お勉強です
朝、6時に起床。
服を着替え点呼を済ませると、部屋などの清掃から始まります。それを終えると、食事。一息ついて制服に着替えるといよいよ、始まりました。
あたしたちはCとDグループは講義室に行き、授業です。二クラスに分かれ授業を受けます。
退屈で寝そう・・・と思いきやそうはいかなかった。
進むのが早い上に細かい、多い。しかも、テストあり。
平均以上でなければ、補習とか。必死になる。
授業内容は・・・
巫儡について。
巫儡とは、人としての思考能力が無くなり本能、欲望の塊で動く者のこと人の事。
初期症状はあまり分からず、中期になると、行動異常、言動異常が見受けられるようになる。後期には、人の身体から、木のような物へと変化し、いくつもの触手が伸びる。
それは、全てのものを飲み込み取り込んでゆく。
成長するに従い、人としての意識もなくなる。
成長し続けると、花をつけやがてそれは種ななると言う。
その種が落ちると再び巫儡が生まれる。巫儡が落ちた地は浄化されるまで死の地へとなると言われている。
巫儡を広めるものを巫儡師と言う。
彼らが何者でどこに何人いるのかは明らかにされていない。
第一部隊は知っているらしいが、混乱を避けるため知らされていないそうだ。
それを聞いて、不信感を感じたが、余計な犠牲を出さないためのことだと言い切られてしまった。
おかしい。
絶対に何か隠している。
反論も意見もせずに真剣に聞く。
彼らは心が弱っている者や、貪欲な者、好奇心が強い者、心に闇を抱えているような者を狙って、巫儡になる玉を渡すらしい。
らしいと言うのは直接見る事がないからだそうだ。
それにしても、聞いて胸の辺りがモヤモヤした。
心が弱っている者を狙うなんて、腹が立つ。
悔しかった。
そのせいで、悲しむ人が何人いると思っているのか?
苦しむ人がいることを彼らは知っているのか?
憎い。
彼らが憎い。
巫儡が、憎い。
全てを教えて欲しい。
あたしは、そのためにここに来たのだから。
「芽依ちゃん大丈夫?」
「ち、か?」
「手が痛そう」
見ると、いつのまにか強く握り締めていたのか、手のひらに爪痕がクッキリとついていた。少し血が滲んでいる。
「ありがとう、大丈夫だよ」
話は続く。
一昔前は、巫儡になった者は、初期段階であろうと、殺していた。一度なると助かる見込みが無かったのだ。成長を抑えることはできないのだから。
仕方のない事とされていた。
しかし、今から50年ほど前、新薬が開発された、薬ができたのだ。後遺症も残らないもの。
だか、それが効くのは中期まで・・・それも、本人の意識がある人までしか効かないのだ。
なぜ、意識のある人までなのか?
「先生、なぜ意識のある人までですか?」
質問・・・。
同じ考えをする人がいるのだと見てみると、友達の封筒の開閉を庇った、畑山 初音だった。
真っ直ぐに伸ばす腕は正義感を漂わせていた。
講義を受け持ってくれた、女先生、元第二部隊で活躍していた世良さんは冷静に答えた。
「善悪判断できるからです」
「馬鹿げてます。善悪の判断できるのに巫儡になって、人を殺しているのにその人は生きれると言うのは間違っています」
「畑山さん・・・、そうね。間違ってるかもしれないわ」
「では、なんで?」
熱く言い返す彼女に先生は態度を崩さなかった。
質問がくるのがわかったいたのか、淀みない答えをする。
「薬は絶対に効くわけでもないの。それこそ、悪が正しいと思っている者には効かない。でも、薬が効くと言うことは、その人の罪悪感があったから。まさか、人に戻ったからまともに生きていける訳ではないわ」
「それでも彼らは生きています!!残された者はどうすればいいのですか!?」
ああっ、彼女も被害者なんだ・・・。
苦しんでる。
苦しんでいるから、護花鈴隊に入ったんだ。
あたしは唇を噛み締めた。
血の味が広がる。
彼女とはきっと志望理由も、生い立ちも、生き様も違うだろう。だけど抱えている何か知らない思いはきっと同じ。
傷を舐め合うことはないだろう。
あたしたちはいつか、この思いを昇華する事ができるのか・・・。
千香が震える手をにぎってくれた。
先生は言った。
「殺した者も残された者も、生きていくしかないのです」
生きていくしかない。
重い。
すごく重かった。
そう、生きていくしか残されて、いないのだ・・・。