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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
敵か味方か
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サンズ家三兄弟登場!

 「ねえ、なんか僕たち最近影薄くない?」


 「なにをわけのわからないことを言ってるんだ、ジュリアス。そんな事より現状はどうなんだ?」


 ここはラングの執務室でレスタークスを初めとしてラング、ジュリアス、シーファ、クロエのいつものレスタークス派の中心メンバーが集まっている。


 「ききたい?ねえ、ききたい?」


 「なんだよ。気持ち悪い声出して。さっさと言えよ。言いたいんだろ」


 もったいぶった言い方をするジュリアスにラングはあまりいい顔をしない。


 (ジュリアスの悪い癖だ。策士ぶっているくせに考えていることが顔に出すぎだ)


 ラングがそんな事を考えているとも知らず、ジュリアスはうきうきした声で、


 「こっちが・・・超有利になったよ~!ドラゴン騎士団が来たおかげで中立だったベクター候が味方を約束してくれたし、そのベクター候の誘導でほとんどの中立派がこちら側についてくれたからね。さすがにこっちにつくにあたって『土産』を忘れない当たりベクター候は抜け目ないよね」


  ニヤニヤしながら意味ありげな視線を送ってくるジュリアスにクロエは、

 

 「あたしの方を見ないでよ、何もしてないわよ。あの人は自分の判断で殿下に味方しただけよ。それが利益につながると思ったんでしょ」

 

 父親の事をあの人と言いながら嫌そうな顔をするが、ジュリアスは特に気にした様子もなく続ける。 


 「これで形勢は完全に逆転だね。これからは中立だけでなく現シャルル派の連中を切り崩していくかな。もうすでに幾人かは当てがあるしね」


 「ずんぶん楽しそうだな」


 笑いを抑えきれないジュリアスをラングはあきれた目で見ていると、


 「おやめください!今は入れません!」


 執務室をを警護をしている近衛騎士の制止を振り切って、 


 「よう、邪魔するぜ!」


 無理やり扉を開いて一人の大男が現れると、


 「呼ばれて、飛び出て、じゃじゃじゃじゃーん!」


 さらにもう一人満面の笑みで大男が続き、


 「呼ばれてもないし、飛び出てもないけどね」


 冷めた言い方で普通サイズの少年が最後に入ってくる。

 ナターシアの孫であるサンズ家三兄弟だ。

 長兄アレス、次兄イアン、末弟ウルズ。この三人の兄弟はサンズ家の名に恥じない武力の持ち主だ。 


 「よお、レスタークス、俺たちが力を貸してやるぞ!ありがたく思うんだな!」


 「それは心強いな。助かるよ」


 いきなり入ってきたアレスに呼び捨てにされてもレスタークスは怒りもせずに礼を言っている。

 王族でもない者でレスタークスを呼び捨てにするのはサンズ家の嫡子であるアレスくらいだがレスタークスもそれを許している。アレスは昔からレスタークスを出来の悪い弟分くらいに考えているようだった。


 「アレス!殿下に対して無礼ではないか!いい加減その口の利き方を改めねば近衛騎士団長として見過ごせぬことになるぞ!」


 ラングが生真面目に抗議するが、


 「おいおい、この口の利き方はレスタークス自身が許している事だぜ?そんな顔をするなよ。個人の戦闘力はお前の方が上だろうが俺と事を構えるのは得策じゃあないと思う、がね」


