司令官
広場には既に沢山の人が集まっていた。
服装もさまざま。
着物姿に、書生姿、ハイカラなワンピースに、学生服姿と揃っていた。
自分らの田舎の制服姿が恥ずかしく思える。
三人で小さくなっていた。
そんな折に聞こえてくる声。
「何よ、コレ。真っ白な紙しか入ってないじゃない?!」
封筒開けたの?
開けるなって・・・。
何人か開けてる?
気になる・・・けど・・・。
二人に目配せる。二人も気にはなっているようではあった。
でも受付の軍人は言ったのだ。
「封筒はまだ、見ないでください。あとで、説明をしますので、よろしくお願いします。
なお、これより皆様は護花鈴隊の一員になります。規律、規定違反等ありましたら、即刻除隊になりますので、お気をつけください」と。
ここに来るまでにもなんらかの仕掛けがあったのだ。
素直に従ったほうがいい。
見たい気持ちを押し込め、時間が来るのを待った。
10時。
丁度になった時、笛の音が鳴り響いた。
無造作にいた軍人たちが一斉に集まり、列をなした。
「静粛に。これより司令官の話がある」
重い声が辺りに響いた。
誰もがその場で立ち尽くすようにとまり、その時をまった。
壇上に一人の女性がカツカツと上がってくる。
紺色の軍服に、制帽。薄紅色の護花鈴の紋様が入っている。
制服は金の縁取りがされ、胸には勲章をいくつかつけ、腰元にはサーベルが吊られていた。
制帽から見える肩までの髪。
凛とした眼差しに赤い口元は不敵な笑みを浮かべていた。
綺麗なヒトだなぁと思った。
司令官って、女の人?
まだ、若い。あたしたちよりは年上だろうが、せいぜい30代だろうか。
司令官と言うことは、もとは第一部隊だったのか?
誰かが嘘だろと呟いているのが聞こえた。
司令官はニヒルな笑いを浮かべた。
ゾクっとする。
今までの人生の重みがまるで違う・・・。
「よく、ここまで来てくれた。感謝する。だが、人を見た目だけで判断するのはよくないな。
ここは実力主義だ。実力があるものは上へゆく事ができる。無いものは、死ぬ。
わたしは君たちに死んでは欲しくない。だからこそ厳しくする。
そうだった、自己紹介がまだだったな。
わたしは辰巳 朔夜だ。名前の通り、この地を治める辰巳一族の傍系にあたる。
実力主義だと言ったのにと、思うやつもいるだろうが、ここはそう甘くない所ではない。
それをこれから実体験してもらう。
知っての通り、護花鈴には五つの部隊がある。第一部隊から第五部隊までだ。
役割などが全く違う。君たちはまだ自分に合う部隊はわからない。そのためそれぞれ一ヶ月・・・四週間、入団体験してもらう。それから部隊に配属となる。
早いものはその場で決まる事もあるし、全てを回ってと言う事もある。能力しだいだ。
だが、中には過酷だと言うものもいる。
無理はするな。
だが、頑張ってくれ。
君たちの力が必要だからだ。
わたしの話はこれまでだ。
詳しいことは次のものが説明する。 以上」
その言葉に周りにいた隊員たちが、ザッと姿勢を正し、敬礼したのだった。
圧巻というのだろう。
一瞬、雰囲気にのまれたのだった。
司令官はあたしたちを一瞥したのち去っていった。
自分もあそこまで行けるのだろうか?
かっこいい。
智紀も千香も興奮しているのがわかった。