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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
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メリッサの毒

 一方、相手側のシャルル陣営でも籠城をやめて出陣したことが問題になっていた。


 「なぜ、私に断りもなくこのような出陣をしたのです!」


 シャルルが出陣して来たために仕方なくそれを迎え入れたウインだったがシャルルが籠城をやめて平地に陣をしいたことに不満を持っている。

 もともとの軍議ではシャルルが籠城して敵を引き付けておいてウイン率いる別動隊が背後から襲い掛かりレスタークスを討伐するはずだったのだ。

 この作戦も決して上策とは言えないが中立の貴族の多くがレスタークス軍に流れてしまった今ではシャルル軍が勝つ方法は限られている。少なくとも平地での会戦は数と士気において劣っている側の選ぶ道としては完全に下策だ。


 「それについては私から説明しましょう」


 メリッサがしゃしゃり出てくるのを(毒婦が!)とウインがにらみつけるがそれには意も解せずにメリッサは続ける。


 「実はザガン王国の使者を買収したのです」


 「使者を買収?」


 「そうです。ジュリアスに定期的に送られていた使者を買収したのですよ。少々値が張りましたがその価値はありましたね。その使者にジュリアスには『ザガン王国としてはシャルル王子を支援することに決めた。シャルル王子に利するように行動せよ』と伝え、ザガン王国にはジュリアスからの言葉として『シャルル王子が王位を継ぐ方がザガンとしても好ましい。そのために支援してほしい』と伝えさてせています」


 外交問題になりそうな事をさらっと言い放つメリッサにウインは反感を覚える。


(こいつは戦いをお得意の政治ゲームと同じように考えている)


 「・・・思い切ったことをされましたな。しかし、偽の情報を伝えていたことはザガン王国にいずればれますぞ」


 「その時はもうこの戦いは終わっているでしょう。そしてシャルルが王位についていればザガンとしても事を荒立てようとはしないでしょう。

 シャルルとの間で両国の友好を深めていけばいいだけです。うるさいことを言うならいくらか見舞金でもくれてやればよいのです」


 メリッサはリサリアの方が大国でありザガンは少々のことでは文句はいうまいと高をくくっている。これは信義的には問題発言だが、メリッサの政治感覚はするどいので結果的にはそうなるとウインにも思えた。


 「しかし、具体的にはどうするのです。支援するといってもそれを決めておかなければいけないでしょう」


 「それについても抜かりはありません。なぜ、ここに陣をしいたと思っているのです。三将軍ともあろう者がそれもわからないのですか?」


 バカにするように言うメリッサだったが、ウインはいちいち腹を立てる事もなくその意味を考える。


 (ここはザガン王国との国境近くにあたるが・・・。なるほど、そういうことか)


 「ザガン王国の援軍をこの近くに潜ませているのですか?」


 「その通りです。まさかレスタークスも国境を越えて伏兵がいるとは思っていないでしょう。まず、我らが正面からレスタークス軍と戦い、引き付けておくのです。

 頃合いを見てザガンからの援軍がレスタークス軍の背後から襲い掛かります。そして、同時にレスタークス本陣近くにいるジュリアスの手勢が内部から反乱をおこすよう手配しています。こうすればレスタークス軍は挟み撃ちにされた上に内部からも混乱がおきます。この条件では負ける方が難しいでしょう?」


 どうです?スキがないでしょう。とメリッサは得意になっているが、ウインは一抹の不安を隠せない。


 (確かにこの作戦通りにいけば勝てるかもしれないが・・・。本当に問題ないのか。あのジュリアス殿がいくらザガンの使者の言葉とはいえこうも簡単に策にはまるだろうか)


 戦いなれたウインからはその疑念は消えないが、


 「勝った。勝てるぞ。これならば負けるわけがない!」


 「さすがはメリッサ様!この作戦に我ら神聖近衛騎士団の力が加わればお味方の勝利は間違いないですな」


 戦力差から士気が下がっていたシャルル陣営が沸き立つ様子を見ているとそれを口に出すのははばかられたのだった。

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