呼びたい人たちと、俺はグラスを合わせていた。



「このメンバーいつぶり~? やば~私たちも歳とったね~」

「にしてもよく潰れないねこの店。昔からたいして客いなかったのに」

「なんか料理の質落ちたな……今のバイト大丈夫か?」

「庶民アピール庶民アピール……」



 忍が翠がパーさんが光が。ひさしぶりに集まったというのに好き勝手に言葉を吐く。みんなそれだけ話したかったことがあったのだろう。でも今日はとにかく。



「パーさん! アニメ化おめでとう!」



 ここ最近で一番のニュースを祝いたかった。



「アニメ化ね……別に狙ってたわけじゃないんだけどなー。はっはっは!」



 37のおっさんがわかりやすいくらい調子に乗っているが、今日くらいは酔わせてあげよう。こことは別の世界で今も苦しんでいるパーさんの分も。



「光……お前やったな」

「別にわたしは何もやってませんよ。ただ当たりそうなジャンルを教えてあげただけです。タイムパラドクスもゴーストライターもやってないです」



 ずっと漫画家になりたくて、10年前も。別の世界線では今も尚努力し続けてきたパーさん。それがこの世界では見事に連載を勝ち取り、アニメ化までこぎつけていた。こう言っちゃ悪いが、どう考えても未来人の光の助力は大きいだろう。



「本当に……わたしは何も。パーさんががんばっただけです」



 だがジャンルを当てただけでヒットできるほどエンタメの世界は甘くないだろう。その根底には間違いなくパーさんの10年以上にも及ぶ努力があるはずだ。だから素直にめでたい。心の底から祝いたい。でもその前に。



「じゃあ俺、ちょっと外行ってくるわ。忍、なんかあったら連絡してくれ」

「……こっちの台詞だよ」



 せっかくの同窓会だが、先に片づけておきたい奴がいたのでファミレスを出る。……雨降ってるな。傘持ってくんの忘れた。みんな酒を飲んじゃったし帰りはタクシーだな。



「悪いな、呼び出して」



 雨に濡れながら、雨に濡れている男に声をかける。パーさんの漫画がアニメ化した際に知り合った人物。まだ決して有名とは言えないが、それでも10年もやってないのにアニメの主題歌を担当できるまでになったんだ。……本当に敵わないよ、こいつには。



「なんでギター始めたんだよ、大樹」

「……お前に勝ちたかったからだよ」



 どこまで行っても突きつけられる。才能の違いを。そして間違いなく兄弟だということを。

大樹くんの今が気に入らない人も多いかと思いますが、大樹くんに才能があることは事実です。何をしても基本的に上手くいきます。その上で光輝くんが今をどう見つめるのか。ぜひ次回をお待ちください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何をしても大体上手くいく……まあ、いますよね、そんな人。 ただ、その才能を活かすも殺すもその人の器次第なんですよね。 100の才能があっても、器が10しかなければ一時的に上手くいっても90の…
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