5:早いものですね
「んんぁ……」
俺は薄っすらと目を開ける。
「朝か……」
目に飛び込んだ光でそう気づく。
俺は起き上がり、伸びをした。
「いつもと変わらない朝、かあ……」
この世界に来てから早くも2週間。
毎日任務を受け、時々不届き者を捉え、休みの日は休む。
戸惑うこともあったが、なんだかんだこの世界に適応してしまっている。
「なんか……元の世界に戻る必要、無いかな……」
俺が逃げないようにするためなのか、窓やドアを中から開けられないこの部屋。
最初は「牢屋みたいだ」とも思っていたが、気が付けば慣れてしまっていた。
「さて……着替えるか……」
「シンジさーん!おはようございまーす!」
丁度着替え終わったところで、ドアの向こうからエルの声が聞こえる。
俺は自分でこの部屋から出られないので、毎朝エルが迎えに来るんだ。
「ああ、開けて大丈夫だ!」
俺は返事をした。
「おや、シンジさん。お早う御座います」
「おはよーう。」
寮の食堂。俺達は二人の男に声をかけられた。
どちらも長身で、顔も体格もよく似ている。
「おはよう、ラーイ兄弟。」「お、おはようございます!」
2週間もあれば、顔見知りは自然と出来ていた。
ラーイ兄弟。双子の兄弟で、この自警団でもかなりの実力派らしい。
髪の黄色い方が兄のオーム・ラーイ。眼鏡をかけており、知的な印象を受ける。
赤い方は弟のキン・ラーイ。兄とは打って変わって、どこか子供っぽい印象を受ける。
俺は経歴が経歴なため、彼らに興味を持たれているようだ。
「ああそうだ、シンジさんとエルさん。町長から、一緒に来るようにと言われていましてね。この後大丈夫ですか?」
「大丈夫だけれど……一体、何が?」
「さあな、俺たちも聞いてなくてな」
少し急いで朝食を摂る俺達であった。
「シンジ。お前を呼んだのは他でもない、大怪盗についてのことだ。」
町長がそう明かした途端、場の空気が変わる。
「昨日、こんなものが我々に届いた」
そう言うと、町長は一枚の真っ黒な封筒を取り出した。
俺はそれを受け取り、中身を確認する。
「ええと……一週間後、自警団金庫に眠る悪魔の血を頂戴しに参る……」
俺は周囲に聞こえるように、文章を読み上げた。
「悪魔の血……」
「何でそんなもん盗りに来るんだ……?」
ラーイ兄弟が同時に反応する。
「そ、それって、また怪盗が来るってことですか!?」
ワンテンポ遅れて、エルも反応した。
「ああ。その為、これからの方針について説明する。」
町長はそう言い俺の方を向いた。
「シンジ。」
「は、はい!」
「まずはお前のスキルを、Bランクに上げてもらう。」
「はい!……はい?」
こんにちは。初めて小説に評価が付いて嬉しくなっている、秋継梓です。本当にありがとうございます。スマホだとこの小説は読みにくいことに気が付いたので、少し書き方を工夫してみました。いかがでしょうか?良ければ感想で教えて下さい。お待ちしています。評価でも嬉しいです。