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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
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忠臣

レスタークスの本陣に連れてこられたシャルルとウインは武装を解いてレスタークスの前で神妙に跪いている。

 レスタークスの周りには近衛騎士団副団長をはじめ近衛騎士が10名ほど待機しており、ジュリアス、シーファ、そして見えないところにムラクモがアヅチの民を5名従えて控えていた。

 仮にシャルルとウインが最後の抵抗をしても、レスタークスの髪の毛一本損なうこともできないだろう。


 ちなみにメリッサも無理やりついてきていたのだが、別のところに待機させられていた。

 メリッサがいては話が進まないだろうというレスタークスの配慮だった。

 何しろメリッサは「まだ負けていません!グズには休戦を持ちかけるだけです!」と、いまだに自軍の敗北を認めていないのだ。

 レスタークスは配下の者に「叔母上はお疲れのご様子だ。ゆっくり休んでいただくのだ。無礼のないようにな」とわめき続けているメリッサを丁重にシャルルから引き離していた。

 その手際にウインは改めてレスタークスの力量を見誤っていた自らの不明を恥じていたがすぐに思い直して、


 「今回のことは全て私がたくらんだ事。私が守役でありながらその役目を果たすこともできずにシャルル殿下をそそのかし、反乱を起こしたのです」


 レスタークスを前にして開口一番ウインがそう言い頭を地にこすりつける。


 「全ての事を君が企んだのか。それならば俺に暗殺者を差し向けたのも君か?」


 レスタークスの冷静な声の質問にウインは唇をかみしめながら答える。


 「・・・はい。それも全て私の差し金です」


 「いいのかな~。それを認めちゃって。反乱を起こしただけでなく、暗殺者まで使うような卑劣な者として名前残っちゃうけど」


 ジュリアスがちゃちゃを入れてくるが、


 「かまわぬ。全て私の責任。それが事実なのだ」


 ウインはもはや名誉も命もいらぬ。そんな気持ちになっている。

 ウインがここに来た目的はただ一つ。

 その目的のためならどんな犠牲を払っても構わないと思っていた。


 「守役としてシャルル殿下を正しく育てられなかった私が全ての責任を追うのは当然のこと。むしろ私のような愚物に育てられたシャルル殿下は被害者ともいえる。我が命など安いものだが、我が死をもってどうかシャルル殿下には寛大な処置をお願いいたします」


 「いや、違うのだ。ウインは・・・」


 「シャルル殿下!わたしの最後の願いお忘れないように!」


 苦し気な声で言うウインにシャルルはそれ以上何も言えなくなる。


 「ふーむ、全てウイン将軍の差し金か・・・」


 レスタークスは困ったようにうなっている。

 ウインの性格を考えればこうなることはわかりきっていた。


 (まいったな。できたらウイン将軍には死んで欲しくないんだが。それにシャルルにだって死んで欲しくない。甘いかもしれないが俺はもう誰も死んで欲しくないんだ)


 助けを求めるようにジュリアスを見るが、素知らぬ顔で視線をそらされる。


 (まーた、甘い事考えてるみたいだね。僕は知らないよ。ウイン将軍はともかくシャルルとメリッサは死んだ方があと腐れがないんだから。まあ、このまま状況が動かなければ殺すしかないでしょ。いくら何でもこの状態で無罪放免はないからね)


 ジュリアスにはレスタークスのやりたいことはわかっていたが、それを後押しする気はなかった。

 むしろそれを妨害するためにウルズに頼んである男の足止めをしていたのだが、

 

 「将軍が死ぬ必要はありません。たった今全ての責任をおってエクセルが自害いたしました。なかなか立派な最後でした」


 ラングがそう言いながら入ってくる。


 (ウルズ。もう少し時間を稼げればシャルル達を殺せたのに)


 ジュリアスは舌打ちするがもう遅い。


 「なに?エクセルが?」

 

 レスタークスは我ながらわざとらしく聞き返す。


 「はい。『シャルル王子を惑わし、反乱を主導したのは自分だ。全ての元凶は私だ。他の者には何の罪もない。この場で責任をとらせて頂く!』と言ったかと思うと止める間もなく自分でのどを一突きです。あの潔さはまさに騎士の鑑ですね」


 淡々と述べるラングに、


 (まさかあのエクセルに限ってそのような事・・・)


 そんなことはありえないとウインは思うが、


 「そうか。ならばこの戦いの首謀者は死んだことになるな。戦も終わった今となってはこれ以上死者を出す必要はない。シャルル、ウインお前たちには相応の罰を受けてもらうが命は助けおこう」


 レスタークスがさっさと宣言してしまうのだった。


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