第一王子はモテない
「首席秘書官様、こちらは・・・」
「ん~、ダメね。問題外だわ」
「はあ、これもダメですか」
シーファにダメだしされて秘書官は思わずため息をつく。先ほどから出す書類の全て却下されている。
レスタークスの首席秘書官にシーファが任命されてから部下となった秘書官たちは年下の女の子であるシーファに顎で使われる事に抵抗があったのだが、それは杞憂だった。
シーファは首席秘書官だからといって威張ったりせずに、むしろ部下たちが恐縮するほど下手に出て積極的に仕事に精を出している。
細かな事にも気配りができるし、部下の愚痴もしっかりきいて、できることは対処している。
まさに理想の上司と言ってよかった。
ある一点を除いて・・・。
「ちなみにこちらはどうしてダメなのでしょうか?」
秘書官が恐る恐るきくと、
「はあ?そんなこともわからないの!?」
いつものシーファらしくない言い方で答えてくる。
普段のシーファは部下のどんなくだらない質問でも「それはね・・・」と優しく丁寧に教えてくれるのだが、この件に関しては人が変わったようになる。
秘書官が恐縮していると、「仕方ないわね」とシーファが口を開く。
「まあ、いいわ。教えてあげる。この女は以前も殿下の婚約者候補だったくせに、その時は恐れ多くも断ってきたのよ!そんな奴が今更殿下の婚約者になれるはずがないでしょう!」
「はあ。そうですか」
秘書官は生返事で答えながら、
(首席秘書官様はこの話題になると完全に思考がヤバい人になるな。おかげでこんなに多くの花嫁候補がきているのにちっとも選ばれない。その他の事は非の打ち所がないほど仕事のできる人格者なのに)
「では、こちらの方はどうですか?こちらは初めて候補に挙がりますが・・・」
「ダメ!こいつは以前殿下の事を陰で『グズ』とか言ってバカにしてたのよ!ちょっと殿下が本気を出したら凄いってわかったら手のひら返しをするようにな女はダメに決まってるでしょ!」
「では、こちらは・・・」
「ダメ!こいつは殿下の事を『顔だけはカッコいい』とか言ってたのよ!殿下の良さをなーんにもわかってないわ!」
「では、こちら・・・」
「ダメ!足が臭い!」
「えー・・・」
秘書官の戦いは続く・・・。
*
「いや、まいったね。どうも」
そう口に出すとレスタークスは自室で椅子に座ったまま天井を見上げている。レスタークスはシャルルの反乱以来、引退を決意したルーデル王から本格的に王位を継ぐために忙しい日々を送っていた。
「お疲れさまでした。殿下、お茶でもいれましょうか」
「ああ、何か甘いものがあったらそれも頼む」
珍しく注文を付けてくるレスタークスにシーファはうきうきとお茶の準備を始める。
「しかし、あれだな。今回シャルルを破った事で少しは俺もモテるようになるかと思ったが、全然だな。なぜか仕事だけは忙しくなってみんなに認められたようなのだが、ちっともモテやしない」
首席秘書官であるシーファが『婚約の申し込み』を片っ端から断っていることを知らないレスタークスは首をひねっている。
「不思議ですね。きっと殿下が偉大過ぎて恐れ多いのではないでしょうか」
シーファ心底不思議そうに答えている。
「そんなもんかねえ。おっ、これは美味しいな」
「お口に合ってよかったです!私が作ったんですよ」
シーファは手作りのカップケーキを褒められて嬉しそうだ。
「忙しいのに、こんなものまで作ってるのか?あまり無理はするなよ」
「いや、好きでやっていますのでご心配はいりません!」
笑顔で答える首席秘書官シーファ。
第一王子がモテない日々はまだしばらく続きそうだった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ラブコメ設定のお家騒動を書いたつもりでしたが、なぜか女性キャラがほとんど出てこず、うち一名はばあさんでした。
なぜだ?
次作大嘘予告『第四王子は女好き~ザガン騒乱~』お楽しみに!
いや、嘘ですよ。




