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第1章 第3話 答え

 タイムリープものの作品を読むと、だいたい主人公は一度経験した知識をもとに物事を解決している。



 だが実際にタイムリープをしてみると、そんな昔のことを詳しく覚えているはずもない。むしろ活用すべきは、同級生よりも遥かに多い経験。俺の場合は10年間。その経験の全てで、より幸福な未来を掴み取ってみせる。なので。



「ねぇ……やっぱり恥ずかしいよ……」



 告白した翌日。俺は咲と手を繋ぎながら登校していた。



「五十嵐くん……光輝くんと手を繋ぐのが嫌なんじゃないよ……? でも……やっぱり……」

「カップルが手を繋ぐのなんか当然だろ? これくらいできないと逆に周りから笑われるぞ」



 過去の高校生活。俺と咲が付き合っていることは周りには隠し続けてきた。理由は咲の言う通り、恥ずかしいから。どちらもクラスでは目立たない地味な存在。何よりも目立つことを恐れてきた。



 だがそれではいけないのだ。婚約指輪や結婚指輪と同じ。自分には相手がいますよとアピールしなければ狙われるのは当然だ。



 だから俺は気づかなかった。隠していたからこそ、咲と大樹の浮気を察知することができなかった。いくら大樹と言えど、高校生の活動範囲の狭さで誰にも見つからないよう手を出すのは不可能だろう。俺たちは付き合っているとアピールすることで、大樹を牽制する。ただ彼女と身体的接触をしたいとしか思えないガキとは目的が違う。俺は咲と気持ちよくなりたいんじゃない。咲と結婚したいんだ。



「……ねぇ。なんか光輝くん……いつもと違わない?」



 俺と咲は高校3年間ずっと同じクラスだった。そして愛生と五十嵐。4、5月は必ず席が前後になった。お互い人見知りだったが、席が近かったので自然と話すようになり、出会ってから1年後に結ばれることになった。だから違和感があるのだろう。俺の突然の、積極的な行動に。



「髪も切って、身だしなみもしっかりして……いつもと、全然違う……」



 昨日の放課後真っ先にしたことは、髪を切りに美容院に行くことだった。子どもにはわからないが、イケメンは案外簡単に作れる。髪を短く清潔にして、身だしなみさえきちんとしていれば自然とかっこよく見えるものだ。



 イケメンは顔じゃない。気遣いや雰囲気。しっかりとしたコミュニケーションが取れれば、何となく良く見える。女性が言う清潔感とはつまりそういうこと。そして何より胸を張り自分に自信を持つこと。それだけで人の印象というのはだいぶ違う。だがやはり少し、変わりすぎたか。



「ごめん。咲ちゃんと付き合えて舞い上がってるんだ。……恥ずかしいのは俺も一緒だよ。でも咲ちゃんみたいな素敵な人と付き合ってるのに恥ずかしいなんて失礼だと思ったんだよ。咲ちゃんは彼氏が俺だと、恥ずかしい?」

「ううん……すごく、うれしい」



 どうだ。これが社会人5年目の営業トーク。無駄に毎日怒鳴られ謝罪していない。上司や取引先をヨイショするのに比べたら、10歳も下の子どもの機嫌をとることなんて容易い。



 それにしても……思う。どれが本当の咲なのかと。



 初々しく顔を赤く染めながら手汗を滲ませているこの咲と、俺を傷つけながら笑っていたあの咲。どちらも同一人物だが、とても同一人物だとは思えない。



 やはり大樹に毒されていたのだろうか。だとしたら守り続けていれば咲と結婚できるのだろうか。俺は心の底から咲と結婚したいとまだ思っているのか。経験を重ねてきたが、わからないことはたくさんある。咲は俺の敵なのか。いまだに答えは出ていない。何にせよ、だ。



「さっさと潰しておくか……」



 俺の邪魔をし続けてきた弟。大樹が敵であることは間違いない。過去に戻ったところでいまさら仲良くなりたいなんて思っていない。まずは大樹を完膚なきまでに叩き潰す。それは不動の答えだ。

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