6:いざランクアップ
「お前のスキルは今のままでは心許ない。お前が大怪盗と繋がりがあることを考え、今までは行わないことにしていたが……お前の素行を見て、こう判断した。」
と、町長は説明する。
確かに、町長の説明はそれっぽいが……一つだけ、よく分からないことがある。
「り、リバース・ハンドのランクを上げるってどういうことですか!? 」
「どういうって……そのままの意味だが? 」
俺の知る限り、スキルはランクアップできないものであり、ランクの高いスキルが欲しければ強いモンスターを何匹も倒してやっと手に入れるものだが……
また知らない概念でぶん殴られた。数年間引退したことによる差はとても大きいみたいだ。
「なるほど、これについても知らない訳か……説明してやれ」
と、町長はラーイ兄弟を指す。
「分かりました、説明しましょう。数年前、特殊なカギが冒険者協会によって開発されたことでスキルのランクアップは可能となりました。」
「そのカギを空中に掲げて捻ると、よく分からんところに飛ばされて……でもって、そこに出てくる強いモンスターを倒せば、スキルのランクを上げられる石が手に入るってワケ。」
なるほど。仕組みがいかにもそれっぽい。
「そういうことだ。そしてこれが、そのカギだ。」
そう言って、町長は青いカギを取り出した。
「これはCランクのスキルをBランクに上げるためのものだ。冒険者協会が配っている物だから我々一般人の入手機会はあまりないが……とある冒険者からの寄贈があった。」
俺はそのカギを手に取る。宝石のようにも見えるそのカギは、これといった特別な装飾もなく、まさにステレオタイプなカギ、という感じだ。
「そうだ、オームとキン、そしてエル。これを持っていけ。」
と、町長は3枚のスキルメダルを取り出す。どれも灰色、つまりCランクだ。
「ウチの備品だ。ランクアップのための石は1人1つずつ手に入ると聞く。お前たちは怪盗に1つずつスキルを盗られている訳だし、ついでにランクを上げておいてくれ。」
「は、はあ……」「おう、分かったよ。」
「わ、分かりました! 」
そういうことか。抜け目ない。
「これで伝えることはすべてだ。準備ができているようなら早速カギを使ってくれ。……ああ、そうだ。」
何かを思い出したように、町長はこちらを見る。
「お前は信用されてはいる。だが100パーセントというわけではない。くれぐれも、裏切りなんて起こすなよ?……まあ、そんな時の為にラーイ兄弟を付けている訳だがな。」
……流石にもうちょっと信用して欲しかった。なんだか居心地が悪いし。
「……じゃあ、使うぞ! 」
俺はカギを掲げて、そして扉を開くかのように捻った。
そうすると、青い光の粒が俺たちの体から出てきて、目の前が青くなっていった。
「うわっ!? 」
画面の向こうでは幾度となくこういったものは見てきたが、いざ体感すると驚いてしまう。
「……着いた」
目を開けると目の前には大きな扉。この先に、倒すべきモンスターがいるのだろう。
「皆、準備はいいか? 」
「大丈夫ですよ」「もちろん。」
「はい!」
一体、どんな奴が現れるんだろう。こんな状況で、よく分からないのに強敵に挑むのは少し緊張するが、同時にワクワクしている。
「よし、行くぞ!」
そうして、4人で扉の向こうへ駆け出した。
こんにちは。秋継梓です。
昨日は忙しく更新ができませんでした。書きだめておくのがいかに大事か、よく分かります。
今後も毎日更新を目指しますので、どうか読んでいただければと思います。
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