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老人の異世界散歩  作者: 浦見 比呂
現人神の死
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現人神の死

「ふぅ・・・ちょっと食いすぎたわ。真のやつが張り合ってきたのがすべて悪い!学校から帰ってきたらおちょくってやろう!」


さてはて今日は何しようかと道場で胡坐を掻いて腿の上に木刀を置いて瞑想してそうな格好で考える。

(今日は道場休みだし、源蔵は寄合でいないし、佐恵子さんと彩ちゃんは買い物行っちゃったし、修は普通に仕事、真は学校か・・・暇だしゲームでもしようかな?)


(しかし、最近本当に体がしんどくなってきたな、そろそろ道場閉めるべきかねぇ・・・。生涯現役を掲げてこの年までやってきたが隠居ちゅうもんをやってみても良いかもな。つっても俺の世代の奴らもうほとんどおらんし、遊び相手いねぇんだよな。戦争時の戦友共で残ってるのも二人だしなぁ。自分も大概だと思うがあいつ等も妖怪だよな。久しぶりに連絡でもいれて温泉でも行こうかね。いいかもな・・・)


「うっし!決めた!あいつ等誘って温泉行こう!」

俺は行動を決めて電話をしようと立ち上がりかけて片膝立ち状態になり、


「なっ!」

(体が動かねぇ!息もできねぇ!なにが起こってんだ!がっ!)


心臓が止まりやがった!こんな急に死って来るものなのか?!


これが俺の最後か・・・まぁ大往生だろう、悔いはないが温泉行きたかったな・・・


意識がなくなっていく中、走馬灯で自分の人生を振り返り改めて思った・・・


「楽しかった」


満足に息もできない状態でもこの言葉だけは吐き出しておきたかった。


道場の中に掠れた声の小さい呟きが微かに響いた。


そこで意識は真っ黒に落ちていった。


もう起きることのないその身体の死に顔は微かな笑みを浮かべ、とても良い夢を見ている寝顔のようだった。



同時刻


着物を纏い整えられた庭の景色を優雅に見ながら朝食後の休憩をしている白髪の老婆もまた亡くなった。


熊の毛皮も纏い一昔前のマタギの様な格好をした白髪の老人は山小屋で朝食の準備をしているところでまた亡くなった。


なぜか皆同時刻、同じ心臓麻痺という共通の死因で亡くなった。


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