行き道から始まってます
おばあちゃんの謎の言葉は頭の中をリフレインし一切寝ることも出来ず、ただ幼なじみの寝ている顔を羨ましく眺めていた。
翌朝、帝都に着いた。
汽車を降り、街を見上げる。高い建物に狭い空。そして、早朝というのに人、ひと、ヒト。溢れんばかりの色。誘惑をそそる店。
「すっげぇ」
智紀も、千香も口をポカンと開けて見ている。
きっと、あたしも・・・。
色々見たいな・・・。
三人ウズウズしていると護花鈴隊の制服が目に入った。
臙脂色の軍服に制帽。桜と鈴の紋章がカッコイイ。
彼らも三人組。
街中を巡廻しているのだろう。
彼らと目が合ったと、思うと近づいて来た。
「君ら、護花鈴隊の入隊の子?」
「「「はい」」」
「やっぱり」
彼らはなぜか嬉しそうに言った。
「やっぱり正解だ」
「大当たり」
「一組めだな」
三人だけで会話する。
「あの〜?」
「ごめん、ごめん」
「君たち、まだ時間があるから、お上りさんしようとしたろ」
「えっ、あ、はい」
正直に頷く。
だって、まだ時間はあるし。気になるんだもん。
「そんなことしてると間に合わないよ」
「えっ、でも・・・時間ありますよ」
「と、思うだろ。でも、受付済まして置かないと。どれだけの人数が入隊すると思う?受付混むんだよ」
「受付して中に入る時間だよ。並んでる時に時間になったら、即終わり」
さあっと血が引いた。
つまりギリギリではいけないってこと?
行って、受付終えての時間なの?
確かに10時までに受付をすますって。今は7時過ぎ。
それでも、やばいってこと?
「まだ7時ですが、それでもですか?」
「7時でも。それに既に試験は始まってる」
「護花鈴隊の術にはまってるんだよ」
「試験?」
「ちょっと違うけど。こんな朝早くに人がたくさんいるわけないじゃないか」
「お店も開く時間じゃないし」
いわれてみれば、そうだ。
朝の7時に人混みなんてない。田舎だって・・・。
やられたっ。
「護花鈴隊は遊び場じゃない。遊びに来たなら行くべきところじゃない」
「・・・」
「・・・なら、あなた方はどうして教えてくれるんですか?」
「運・・・かな?」
「運?」
「僕らに会えたのは運がよかったから」
「そうそう、運も護花鈴に必要だから」
「僕らもそうやって、なったんだ」
彼らはにやっと笑った。
きっと、彼らも同じことがあったのだろう。
「この数ヶ月は大変だよ。僕らは君たちが挫けない事を祈るよ」
彼らはそれだけ言って立ち去った。
三人仲良く。
あたしたちもいずれああゆう風になれるかな・・・。
いえ、あたしは上を目指す。
あの人の元に行く。
護花鈴隊本部へと歩いてゆく。
長い赤いレンガの塀が続く。塀の向こうに建物の屋根が見えるのに入り口は見当たらない。
「長くね?」
「うん、どこまで続いてんだろ?」
行けども行けども塀。
流石におかしいよね。
絶対におかしい・・・。
まさか・・・。
「落ち着こう!さっきのこともあるし、変な術にでもかかってるかも」
そうだ。ありえる。
三人手を取り合い、目を閉じて深呼吸をする。
吸って、
吐いてー
吸って、
吐いて・・・
目を開くと・・・目の前に門があった。
周りを見ると、同じように何人もの人が「着かない、まだ〜?」と言っている。
側から見るとこうだったのか・・・。
これは恥ずかしい・・・。
苦笑いしながら門に入って行った。
それなりに受付には人が並んでいた。
自分の番になって、三人揃ってたつ。
受付の隊員が笑いながら言ったのだった。
「お疲れ様です。無事に辿り着けた事、おめでとうごさいます。
こちらでお名前の確認をお願いします。
制服等は簡易宿泊施設での受け取りになります。その際詳しい説明は致しますので質問は受け付けません。
10時より司令官の話、今後の予定などの話がありますので、あちらの広場でしばらくお待ちください。
なお、今お配りしています、封筒はまだ、見ないでください。あとで、説明をしますので、よろしくお願いします。
なお、これより皆様は護花鈴隊の一員になります。規律、規定違反等ありましたら、即刻除隊になりますので、お気をつけください」
さらりと怖い事・・・いいましたね・・・。
口元が引き攣りながらお礼をいうと、
あたしたちは広場へと向かった。
時間は既に9時15分だった。