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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
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ジュリアス本陣

 ザガンの援軍はジュリアスの嘘だったのだが、そんな事とは知らないメリッサとシャルルはまだザガンの援軍があると思い込んでいた。

 しかし、次第に近くなる戦場の音に、


 「ウ、ウイン。こうなれば余が自ら突撃する!馬を引け!」


 顔面蒼白のシャルルは震えながらもそう告げるが、


 「シャルル殿下。残念ながらこれまでです。これ以上の抵抗はレスタークス殿下の心証を悪くするだけです。降伏しましょう」


 覚悟を決めたウインにその気はないようだ。


 「臆したか!ウイン!この期に及んで命を惜しむとはそれでも三将軍か!」


 メリッサはヒステリックな声をあげるが、


 「叔母上、ウインのこの姿を見てよくもそのような事が言えますな!」


 将軍という立場ながら自ら剣をとって前線を支えていたウインの全身には無数の傷ができて血が流れている。 

 シャルルが突撃などという無謀な事を言い始めたのも傷だらけの身体で戻ってきたウインにせめて報いたいとの思いだったのだ。


 「ウイン。余もせめてリサリアの王子として恥ずかしくない行動をしたいのだ。ついてきてくれるな?」


 シャルルの言葉にウインはゆっくりと首を振る。


 「命は惜しむべきです。この戦いは内戦です。これ以上しても勝ち目はなく、リサリアの国力が落ちるだけです。我々は負けたのです」


 すべてを受け入れたようなウインの静かな声に興奮して怒鳴っていたシャルルも肩を落とす。


 「・・・そうか。余は死ぬのか?」


 「そうならないように全力を尽くします。シャルル殿下、よろしいですな?」


 念を押すようなウインの言葉にシャルルがうなづこうとすると、 


 「ダメです!シャルルがあのグズに負けるなどあってはならないのです!」


 しつこくいいつのるメリッサにウインがなにか言いかけるが、


 「叔母上は黙っていただきたい!・・・ウイン、全軍に撤退命令を出せ。それから兄上に降伏の使者を出してくれ。無条件降伏だ。余の身はどうなってもいい。そう伝えよ」


 初めて自分に逆らったシャルルを信じられないような目で見ているメリッサを無視してシャルルはそう宣言した。


 こうして王位継承に端を発したリサリア王国の内戦は終わりに向かうことなる。


 ウインが自らの部下に撤退命令を出して回らせると、ほとんど被害もなくあっさり撤退できた。


 これはウインの退陣がうまかったというよりはレスタークス軍の追撃がなかったからだ。レスタークスは敵が撤退し始めたらそれを追ってはならないと厳命を出していたのだ。


 そして降伏の使者も来ることが予想されていたかのようにすんなりと受け入れられた。

 ウインは部下から報告を受けながら思う。


 (勝てるわけがない。レスタークス殿下にはこうなることがわかっていたのだ。勝った後のことまで戦う余裕があったのだ。完全に負けた・・・)


 あらためて自分が相手にしていた男の凄さを思い知ったのだった。

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