レスタークス派②
「・・・ラングも少しは頭を使いなよ。あれだけ戦闘の指揮ができるんだからちゃんと考えれは戦略だってわかるだろ。僕と一緒に先生に教わっているんだし」
「俺はそんなめんどくさいことは知らん。レックスの敵は誰であろうとこの剣で切り伏せるだけだ!」
「君は強いよ。だけどさすがに近衛騎士団だけでリサリア王国全軍と戦争はできないだろう?」
「リサリア王国全軍が殿下の敵に回るっていうのか?そんな事があり得るわけないだろう!」
「だから、そうならないように今話し合っているんじゃないか!」
もともと性格的に水と油なので次第に興奮してくる二人だ。
「あの・・・お二人とも落ち着いて・・・」
シーファがおろおろしながら声をかけるが、すっかり熱くなってしまっているラングとジュリアスには全く届かない。
「あの・・・お茶でも飲んで・・・」
「いらないよ!」「いらねえよ!」
ガッッシャーン!
ティーセットを勢いよく床に投げ捨てたのはシーファだ。
「いま、お二人が争ってどうするんです!」
粉々砕けたカップと皿とシーファの顔(鬼の形相である)を見て、
『だって、こいつが・・・』
ラングたちは声をそろえて何かを言いかけるが、
「言い訳しない!と・に・か・く、私たちは今できることをしましょう。ラング様は話し合いが終わったらザムザ将軍の真意を探ってくること。ジュリアス様はシャルル王子側の動向を探ってくること。いいですね!」
般若のような顔を近づけてくるシーファの剣幕に押されて二人ともコクコクとうなづいている。
その様子を満足そうに見ると、シーファは何事もなかったかのようにいつのも可愛らしい顔に戻ると、丁寧な口調で続ける。
「それで、ザムザ将軍以外ではどなたをお味方にすればよいのですか?」
その変わりようにラングは多少びくつきながら答える。
「・・・今中立になっている中で大きく影響しそうなのは2人だな。ナターシアのばあさんは味方になってくれるとありがたいがどっちにもつきそうにないな。後はドラゴン騎士団がどうなるかだな」
ラングはザムザ同様に三将軍の一人であるナターシアと新興勢力のドラゴン騎士団の名前を出してくる。
「ドラゴンか・・・。戦には強いがその分強欲だとも言われてるから接触のしかたは考えないとないけないかな」
「まあな。働き以上の報酬を要求される可能性はあるな」
ラングとジュリアスは顔を見合わせている。ナターシアとドラゴンについてはザムザを味方にする以上に難しいようだ。
「やはり、シーファの言うように早めに先生に接触してレックスへの支持を明確にしてもらうのが一番みたいだな。そうすれば利にさといドラゴンはこちらにつくかもしれない」
「そうだね。その場合でもナターシアばあさんはいつものセリフを言って中立を保つだろうけど、中立ならいいだろう。僕もまずはシャルル側に軽く接近してその動きを確認してからナターシアばあさんとドラゴンへの接触の仕方を考えるよ。ところで、僕たちはそう動くとしてシーファ、君はどうするんだい?」
僕たちだけが働くのかい?と言いたげなジュリアスに
「私はキザ男に接触します。あんな男とは話をするのも嫌ですが、これもレスタークス殿下のためですから」
シーファは心底嫌そうに言っている。
「キザ男・・・。ああ、エクセルね。確かに君なら適任かもね」
ジュリアスが意地悪な笑みを浮かべると、シーファはほほを膨らませてジュリアスをにらんでいるが、
「まあ、そう怒るなよ。とりあえずこれから俺たちがすることが決まったんだ。殿下を王にするために頑張っていくとしよう」
ラングの一言で三人は改めて決意したのだった。