レスタークス派③
ラングの執務室にはレスタークス陣営が集結していた。
この集まりはもともとラングとジュリアス、シーファだけで集まっていたが今はそうそうたる顔ぶれになっていた。
近衛騎士団長にして王国随一の剣の使い手、ラング。
隣国ザガンの第四王子にして知将ザムザの愛弟子ジュリアス。
リサリア有数の強さを誇るドラゴン騎士団の双子の騎士、シリウスとプロキオン。
かつて暗殺集団として名をはせたアズチ一族の長ムラクモ。
三将軍のひとりナターシア・サンズの孫でサンズ家三兄弟、アレス、イアン、ウルズ。
中級貴族のまとめ役になっているボエモンドと近衛騎士クロエのベクター侯爵父娘。
侍女兼護衛兼レスタークス親衛隊隊長(隊員は一名だが)のシーファ。
そして第一王子レスタークス。
「ムラクモ、シャルルの動きはどうかな」
「シャルル王子は城にこもるようです。こちらがシャルル王子の城を攻めると別動隊として城外に隠れていたウイン将軍が奇襲を仕掛けてくるようです」
ムラクモはジュリアスの命により情報収集を主に担当している。
「奇襲ね。それがこうも筒抜けでは疑いたくもなるなあ」
ジュリアスの馬鹿にしたような言い方にもムラクモは淡々と答える。
「我々の情報を疑うのかね?」
「いや、僕がシャルル派に潜り込ませている貴族からも同様の報告があったよ。だから筒抜けだと言ったのさ。相手側の全ての情報網に引っかかる奇襲なんてきいたことがないだろ」
ジュリアスはニヤリと笑う。
「ルーデル王が奇襲を得意としていたからな。そのマネをしたいのだろう」
ラングは武人らしい意見を言う。
「奇襲ってはまればでかいけど、それだけに成功させるのが難しいんだけどね~」
「ジュリアス、悪い癖だ。相手をあなどるのはよくない。いくら作戦がわかっていてもウインは強いぞ」
レスタークスにたしなめられてジュリアスは首をすくめるが大して反省した様子はない。
「別に侮ってはいませんが、シャルルたちは毎度同じ手を使うばかりで芸がないから飽きるんですよね」
「同じ手とはどういうことですかな?」
この集まりに初めて参加するベクター侯爵がきくと、
「暗殺ですよ。まあ、ムラクモに事前に防いでもらってるけどね」
「暗殺者は現在4名ほど捕えている。いずれもそれを生業としている者だ」
淡々というムラクモの報告に
「まだ、そんな手に頼っているのか」
ラングがあきれたように言うと、
「それだけシャルル派が追い詰められてるって事さ」
ジュリアスは物のわかったような言い方をする。
「シャルル殿下がそのような方だったとはな。全くわからぬものだ」
以前はシャルルを才のある王子として支持していたシリウスは複雑な表情をしている。
「だが、籠城されるのはおもしろくないな。ウイン将軍の奇襲はわかっているから防げるだろうが被害も多くなりそうだ」
話を戻してくるのはアレスだ。あまり長々と軍議をするのが好きではないので無駄な事はしたくないのだ。
「確かにな。俺も城攻めはしたくないな」
顔を曇らせたレスタークスがジュリアスに答えを求めるように見てくる。
ジュリアスがそれに答える前に、
「失礼いたします。ザガン王国からの使者がジュリアス様に取り急ぎお会いしたいと来られているのですが」
外で警護していた騎士が取り次いでくる。よほどのことがなければ誰も入れるなと言っていたが、『ザガンからの急ぎの使者』は外国からの使者であり無視することができないと判断したのだろう。
「ザガンからの使者が?後で行くと伝えてくれ」
「いや、緊急を要するようだし、ジュリアスは行ってくれ。後は俺たちで話をしておこう」
取り急ぎと言った言葉に気遣ったのかレスタークスに促されてジュリアスが出ていく。
ジュリアスが退室した後にシャルルと城から引きずり出すための策を話し合うがどれも決め手に欠いていた。
しばらくしてジュリアスがいつものようにヘラヘラした様子で戻ってくる。
「いやー、まいっちゃったよ。全然急用でもなんでもなかったよ」
「要件はなんだったんだ?もし話せるなら話してくれ」
レスタークスが訊ねているのは単純に内容が知りたいだけでなく、この時期にザガンからの使者を迎えたジュリアスが他の者に余計な疑念を抱かれないためだ。
「ホントに大したことじゃないよ。僕の甥、つまりレスタークス殿の甥でもあるレパリアの5歳の祝いに参加してくれっていうお誘いですよ。兄上の親ばかにも困ったものです」
「本当にどうでもいいことだな」
あきれているのはラングだ。そんなラングを気にもしないでジュリアスは
「ところでいい案がでましたか?シャルルをおびき出すための」
ときいてくる。
「ダメだな。よほどの馬鹿でない限り今の戦力差では城から出てこないだろうという結論になったよ」
疲れたように言うレスタークスに、
「ですよねー。ふ・つ・う・ならね」
人の悪い笑顔を浮かべるジュリアスを一同は気持ち悪そうに見るのだった。




