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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
決着のつけかた
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近衛騎士団対神聖近衛騎士団③

ラングは思ったよりもあっさりと神聖近衛騎士団旗のところまでたどり着いていたが、肝心のエクセルはその本陣にいなかった。


 「エクセルはどこだ?」


ラングの問いに捕虜になっている神聖近衛団の騎士は怯えた表情で首を振る。


 「し、知らない」


 「本当か?かばい立てをするとためにならないぞ」


 ラングがさらにすごむとその怒りを恐れるように小さく悲鳴を上げる。


 「ひっ、本当だ!本当に知らないのだ。団長は我らにここを食い止めるようにいうとどこかへ行かれたのだ」


 おびえきった聖近衛騎士団の面々は素直に話しているようだ。『普段は騎士として!』などと格好つけたことを言っているが所詮は負け戦を知らぬボンボンたちだ。


 「何で騎士団長が騎士団旗にいないんだよ!」


 「よお、ラング。そうイライラするなよ。ちゃんと捕まえてきたぜ」


 後ろ手に縛られたエクセルがアレスに引っ立てられてくる。


 「こいつ、仮にも神聖近衛騎士団の団長のくせに自分の騎士団を置いて逃げ出しやがったからな。まあ、こいつのそういう性格がわかっていたから俺はすぐに見つけられたんだがね」


 ザムザに鍛えられているのでラングも一応戦術はわかっているが、こういう相手の性格まで考えた行動ではアレスのほうに一日の長がある。


 エクセルは縛られたままラングをにらんでくる。


 「ラング、卑怯だぞ!」


 「卑怯?俺が?」


 エクセルの言葉にラングは意外そうな顔をする。 


 「そうだ、サンズ兄弟を使ってくるなど、この戦いにはサンズ家は加わらないはずでなかったのではないか」


 まるで神聖近衛騎士団が敗北して自分が捕らえられたのは、アレス達三人とその配下三十人が近衛騎士団に助力したせいだと言わんばかりだ。


 「それがどう卑怯なんだ?確かにこの戦いでのアレスたちの働きは大きかったが、それは相手の戦力を見極められなかった貴様のミスだろう。これは遊びではなく戦争だぞ?」


 ラングは慌てることなく正論を言うが、


 「いや、騎士の戦いならば正々堂々と正面から戦うべきなのだ。この戦いは本来は近衛騎士団と神聖近衛騎士団の戦いでその他の者が加わってはならなかったのだ!」


 さも自分が言っていることが正しいかのようにいうエクセルに、


 「よくわからんな。言っている意味が。お前はどうしたいんだ」


 この期に及んで往生際の悪い事を言っていると思うが、ラングはきいてやっている。


 「騎士としての誇りがあるならば私と決闘しろ。ここは男らしく一対一で決着をつけようでないか」


 「互いの騎士団の戦闘で完膚なきまでにたたきのめされ、今は後ろ手にしばられて虜囚となっているお前とラングの決着がついていないっていうのか?」


 アレスがエクセルの現状を丁寧に説明してやりながら口をはさんでくる。さすがにこんな虫のいい話はない。


 「いいだろう・・・。エクセルの縄を解いてくれないか」


 「ラング、こんなのに付き合う必要はないぜ」


 ラングの人の好さにアレスはあきれている。


 「いや、卑怯とまで言われて捨て置けまい。相手になろう」


 「やれやれ、仕方ねえな」


 アレスはエクセルの縄を切って自由にしてやるが、


 「まだだ。この場で決闘をしては周り全員敵で囲まれている私が不利だ。私が勝ったところで殺されてしまうに決まっている」


 エクセルはさらに注文を付けてくる。


 「心配せずともどんな結果になろうともお前に手出しはさせないことを約束する。騎士の誇りにかけてそれを守らせよう」


 エクセルの注文にラングは嫌な顔一つせずに提案するが、


 「いや、それでは不十分だ。囲まれているだけで心理的に私が不利。やはり卑怯でないか」


 エクセルが納得しないので、ラングはさらに譲歩する。 


 「わかった。全員ここから立ち去ってくれ。そして仮にエクセルが勝ったとしても絶対に手出しは無用だ」


 これにはサンズ兄弟だけでなく、近衛騎士団のほかの面々も反対したが、ラングの「俺が負けるとおもうか?」の言葉に押されてしぶしぶ天幕の外に出て行く。


                  *


「本当にラング殿は大丈夫でしょうか?いくらラング殿が強いとはいえエクセルも並みの騎士ではありませんよ」


 アレスは部下に疑問を投げかけられるが、面倒くさそうに首を振る。


 「いらぬ心配だ。ラングが本気を出せば俺たち兄弟が三人がかりでも勝てんよ。騎士団を率いての戦ならまだまだ負ける気はしないが、一騎打ちではまず勝てんな」


 「ご兄弟が三人がかりでも?!・・・本物の化け物ですな」


 そんな事を言われているとも知らずエクセルは己の策がうまくいったことに満足していた。

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