レスタークス本陣
(しかし、ここまでうまくはまるとはね!相手がバカだったとは言え、やっぱり僕って並みはずれた天才だなあ!)
レスタークス軍の本陣では相次ぐ勝報にジュリアスがほほを緩めていた。
「ジュリアス様・・・。気持ち悪いですよ」
シーファがちょっと引き気味に言うが、
「ひどいなあ。シーファだってこの圧勝劇を聞いたら僕のおかげだって思うだろう?」
ジュリアスは自分の功績が大きいと確信しているがゆえの発言をするのだが、シーファには鼻で笑われる。
「はっ!何を言うかと思えば!この勝利は殿下の御威光のたまものなのよ!近衛騎士団にしてもドラゴン騎士団にしても殿下の慈愛の心に惹かれての忠勤でしょう?まあ、ジュリアス様の策謀も多少はお役に立ったのでしょうけど、全ては殿下の素晴らしい人徳のおかげなのよ!」
いつものように「全て殿下!」になっているシーファに、
「シーファ、レスタークスが見てるけどいいの?」
ジュリアスが遠慮がちに指摘する。
「え?いや、やだ、殿下・・・。これは、その・・・」
「大丈夫だ。シーファはいつも通りでいいよ。変に気取らない方が俺も安心できる」
レスタークスは優しくフォローしたつもりだったが、
「え?私っていつもこんな感じに見えていたんですか・・・?」
シーファは軽く落ち込んでいる。
その様子を見てジュリアスは、
(レックス・・・。ホントに女の子の扱いが下手だな・・・。あれだけ人の心理を読んで気をつかった行動ができるのになんで女の子にはこうなのか。だからモテないんだろうねえ)
妙に納得した表情でうなづいている。
「しかし、こちらはずいぶん余裕がありますね」
レスタークスたちのやり取りを見ていたアヅチの頭領ムラクモが隣にいるワルドにささやく。
ワルドは宣言通りにレスタークスの軍に加わっていたが、高齢のために前線には出ずにレスタークスの側近として配属されていた。
当初は戦う気満々だったので不満だったワルドも、レスタークス軍の圧倒的な戦力に「確かにわしのような老人には用はないらしい」と安心して後方に待機することになったのだ。
「あちらの状況はそんなにひどいのか?」
何の気なしにきいたワルドの問いに、
「目も当てられぬような慌てぶりですよ。わけもわからぬ怒号がとびかって、だれもが混乱状態に陥って、まともな者などおらぬようでした」
ムラクモはまるで見てきたかのように言っている。
いかにムラクモが優れた暗殺者とはいえ、ここで陰ながらレスタークスを守りつつ、シャルルの元に行くことなどできない。
そんな事ができたら化け物だ。
ただ、ムラクモはその配下のアヅチの民をその両眼のように使うことで、レスタークスの本陣にいながらにしてシャルル陣営の様子を手に取るように把握していた。
「あっちの様子も見てみたかったですねえ」
残念そうに言っているのは絵師サミーだ。
ジュリアスの提案でこの戦いの様子を描かせるために連れてきたのだ。いかにして勝ったかを絵に残して広く国民には知らせるつもりらしい。
「あとで配下の者で絵の達者な者を君の元へ向かわせよう。その者から話を聞きながら描くといい」
変な所にまで真面目に反応するムラクモだったが、
「ありがとうございます。でも、今はあの痴話ゲンカを描く事に専念しますね」
落ち込んでいるシーファを何とか慰めようとしてさらに失敗しているレスタークスをおかしそうに見ながらサミーは筆を走らせるのだった。




