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プロローグ
昔から、他人の顔が見えなかった。みんな黒いクレヨンで塗りつぶされていて、幼かった自分はそれが怖くて、他人の顔をまともに見られなかった。やがて、うつむいて話す癖がついてしまった。そのたびに、母親に叱られた。保育園の、小学校の先生にたしなめられた。
「人の目を見て話さないとだめよ。」
何故そうしなければいけないのか、全く理解できなかった。だがそれを伝えたところで意味のある答えは得られない。ただうつむいて、小さくうなずくしかできなかった。
そんな無力で浅学な自分が情けなくて、嫌いだ。
続く