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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
決着のつけかた
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陣容発表(レスタークス派)

「先陣右翼はドラゴン騎士団!」


 ジュリアスがそう発表すると『おお』と感嘆の声がまわりから漏れる。


 「了解した」


 その声に全く反応することなくシリウスは冷静に答える。

 この戦いで大事なのは間違いなく先陣になると言った後での発表だったのでその重要さがわかるだろう。


 「頼むぞ。期待している」


 「お任せください。ドラゴンの力、存分にお見せしましょう」


 レスタークスの言葉にシリウスは力強くうなづいている。


 「先陣左翼には近衛騎士団。そのほかの騎士団は全てレスタークス殿下の直掩部隊として後方に回り殿下自らが指揮をとられる」


 さすがに正式な場ではジュリアスもレスタークスを愛称のレックスとは呼ばない。

 真面目くさった顔をしているジュリアスにいつもの姿を知っているがラングやシーファはおかしみを感じるが、その視線を感じてもジュリアスは素知らぬ顔だ。


 「今度の戦いではドラゴン騎士団と近衛騎士団が先陣となる形なったが、俺に味方してくれた者は皆、重要な役割を持っている。与えられた役割をしっかり果たすことを期待している」


 レスタークスが堂々とした態度で宣言する。


 レスタークス陣営で最強の部隊は間違いなくドラゴン騎士団で、その次に戦力として信頼できるのは近衛騎士団だ。その他の貴族たちは予備戦力としておいてジュリアスはその二つで決着をつけるつもりなのだろう。


 この軍容をきいてベクター侯爵は、


 (我々のように長く中立派だった連中の士気は高くないからな。悪くない選択だ。それでいて主力にされていなくても重要だと明言することで士気を落とさないようにしている。グズと言われているがなかなか食えないお方だ)


 ベクター侯爵はレスタークスに味方しておきながら自分たちがそれほど積極的に戦う気持ちがないのを理解している。そのくせ恩賞はもらいたいと思っているので、その存在を無視しないで重要であるとレスタークスが明言することの意味を理解する。


 「それで俺達はどうするんだ。まさか客人扱いで戦場に出さないって事はないだろうな?」


 アレスはジュリアスの考えを見透かしている。

 三将軍の一人であるナターシアの孫のアレスたちが万が一でも戦死してもらったら困る。ジュリアスはそう考えて躊躇するが、


 「ばあちゃんの事なら心配要らないぜ。ちゃんと戦ってこいってさ」


 「そういう事。サンズ家にとっては戦場に出ない事の方が恥だからね」


 イアンとウルズが続けて言う。

 確かにサンズ家の兄弟とその手勢30名(というか兄弟の悪友達だが)を遊ばせるのはもったいない。

 彼らは少数ながらも一騎当千の猛者ばかりだからだ。冗談抜きで雑兵300くらいならあっという間に蹴散らすだろう。なにしろ勇名をとどろかしているサンズ家の『赤虎隊』の一員なのだ。


 「では、近衛騎士団についてもらっていいかな」


 「それもいいが、俺達は自由にさせてもらった方が生きる駒だとおもうがね」


 アレスの主張は正しい。少数精鋭であるアレスたちは他の騎士団に混じって戦うよりも遊撃隊として動くほうが今回の規模の戦闘では役に立つだろう。

 ジュリアスにもそれはわかっていたが、あえてアレスたちにとって危険の少ない方を提案したのだ。


 (これだから戦術のわかる戦闘バカは困る。本当に怪我とかしてもらいたくないんだけどな)


 ジュリアスとしては政治的な事をどうしても考えてしまうが、どうせ許可しなくても勝手に動くだろう。サンズ家の特権として『王命以外はきく義務はない』がある。これは当主であるナターシア以外にも適応されるのだ。それならばこちらから許可をして手綱をつけておく方がいい。


 「わかったよ。ただし、まったくのフリーってわけにもいかないから形式上はラングの指揮下についてもらうよ」


 「了解、了解。まあ、俺達もこんな戦で無茶はしねえよ」


 この内戦をこんな戦と表現しながらアレスは満足気にうなづく。


 「よし、野郎ども、いくぞ!」


 次男のイアンの号令とともにサンズ家の面々が威勢よく出ていく中で最後尾にいた三兄弟の末弟のウルズがわざわざ近寄ってきて


 「心配しなくても兄さんたちには無理はさせないよ。この場面での政治はわかっているつもりだからね」


 ジュリアスに耳打ちする。


 「ああ、君がいるから許したんだよ」


 ジュリアスは歳の近いウルズとは以前から心安い。


 「で、さらに君に頼みがあるんだが・・・」


 ジュリアスはなにかウルズに頼んだようだった。

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