多忙なジュリアス②
ジュリアスは城下町にある店を訪れていた。
『サミーの店』そう看板に書かれているその店の扉には『closed』と札が掲げてあるが気にしないで入っていく。
「邪魔するよ」
「まだ、営業前ですよ~、ってジュリアス様ですか。まいどどうも!」
眼鏡をかけた少女、サミーが眠たそうに答える。
ごく地味な服装で髪もあまり整えられていないので、それなりにしか見えないが、きちんとした身なりをしていれば実はかなりの美少女だ。
この店の主であるサミーは絵師見習いとして王宮で働いていたのだが、とある事情から王宮を出されることになり、その時にこの店をオープンするために尽力してくれたのがレスタークスとジュリアスだった。
「新作ができてるかな?」
「ええ。バッチリですよ。見てみますか?」
そう言ってサミーは精密に描かれた人物画の束を渡しながら説明していく。
「この2枚がレスタークス殿下たちの後をつけていた人物ですね」
そこに描かれているのは今は近衛騎士団の秘密の倉庫に捕らえられている6人のうちの2人の男の顔だった。
「で、こっちがさらにその後をつけていたやつらですね」
3枚の人物画を追加で出してくる。ジュリアスはそのうち2人はエクセル配下の神聖近衛騎士団員で見覚えがあったが、1人は知らない男だった。
(やはり刺客の見張り役がいたようだね・・・)
「よく描けているね。買わせてもらうよ」
「まいどあり!お安くしておきますよ!」
サミーは嬉しそうに絵を包みながら、軽口を言う。
「しかし、さすがはザガンの好色王子ですね!わざわざあたしの店に殿下を寄らせて敵をあぶりだそうなんて性格悪いですよ~」
「好色王子はひどいな~」
ジュリアスは笑いながら抗議するが、すぐにサミーに突っ込まれる。
「何言っているんですか。ご自分でつけた二つ名でしょう?」
「まあ、僕が切れ者の軍師なんて言う間違った噂が流れていたからねえ。それを打ち消すために仕方なくだよ」
サミーの店で売られている人物画の二つ名は全てジュリアス発案だ。
ラングは『王国最強』にすることであえてその強さを喧伝させている。
シャルルやエクセルに『高貴な輝き』『乙女のあこがれ』と一見いいイメージの二つ名をつけているのはそうやってバカ2人をいい気持にさせて油断させるためだ。
「しかし、ジュリアス様も大変ですねえ。レスタークス殿下のためとはいえこんなことまでされているなんて。尊敬しますよ~」
「そんなうまい事言っても買い値は変えないからね」
「おせじじゃないですよ。あたしもお世辞言っても無駄な人にいうほど暇じゃありませんから」
サミーはそう言いながらしっかり右手を出してくる。ジュリアスはその手に金貨の袋を握らせながら、
「ところでサミー。今晩空いてないかな?一緒にディナーでも・・・」
「ごめんなさい。あたしジュリアス様って好みじゃないんですよ」
ジュリアスの誘いにサミーは即答する。
「ハッキリ言うなあ。それなら、どんなタイプが好きなんだい?」
「レスタークス殿下ですね!まあ、シーファちゃんが怖いんで言えませんけど」
(レックス、意外とモテてんだよね。まあ、『シーファが怖い』で遠慮してる子がかなりいるらしいけど)
モテないと嘆いているレスタークスがその事実を知るにはまだしばらく時を要する。




