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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
敵か味方か
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シーファとクロエ

シーファとクロエの関係は以前よりも距離が縮まってきていた。


 「クロエ様、さきほどレスタークス殿下となんの話をしていたのです?」


 いつもの会議の後に去り際のクロエにレスタークスが何かささやいていたのをシーファは見過ごさなかったらしい。今までだったら聞くことができなかったが今ならこうして直接聞くことができていた。


 「なにって、また城下に出たいから供をしてくれって言われたから『今後はきちんと護衛をつけて私一人にしないでくださいね』ってお願いしたのよ」


 いきなりの質問に驚きながらもクロエはきちんと答えている。


 「そうですか・・・」


 ほっとしているシーファの細い肩を見て


 (本当にかわいい子よね。ショートカットにした金髪もふわふわだし、眼もキラキラしているし、鼻もいい形だし。なにより小柄だから男なら守りたくなるだろうな)


 クロエはうらやましく思う。


 「どうしましたか?」


 クロエの視線に気づいたシーファが不思議そうな顔で見てくると


 「いえ、なんでもないのよ。用はそれだけ?」


 「あ、はい。すみませんでした」


 「そう、じゃあ、またね」


 クロエがごまかすように去っていく、その後姿を見ながらシーファは思う。


 (クロエ様って本当に素敵よね。背が高くてスタイルもいいし、長くのばされた黒髪もとても奇麗だわ。少しきつい感じもするけど顔立ちも整っているし、もし、クロエ様が殿下の事を好きになられたらとてもかなわないだろうな・・・)


 クロエが聞いたら『私が殿下の事を?あー、ないない』と答えるだろうが、シーファは余計な心配をしている。


 「そういえば、以前にシーファの部屋に遊びに来てって言ってたけど、今からでどうかな?急だと難しい」


 シーファのさびしそうな気配を感じてクロエが振り返って言うと、


 「いえ、大丈夫です。ぜひ、来てください!」


 シーファは笑顔で答えるのだった。

 


                 *

         

 「へえ、さすがにきれいにしてるのね」


 シーファに案内されたクロエは思わず感心する。下級貴族出身の侍女だけあってシーファの部屋はあまり広くはないが女の子らしくきれいにまとめられている。


 「いえ、そんな。最近は少し掃除もさぼりがちです」


 これでさぼってるの?とクロエが思うほどきれいな部屋だがシーファは恥ずかしそうに言っている。


 「あれ?この絵・・・」


 シーファの部屋に無造作に置いてある絵が以前秋祭りの時にレスタークスが購入したレスタークス自身の絵ではなく、ラングの絵だった事にクロエは疑問に思う。


 「ああ。これはサミーちゃんが新作ができたからって見本に持ってきてくれたんです」


 「そういうことね。それにしても・・・」


 何の気なしにシーファは答えているがクロエはそのラングの絵を見入っている。


 「あの・・・よろしければ差し上げましょうか?」


 おずおずとシーファが申し出ると、


 「え?いいの?これすごくよく描けてるよ?団長のカッコよさがものすごくうまく表現されてるのよ?」


 クロエが今まで見せたことのないような笑顔で喜んでいる。


 「ええ。私には必要ないものですから。・・・クロエ様ってラング様が好きなんですか?」


 「え?いや、そういんじゃないのよ?!団長の事はそ、尊敬!尊敬してるだけなんだから!」


 「そうですか」そう言いながらシーファはあせるクロエを見ながらニヤニヤしている。


 「そんな事よりも、殿下の絵はどうしたの?もらったんでしょ?」


 クロエがごまかすように言うと、


 「ああ。『御神体』の事ですか?それはもちろんありますよ。コチラヘ来てください」


 シーファに呼ばれてベッドの近くに行くクロエだがそこには絵はない。


 「上です、上」


 「うえ?あああああっ!」


 クロエが見上げるとちょうどベッドある場所の天井にレスタークスの絵が飾ってある。

 

 「いいでしょー。これなら殿下に見守られながら眠れるし、起きたらすぐに殿下の顔を見ることもできるんです!」

 

 「すごい発想ね・・・」


 クロエはあきれながらも、


(私も団長の絵で()()してみようかなあ・・・)


 ちょっとヤバいことを考えていたのだった。

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