8:さらば二分の一返し
スキルを使用した俺の手から放たれるのは、灰色の波動。
そう、さっき敵が使ってきたスキルを使い返したんだ。ボス級のモンスターの使うスキルは、大抵ランクが高いものだった。だからこそ、強いスキルを求めてボスモンスターと戦っていたんだが……
果たして上手くいくのか?いってくれないと困る。
「……行動ヲ中断シマス……」
と、敵は掲げていた剣を下ろし、動きを止める。
「よしっ!」
思った通りに効いてくれた!思わずガッツポーズをしてしまう。
「おお……やるじゃん。」「なるほど……」
「すごいです!シンジさん! 」
皆が口々に歓声を上げる。
さて、これでアイツはスキルを使えなくなったはず。あと気を付けるべきは剣での攻撃だけになった。
「よし、これで有利になった!一気に決めるぞ!」
そう言って駆け出す俺たち目掛けて、敵は剣を大きく振りかぶる。
「サポートします! [エナジー・バリア]っ……。Cランクだと、割と反動大きいですね……」
オームがそう唱えると、俺たちの目の前に緑色の半透明のバリアが現れる。
[エナジー・バリア]。自らの体力と引き換えに、攻撃を受け止めるバリアを展開するスキルだ。ランクを上げれば使う体力は少なくなり、バリアの性能も上がるが、やはりCランクだと使いずらい。
既に敵は剣を振りはじめており、そのままバリアは砕け散ってしまった。
「無理するな![リバース・ハンド]! 」
そう叫ぶと、身体がほんの少しの脱力感に襲われたあと、目の前にさっきと同じバリアが現れた。
バリアの性能は半分だろうが、使う体力も半分。どうせそう何回も耐えられるものでもなさそうだし、こっちの方が勝手がいい。
「そういうことも出来るんですか!」
それから10分ほどたっただろうか、結局、終始有利のまま勝つことが出来た。
「大ダメージ……戦闘ヲ終了シマス。オ疲レサマデシタ……」
「よっしゃあ!」
敵は動きを止め、その姿を4つの青い石へと変えていく。
「今回はお前に助けられっぱなしだったな。……次こそ俺の本気を見せてやる!」
キンは意気込み、
「本当、スキルの活かし方が上手いですね……。経歴詐称とかしてません?」
オームには少し疑われた。
……冗談で言っているのだろうが、あながち間違ってもいないので少しヒヤッとするな……
「さあ、ランクアップしましょう!」
エルの呼びかけに、俺は目の前の石に意識を戻す。
「ああ!」
俺は石を手に取る。それと同時に、頭の中に声が流れ込んできた。
ーーランクアップストーンCの使用を確認。スキル[リバース・ハンド]をBランクにランクアップしますか?--
ああ。もちろん。と、俺はそう念じる。
--確認しました。ランクアップを行います。--
「うわっ!?」
俺の身体から灰色のメダルが出てきたかと思うと、目の前でそれは青く光り、Bランクの青いメダルへと姿を変える
--[リバース・ハンドB]効果、直前に受けたスキルを効果を二倍にして使用する。--
そんな説明が流れていったかと思うと、メダルは俺の身体の中へ戻っていった。
2倍。今までやられても半分でしか返せなかったと思うと、とんでもない進歩である。
「これなら……これなら、奪われたスキルを取り返せる!」
「さて、お前達。これから、今夜の作戦について説明する。」
スキルの強化から数日。あっという間に予告された日は来た。
「場所は本部の中央ホール。入り口はすべて閉鎖する。まずはシンジ。お前には悪魔の血を所持してもらい、怪盗に盗まれたらスキルで取り返してもらう。」
「はい!」
「失敗は許されない。よく注意しろ。」
町長はエルたちの方を向く。
「他三名はシンジの周りについてもらい、怪盗への攻撃、並びに捕縛を行ってもらう。いいな?」
「はい!!!」
「準備は3時間後より開始する。各自、準備を済ませておけ。」
俺は今、大分緊張している。怪盗との因縁の対決がすぐそこまで迫っているからだ。
絶対に負けられない。俺はそう誓うのだった。
こんにちは。秋継梓です。
シンジ、遂に大怪盗との因縁の対決です。果たして彼は悪魔の血を守り、スキルを盗り返すことができるのでしょうか。乞うご期待です。
あと、もし宜しければ評価していただければ嬉しいです……
ここ数日間全くついてなくて……