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花散る音、空音の鈴  作者: 彩華
一章、入隊体験
6/8

お勉強です

 朝、6時に起床。

 服を着替え点呼を済ませると、部屋などの清掃から始まります。それを終えると、食事。一息ついて制服に着替えるといよいよ、始まりました。


 あたしたちはCとDグループは講義室に行き、授業です。二クラスに分かれ授業を受けます。

 退屈で寝そう・・・と思いきやそうはいかなかった。

 進むのが早い上に細かい、多い。しかも、テストあり。

 平均以上でなければ、補習とか。必死になる。


 授業内容は・・・


 巫儡(ふぐつ)について。



 巫儡とは、人としての思考能力が無くなり本能、欲望の塊で動く者のこと人の事。

 初期症状はあまり分からず、中期になると、行動異常、言動異常が見受けられるようになる。後期には、人の身体から、木のような物へと変化し、いくつもの触手が伸びる。

 それは、全てのものを飲み込み取り込んでゆく。

 成長するに従い、人としての意識もなくなる。

 成長し続けると、花をつけやがてそれは種ななると言う。

 その種が落ちると再び巫儡が生まれる。巫儡が落ちた地は浄化されるまで死の地へとなると言われている。


 巫儡を広めるものを巫儡師(ふぐつし)と言う。

 彼らが何者でどこに何人いるのかは明らかにされていない。

 第一部隊は知っているらしいが、混乱を避けるため知らされていないそうだ。


 それを聞いて、不信感を感じたが、余計な犠牲を出さないためのことだと言い切られてしまった。

 おかしい。

 絶対に何か隠している。

 反論も意見もせずに真剣に聞く。


 彼らは心が弱っている者や、貪欲な者、好奇心が強い者、心に闇を抱えているような者を狙って、巫儡になる玉を渡すらしい。

 らしいと言うのは直接見る事がないからだそうだ。



 それにしても、聞いて胸の辺りがモヤモヤした。

 心が弱っている者を狙うなんて、腹が立つ。

 悔しかった。

 そのせいで、悲しむ人が何人いると思っているのか?

 苦しむ人がいることを彼らは知っているのか?

 憎い。

 彼らが憎い。

 巫儡が、憎い。

 全てを教えて欲しい。

 あたしは、そのためにここに来たのだから。


「芽依ちゃん大丈夫?」

「ち、か?」

「手が痛そう」


 見ると、いつのまにか強く握り締めていたのか、手のひらに爪痕がクッキリとついていた。少し血が滲んでいる。


「ありがとう、大丈夫だよ」



 話は続く。


 一昔前は、巫儡になった者は、初期段階であろうと、殺していた。一度なると助かる見込みが無かったのだ。成長を抑えることはできないのだから。

 仕方のない事とされていた。

 しかし、今から50年ほど前、新薬が開発された、薬ができたのだ。後遺症も残らないもの。

 だか、それが効くのは中期まで・・・それも、本人の意識がある人までしか効かないのだ。


 なぜ、意識のある人までなのか?


「先生、なぜ意識のある人までですか?」


 質問・・・。

 同じ考えをする人がいるのだと見てみると、友達の封筒の開閉を庇った、畑山 初音だった。

 真っ直ぐに伸ばす腕は正義感を漂わせていた。


 講義を受け持ってくれた、女先生、元第二部隊で活躍していた世良さんは冷静に答えた。


「善悪判断できるからです」

「馬鹿げてます。善悪の判断できるのに巫儡になって、人を殺しているのにその人は生きれると言うのは間違っています」

「畑山さん・・・、そうね。間違ってるかもしれないわ」

「では、なんで?」


 熱く言い返す彼女に先生は態度を崩さなかった。

 質問がくるのがわかったいたのか、淀みない答えをする。


「薬は絶対に効くわけでもないの。それこそ、悪が正しいと思っている者には効かない。でも、薬が効くと言うことは、その人の罪悪感があったから。まさか、人に戻ったからまともに生きていける訳ではないわ」

「それでも彼らは生きています!!残された者はどうすればいいのですか!?」


 ああっ、彼女も被害者なんだ・・・。

 苦しんでる。

 苦しんでいるから、護花鈴隊に入ったんだ。

 あたしは唇を噛み締めた。

 血の味が広がる。

 彼女とはきっと志望理由も、生い立ちも、生き様も違うだろう。だけど抱えている何か知らない思いはきっと同じ。

 傷を舐め合うことはないだろう。


 あたしたちはいつか、この思いを昇華する事ができるのか・・・。


 千香が震える手をにぎってくれた。



 先生は言った。


「殺した者も残された者も、生きていくしかないのです」



 生きていくしかない。

 重い。

 すごく重かった。


 そう、生きていくしか残されて、いないのだ・・・。



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