 アレスは『がね』を強調するように言いながらラングをいなしている。確かにサンズ家の次期当主の位置にあるアレスを敵に回すのは確かにあまり賢い行動とは言えない。


 「サンズ家は中立じゃなかったのかい?」


 黙ってしまったラングに代わってジュリアスが質問する。


 「そうだ。うちは今でも中立だ。俺たちは個人的に弟分であるレスタークスの味方をしにきただけさ」


 「君たち兄弟だけで?」


 「あと俺の友人たちの中でどうしても手伝いたい連中が30人ほどいるらしいからそいつらもくるだろうよ」


 「それってもしかして『赤虎隊』の隊員もいるの?」


 「さあどうだろうなあ」


 ジュリアスの問いにアレスは意味ありげにニヤリと笑う。

 サンズ家の騎士たちは他の騎士団に比べて練度も高く、精鋭ぞろいだが、その中でも特に優秀な騎士が赤と黒の縞模様の鎧を着ることを許されて『赤虎隊』と呼ばれている。

 『赤虎隊』は500名ほどいるがその隊長をしているのがアレスだ。

 おそらく「友人たち」は皆、赤虎隊の隊員だろう。


  (こうなるとアレスたちが個人として来たっていうよりは、サンズ家が戦力としてレスタークス派に参加するって事だろ)


 ジュリアスが考えているように『赤虎隊』が30人もいれば立派な戦力になりうる。


 「ナターシアにはいつまでたっても子ども扱いされるなあ」


 中立を宣言しておきながらアレスたちに赤虎隊を加えてよこしたナターシアの老婆心にレスタークスは肩をすくめるが、


 「言っとくが俺たちは別にばあちゃんに言われたから来たわけじゃないぜ?サンズ家は『王命以外構いなし』だろ。そうなるとやっぱり次期リサリア王にはそれなりの奴になってもらわんと困るからな。変な奴が王になっておかしな命令されるのはごめんだぜ!」


 アレスそう言ってレスタークスの意外とがっしりした肩をバシバシ叩いている。


 (また、無礼な事を!)


 その視線に気づいたのかアレスはラングの方に向き直る。


 「ひとついいことを教えてやるよ。どうやらシャルル派は暗殺者を雇ったらしいぞ」


 「またか!」


 声を荒げるラングの怒りはアレスからシャルル派へと移る。アレスは大雑把に見えて意外とラングの扱いを心得ている。



 「今度は前のような素人じゃなくて本職らしいぜ」


 アレスはごく限られた者しか知らない以前の暗殺未遂を知っている。そのうえで今回の暗殺者の素性もある程度はつかんでいるようだった。


 「前の事をサンズ家は知ってるんだ?」


 ジュリアスは完ぺきに隠していたと思っていたので驚いている。


 「そりゃあな。うちは三将軍筆頭の家柄だぜ?いつでもどんなことでも情報収集は怠らない。・・・それは表向きでばあちゃんがレスタークスの事を気にしすぎているからなあ。レスタークスに関しての情報は優先して集めてるのさ」


 「そもそもそんなに気にしてるくせにサンズ家は中立なのさ?」


 ジュリアスが当然の疑問を口にすると、


 「そりゃあ、レスタークスが断ったからだろ」


 『え…』


 何をいまさらという顔で言うアレスの返答に思わずラングとジュリアスはレスタークスを振り返る。


 二人に見られてレスタークスはバツの悪そうな顔で


 「いや・・・まあそういうことだ」


 なにがいやのかわからないがアレスの言葉を肯定している。 


 『どうして!』


 これにはラングやジュリアスだけでなくクロエやシーファまで声を合わせる。

 どう考えても三将軍筆頭のサンズ家の支援を断るなど意味が分からない。それこそドラゴンが味方になるよりも簡単に勢力をひっくり返せていただろう。


 「もし、ナターシアやザムザの助力を得てシャルルに勝ってもそれは俺の勝利ではないよ。結局俺の力を皆に認めされることにはつながらないのじゃないのかな」


 あまりに強力すぎるサンズ家などの力を借りては自分の力量を認めさせることはできないとレスタークスは考えている。そしてこの『お家騒動』では自分の力量を認めさせなければ意味がないことがわかっている。


 「レスタークスって時々頭のいいようなことを言うよね」


 あきれたような感心するような言い方をジュリアスがすると、


 「殿下は常にご聡明でいらっしゃいますけど?ジュリアス様」


 拳を力強く握りしめてにっこりと笑うシーファにヒヤリとしたものを感じるジュリアスなのだった。

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