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第2章 第2話 合コン

 合コンとは接待である。いかに相手に満足して帰ってもらうか。最終的に喜んでくれればそれでいい。故に勝負は終盤戦。終わり良ければ全て良し、である。



「そうそう。それでさー……」



 同じ学校の3年、2年。男6人女5人で始まった合コンは中盤戦に突入していた。場所は俺たちが働いているファミレス。男は俺と大樹、その他4人。女は翠と忍さん、その他3人。そして大樹はその中の女子2人を両端に置き、楽しそうに話していた。



 翠は一人でスマホを弄り、忍さんは話しかけてくる男たちを適当に流している。俺はというと、困っていた。想定外の事態が起きているからだ。



「ちょっと先輩!」



 思考を回していると、端に座っている俺にバイト中の光が小声で耳打ちしてきた。



「先輩これ合コンでしょ? もっと積極的に女の子に話しかけないと!」

「別に彼女がほしいわけじゃないんだよ」



 自分でもようやく理解したが、俺は迷走していた。なんでギターなんか練習してんだ。だいたいバンドマンなんて大人の女性が一番避ける職業だろう。そんな当たり前のことに気づけないほど、俺は弱くなっていた。



 10年間付き合っていた彼女と、明確に確実に別れる決意をした。そのショックが1ヶ月も続いていた。それはある意味当然ともいえるが、そうもいかなくなってきた。



「忍ちゃんってどんな男がタイプなの? ちょっとこっち来て話そうぜ」

「え~特にないな~」



 大樹は、明らかに忍さんを狙っていた。タイプの違う翠を除けば、この中で一番かわいいのは忍さん。そうなるのも自然の摂理だった。



 大樹に勝つためにあいつを呼んだが、こうなると話が変わって来る。俺が勝つ云々の前に、忍さんを守らなければならない。俺も大樹も関係ない。忍さんを守らないと。



 だから間違えるわけにはいかない。正面からでは勝てないからとギターに逃げるような俺でいるわけにはいかない。俺が無様に負けてでも、忍さんを守り通す。思い出せ。タイムリープした直後の、大樹への怒りを。



「大樹、お前いいのか? 彼女いるだろ」



 ここで初めて、俺はその事実を伝えた。本当はもっと終盤で伝えてクズ野郎だということをイメージ付けて終わらせたかったがそんな余裕はない。



「だから何だよ。別に彼女作る場じゃねぇだろここは。今まで知らなかった子と仲良くなる場所。間違ってるか?」

「別に間違ってはないよ。ただいいのかって確認しただけだ」



 このタイミングで訊ねたのは周りの女子へのイメージ付けだけではない。大樹の調子を確認したかった。女子に囲まれ、あいつは調子に乗っている。まず間違いなく何か言えば言い返してくる。だとしたら問題ない。



「そろそろお開きにしようか。もう時間もいい感じだし」

「あ? まだ早いだろ。今飯食い終わったばっかじゃねぇか」



 この提案にここまで返してくるか。だとしたら想定以上。



「忍ちゃん、この後二次会行かない?」

「え? うんいいけど……」

「おい、ちょっと待てよ」



 俺が忍さんをそう誘うと、大樹が簡単に食いついてきた。まだ大樹は標的の忍さんと親密になっていない。だからこう来ると思っていた。



「そんな奴より俺と二人っきりで行こうぜ。絶対に楽しませてやるよ」



 自信満々の大樹には二つ気づいていないことがある。一つは忍さんは俺の友だちということ。つまり俺の味方だ。



「え、さっきは私たちと一緒に夜まで遊ぶって行ってたじゃん」

「そ、それは……」



 そしてもう一つは、忍さんに食いつけば食いつくほど、他の女子は離れていくということ。二兎を追う者は一兎をも得ず。欲張れば、必ずミスをする。



「もういいや。他のみんなで二次会行こ」



 大樹が自分を狙っていないと気づいた女子は、他の男子と二次会に行く段取りを立てていた。プライドの高い大樹のことだ。そこに入れてくれなんて言えるはずもない。だとしたら捨て身になって忍さんを狙ってくるだろう。



「まぁいいや。とりあえず連絡先交換しようぜ」



 両隣の女子に見切りをつけた大樹がスマホ片手に忍さんへと近づいてくる。それと同時に俺も立ち上がった。



「勝手なことすんなよ」



 忍さんの前に立ちはだかり、俺は言う。



「忍ちゃんは俺がもらう。お前は一人寂しく家に帰ってろ」

「あぁ……!?」



 大樹が俺の胸ぐらを掴み、離した。店内で暴力はご法度。俺とは違って頭の出来がいいこいつはわかっているはずだ。



「チッ」



 小さく舌打ちすると、大樹は千円札だけテーブルに置いてさっさと一人で帰ってしまった。よかった。これでひとまず忍さんを守れた。



「ごめん、忍さん。弟が迷惑をかけた」



 とりあえずの危機を脱し、巻き込んでしまった忍さんに謝罪する。



「ううん……全然……」



 俺の謝罪に手を振る忍さん。そしてその顔は。



「じゃあ……どこいこっか……?」



 照れくさそうに、紅く染まっていた。

あまりにもブクマが減ってしまったので慌ててもう一話投下。この話でショックから立ち直ってもらうために前話で迷走させてしまいましたが不評でしたね。申し訳ありません。大人になっても10年付き合ってきた彼女に振られたらそう簡単に割り切れないでしょという考えからの迷走でした。これからは光輝くんも立ち直るので、安心して見ていってくれると助かります。ハッピーエンドは前提なのでブクマ剥がさないで……凹んじゃいます!

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― 新着の感想 ―
[一言] いやまあ、そりゃこんなんブクマ外されるでしょうよ。 作者さんは、先の展開知ってるから気にしないんでしょうけど、読んでる人間は訳の分からんストレス与えられたらサクサクと切りますよ。
[一言] 割り切れないから迷走する、というのはとてもよくわかるのですが、それと迷走するさまを読者が見て喜ぶかというのはまた別の話だと思いますよ~……。
[一言] 別にハッピーじゃなくても大丈夫です。 この先ハッピーなことが起こっても、なんだろう…幸せになる未来が見えないんですよね…20年以上生きてて馬鹿じゃないのかと
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