表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

4:酒場あるある

「これで20匹討伐完了……で合ってる?」

「はい、これで20匹です!」


初戦こそ苦労したものの、一度コツを掴んでしまえばその後は楽勝で、気が付けば20匹、狩り終えていた。かかったのは3時間とかそのくらい。まあ、本部を出たのが昼過ぎなんだから、量を少なく設定してくれたのだろう。


「あいつらが落としたのは、竜のツメ3枚と、320ゴールド。スキルメダルは無しか……」


通貨の単位はゲームの時と変わらないようだった。どうやら任務の中で獲得したゴールドは好きにしていいようなので、2人で割って160ゴールド。ぶっちゃけ、取るに足らない金額である。頑張れば1時間で5000ゴールドは稼げた。


「ツメを売れば、結構なお小遣いにはなりますね!」

「売るってことは……冒険者バザーか?」


冒険者バザー。プレイヤー同士で武器や防具、素材にスキルメダルなど、様々なものをゴールドで売り買いできるシステムだ。この世界でもあるのか。ということは、もしや他にも俺みたいなやつが……?


「そうですね。商業地区に向かいましょう!」


そう言う彼女に手を引っ張られ、俺の思考は中断されるのであった。

というかエル、やけに上機嫌だな……?

竜のツメなんて、そんな高く売れる物でも無かったと思うが。3個あっても、せいぜい1000ゴールドくらい。プレイ当時、「5万ゴールドあれば田舎で4人家族がひと月暮らせる」なんてNPCが話していたが、その価値観で行ってもそんな高い金額でも無いような……


「竜のツメ3つね。えーっと……他の出品を参考に、7500ゴールドで出品するけど、いいかね?」

「はい!それでお願いします!」

「7500ゴールド!?」


待て、1個2500ゴールドってことか!?


「どうかしましたか?」

「いや、思っていたよりも高く売れるんだなーって……」


結構な金額だ。ちゃんと装備やスキルを整えて狩りに行けば、数万は余裕で稼げるぞ……?


「何年か前から、冒険者に関わる物の値段が少しずつ上がっていってるみたいなんですよね。それ以外の人には影響は少ないですけども……」

「へ、へえ」


インフレが知らないうちに進んでいたのか……


「あとあれだね。竜のツメは最近よく買われるみたいだね。なんでも鎧の材料にいるんだとか。……おっ、もう売れたみたいだね。まいどあり!」

「早っ!」


俺達は手数料を引かれた金額を受け取り、本部へと歩き出した。



「あれ?なんだこの匂い?」


通りを行く中で、俺の鼻は気になる匂いを捉えた。


「匂い……ですか?」

「ああ、焼けた肉みたいな……」

「焼けた肉……あっ、あそこですかね?」


エルがそう言って指差した先には、酒場があった。


「酒場……?」


酒場。一緒に冒険する他のプレイヤーを募集したり、NPC冒険者を雇ったりするための場所だっ……いや、酒場って飲み食いする場所か。完全にゲームの感覚になっていた。肉の匂いがするのも当たり前だ。

そういえば、この世界に来てから食事を取っていなかった。気が付けば、割と空腹になっている。


「もう任務も終わりましたし……ちょっと早い晩ご飯にしますか?ほら、丁度お金も入ったことですし!」

「俺は別にいいんだが……大丈夫なのか?治安の悪化とかあるし、そもそも今、制服だろ?」

「大丈夫ですよ!むしろ制服のほうが変な人が近づいてこないですし……それに、ほら!」


見れば、俺と同じような制服を着た男2人組が、丁度店から出てきている。


「だったらまあ……大丈夫か!」



「おう、ネェちゃーん。俺と飲まねえかい?」


ダメでした。

席に着き、頼んだ料理が届き、やれまだ熱そうなのに大丈夫かだの、私熱いもの平気なんですよだの交わしていたらこれである。大分運が悪い。


「あのー、私、自警団の者ですよ?あんまりそういうことしていると、あなたにとって良くないと思いますよ……?」

「なあに、カタいこと言うなって!」


声を掛けているのは太ったおっさん。大分酒に飲まれているようで、顔がとても赤い。


「それ以上彼女に構う様なら、タダではおけないが?」


俺は席を立ち、割って入る。


「ああん?何だよお前、邪魔しやがって!」


そう言うやいなや、相手はいきなり俺を殴ってきた。


「なっ!?」


俺はすんでのところで交わすことができたが、相手はよろめき倒れて、他の席を倒してしまっている。マズイ。被害が増える前に、なんとか止めなくては。しかしどうする、体格差があるから、押さえつけられる自信は無いし、こんな状況じゃスキルにも頼れない。


「お前っ、避けやがって……!今度こそ!」


相手は既に起き上がりかけている。……そういえば。


「エル!麻酔銃、持ってるって言ってたよな!貸してくれ!」

「は、はい!」


エルは慌てて懐から何かを取り出し、俺の方に投げる。


「なるほど、こういうやつか……」


渡されたのは、銃のような形をした注射器だった。

前を見ると、おっさんは助走をつけて向かってきている。それに合わせて腰を下げ……


「はあっ!」

「うっ!」


相手の拳をかわしつつ、腹に注射を突きつけた。


それから、応援が呼ばれ、倒れたおっさんを連れていき、詳しい状況を説明して……とやっていたら、あっという間に外は暗くなっていた。


「なんか疲れたな……結局、晩ご飯は簡単に済ませることになっちゃったし……」

「はい……」


「じゃあ、また明日、ですね。おやすみなさい。」

「ああ、おやすみ……」


エルによって部屋に入れられた俺は、着替えるのももどかしく、そのまま眠りにつくのであった……


こんにちは。秋継 梓です。

早いものでもう連載4日目。平日でも書き続けるのは大変ですが、何とかやっております。明日は大丈夫かな……と、少し心配にはなっておりますが。

あなたのくれた評価が、書くモチベーションへと繋がります。いわばお給料のようなものです。何卒……何卒よろしくお願いします……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