サンズ家参上!
「やはり主役(俺)がいないとダメかねえ。さあ、野郎どもこのつらまん喜劇の幕を下ろすぞ!」
『おおーっ!』
アレスの号令に配下の30騎が一斉に声を上げると丘から雪崩のように駆け下りていく。
めちゃくちゃな奇声を上げながら進んでいるので一見すると好き勝手にしているようにみえるが、彼らは戦場で己を見失ったりはしない。
奇声を上げながらも先頭のアレスに従って一糸乱れぬ様子で突撃していくその様子はさすがにサンズ家に鍛えられた騎士たちだけはあった。
こうしてジュリアスの手はず『サンズ家三兄弟』が一気に動きだす。
拮抗状態に風穴をあけるように一つの塊が神聖近衛騎士団に突っ込んでいくとすぐに乱戦になる。
いや、アレスが敵の陣形を見て乱戦になるところに突っ込んだというのが正しいのかもしれない。
アレスにはそういった戦術眼がある。もっとも考えているのは半分で残り半分はカンで動いているが、それがアレスという男の凄味だった。
「兄さん、ジュリアスが神聖近衛騎士団の被害はできるだけ抑えろってさ!」
末弟のウルズは向かってきた騎士をみねうちで倒しながら、暴走しかねない兄たちにくぎを刺すが、
「そういうのは敵に言ってやれよ。できるだけ死ぬなってな!」
そういいながらも長兄アレスは赤い戦斧の刃を(殺さないためらしい)逆さにして周りの敵を薙ぎ払う。
「そうそう。兄ちゃんの言う通り。ほらほら、敵さん、頑張って死なないで!」
「兄ちゃんの言う通り」といつもセリフをふざけたように言いながら次兄のイアンも両手に一本ずつ持った赤い大鉈の刃を使わずに背の部分で敵を弾き飛ばしている。
(・・・一応、兄さんたちはあれで手加減しているつもりなんだろうけど、戦斧や大鉈でぶん殴られたら斬られてなくても普通死ぬだろ。。殴られたやつのほとんどはピクリとも動いてないし、動いてるやつらは尋常じゃないくらい痛がってるし。・・・あっ、曲がっちゃいけない方向に首が曲がってるなあ)
ウルズはあきれながらもそれ以上は止めない。
兄たちに遠慮しているわけではない。やり方は乱暴だがこれでいいと思っているからだ。
アレスたち三兄弟を中心にサンズ家の騎士たちは遠慮なく戦場を蹂躙していく。
「最後の川を渡りたくない奴は、この場から消えちまえ!」
アレスが叫んでいるのは死者があの世に行く前に渡ると言われている最後の川―サンズ、己が家の家名にもなっている川のことだ。
「渡し賃がなかったら僕のところに来てね!」
イアンはニコニコしながら大鉈を振り回すと、
「ただで送ってあげるから!」
また一人の騎士の頭を曲がってはいけない方向にぶっ飛ばしている。
それに続いてサンズ家の30人の騎士たち(赤虎隊)も思い思いの方法で戦場を駆け回りながら敵を粉砕していく。
ほんの一時間前まで拮抗状態だったにも関わらず、今はたかが30人ほどの集団に過ぎないサンズ家の騎士たちが完全にこの戦場を支配していた。
「お、まだ元気にお馬さんに乗っている奴らがいるなあ?」
「ひいっ!」
いいものをみつけたぜとばかりにアレスに微笑みかけられた騎士たちは恥も外聞もなく馬を返して全力で戦場から離脱していく。
「兄ちゃん、あいつら逃げちゃうよ?」
イアンが笑顔で困ったように言っているが、
「構うな。あれでいいんだよ。さあ、もう一仕事するぞ。なんせ俺は働き者だからなあ!はーはっはっはっは!」
アレスの高笑いが戦場に響き渡るのだった。




