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第一王子はモテない  作者: 東野 千介
城下町の賑わいは危険な香り
22/58

多忙なジュリアス①

「はあ・・・。」 


 ジュリアスがクロエを訪ねると大きなため息をついている。


 「クロエ、どうしたんだい?ため息なんかついてさ。君の顔にため息なんて似合わないよ。ほら、笑顔、笑顔」


 お気楽な感じで話しかけるジュリアスをクロエはにらみつけるが、思い直したように愛想笑いをする。


 「大したことじゃないのよ。ただ、私って本当に近衛騎士団の中では真ん中くらいなんだなあっと思ってね」


 クロエは近衛騎士団の剣術訓練の帰りだった。ジュリアスに「近衛騎士団で真ん中より少し上くらい」と言われたものの、自分では普通よりかなり強いつもりだったのだが、近衛騎士団の剣術訓練に参加するようになってはっきりわかった。


 自分はごく普通だと。


 「私ってもう少し強いつもりだったけど、まだまだみたいね」


 自嘲気味に言うクロエに、


 「慰めるわけじゃないけど、近衛騎士団所属の騎士たちはみんな強いよ。何しろ王国最強の騎士が稽古をつけているからね」


 ジュリアスが笑いながら言うと、


 「・・・納得。確かにラング団長の相手をしてたら嫌でも強くなるはずよね」


 クロエもおとなしくうなづいている。ここ数日でラングの強さをいやというほど思い知っている。

 今までも自分より強いと思う騎士は何人かいたが、経験の差だと思っていたし、いずれは追い付けると思っていた。

 自分とは違う何か(人間ではなく神か悪魔)でないと説明がつかないほど強いと思ったはラングは初めてだった。


 (でも、人間なのよねえ・・・。人に教えるのも上手だし、ホントに剣に関しては隙がない感じだわ) 


 剣の才能にあふれている者はたいてい他人に稽古をつけるのが下手だが、ラングは天賦の才を持つ人間には珍しく人の教えるのもうまいのだ。

 クロエが近衛騎士団に所属するにあたって自分の少女従騎士を3名ともなってきたのだが、ラングに稽古をつけてもらうようになってからメキメキと腕を上げている。たいていの騎士団なら正騎士として認められるくらいに成長しているのだ。


 (それに引き換え私は・・・)


 「でも、私は全然強くなってる気がしないのよね・・・。才能ないのかな」


 「なんでそう思うのさ」


 「だって団長との強さの差が全く縮まっていないし・・・」


 「ああ、それなら当然だよ。ラングは相手に合わせて力を調節してるからね。相手が上達すればそれだけ力を上げてるから差は縮まらないはずだよ。あんまり実力差がありすぎたら稽古にならないから、そうしてるんだって」


 ジュリアスは簡単に言っているがクロエはもうため息しかでない。


 (相手に合わせて力を調節してあんなに強いなんて・・・どんだけ強いのよ。団長は) 


 「それで何か用?」


 「用がなくては来てはいけないのかな?まあ、用はあるんだけどね」


 ジュリアスは歯切れの悪い言い方をする。


 「何よ?はっきり言いなさいよ」


 「いやあ、まあ、ないとは思うけど・・・。クロエってレスタークス殿下の事が好きかな?」


 「はあ?何言ってんの?」


 クロエはジュリアスの言葉があまりにも意外過ぎたのか鳩が豆鉄砲を食ったような顔している。


 「ですよね~。いや、いいんだ。忘れてくれ。ただ、これを確認しておかないと僕の命に係わるところだったんだよ」


 ジュリアスはごまかすように苦笑いしながらも、シーファからの指令を忠実にこなせたことにホッとしている。


 「話はそれだけ?それだけならもう、帰るわよ」


 「いや、ここからが本番なんだよ。実は・・・」


 ジュリアスはクロエに「近いわよ!」と怒られながらも耳打ちをしたのだった。


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